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トヨタ ヴェルファイア 3.5VL(GGH35W)'15は“少し理不尽で、かなり魅力的な贅沢品”だった

■ 基本スペック (ノーマル時)

項目スペック
メーカートヨタ
駆動方式4WD
エンジン2GR-FE V型6気筒
総排気量3,456cc
最高出力280ps / 6,200rpm
最大トルク35.1kgf・m / 4,700rpm
全長×全幅×全高4,930×1,850×1,895mm
車両重量2,130kg
トランスミッション6速AT

“走る応接室”にV6を入れたら、少し下品で、かなり魅力的だった

ヴェルファイアという車は、昔から少し面白い立ち位置にいます。
アルファードが「高級です」と正面から言ってくる車だとすれば、ヴェルファイアはその隣で「高級だけど、ちょっと凄みも欲しいよね」と言い出す車です。
要するに、上品一本では終わりたくない人向け。
ちゃんと高い。ちゃんと広い。ちゃんと偉そう。
そのうえで、少しだけ顔つきが悪い。

この3.5VLは、そのヴェルファイアの中でもかなり分かりやすい上級仕様です。
大きい。重い。豪華。
それだけでも十分なのに、そこへ3.5LのV6を載せてくる。
ミニバンに対して「十分」という言葉を使わないあたりが、実にトヨタらしい。
そして実に日本の高級ミニバン文化らしい。

この車は、合理性だけでできていません。
家族を乗せる道具の顔をしながら、どうせなら速さも余裕も見栄も全部欲しい
そんな欲張りを真面目に商品化したのが、GGH35Wのヴェルファイア3.5VLです。


ミニバンに3.5L V6という、少し古風で贅沢な発想

今となっては、この構成自体が少し懐かしいです。
大型ミニバンといえばハイブリッド、あるいは燃費を意識したパワートレインが主役になりがちです。
その中で3.5L V6の自然吸気というのは、かなり分かりやすく“昔の贅沢”です。

これがまた、妙にいい。
踏んだ時に無理している感じがない。
2トン級の箱を「よいしょ」と引っ張るのではなく、最初から余力で動かしている感覚がある。
この余裕が大排気量NAの一番の魅力でしょう。

もちろん、誰もこの車にワインディングの切れ味なんて求めていません。
でも、高速の合流、登坂、フル乗車、荷物満載。
そういう場面で、エンジンがまだ余っている感じは、やはり気分がいい。
最近の小排気量ターボが悪いとは言いません。
でも、こういう車に載るV6には、力の出し方そのものに品と厚みがあります。

要するにこのヴェルファイアは、速いミニバンというより、
“余裕が過剰なミニバン”
なんです。
そして、こういう過剰さは案外嫌いになれません。


見た目は、かなり頑張っている

ただし、それがこの車の役割でもある

ヴェルファイアの顔つきは、昔から好みが分かれます。
はっきり言えば、かなり“やってる”顔です。
大きなフロントマスク、押しの強いライン、妙に威圧感のある表情。
高級ミニバンなのに、どこか夜の街と相性が良さそうに見える。
この感じがたまらない人もいれば、少しやりすぎに見える人もいるでしょう。

私は、やややりすぎだと思います。
でも、その“やりすぎ”も含めて、この車は成立している。
なぜならヴェルファイアは、ただ静かに家族を運ぶだけの車ではなく、駐車場に止まっている状態でも格を見せたい車だからです。

要するに、これは移動手段であると同時に“見られる道具”でもある。
そう考えれば、あの顔つきはかなり正直です。
奥ゆかしくも何ともない。
「高級ミニバンですが、少し迫力も盛っておきました」
そのままの顔です。


3.5VLは、ヴェルファイアの本質をいちばん分かりやすく味わえる

この車の美味しいところは、上級グレードらしい装備と、V6の余裕がきちんと噛み合っているところです。
ただ広いだけのミニバンではない。
ただ豪華なだけでもない。
ただ大きいだけでもない。
広さ・快適性・押しの強さ・余裕のある動力性能が全部乗っている。

だから3.5VLは、ヴェルファイアという車の性格をかなり素直に表しています。
実用性は当然ある。
後席も広い。
荷物も積める。
乗り降りもしやすい。
でも、そのうえで「移動そのものをちょっと偉そうにしたい」という欲望まで、しっかり満たしてくる。

こういう車って、妙に日本的です。
欧州の高級ミニバンとも少し違う。
アメリカのフルサイズバンとも違う。
もっと日本の“送迎文化”“家族移動文化”“見栄の文化”が混ざっている。
その独特の答えが、このヴェルファイアです。


走りはもちろんスポーティではない

だが、想像よりちゃんとしている

誤解のないように言うと、この車はスポーツカーではありません。
重いし、背も高いし、コーナーで歓声を上げるような類の車ではない。
そんなことを求めるほうが間違っています。

ただし、だからといってただのフワフワした箱でもない。
上級ミニバンとしての落ち着きはしっかりある。
直進安定性も悪くないし、4WDらしい安心感もある。
そして何より、エンジンの余裕が車の挙動に余裕を作っている。
この“余裕の連鎖”が、この車の乗り味をかなり上品にしています。

つまり、走りの良さは“楽しい”ではなく“楽である”方向です。
長距離で疲れにくい。
人を乗せても窮屈さが出にくい。
高速巡航でもまだ余力がある。
その意味で、この3.5VLはちゃんと良い車です。


忖度なしで言うなら、かなり理不尽な贅沢品でもある

ここは少し皮肉を込めて言っておきたい。
この車、冷静に見るとかなり理不尽です。

まず大きい。
街中では気を使う。
立体駐車場とも仲が悪い。
次に重い。
そのうえでV6を積んで、豪華装備もたっぷり。
環境性能の教科書に出てきたら、たぶん模範解答から一番遠い側です。

でも、それが悪かと言えば、そうでもない。
高級車って本来、多少理不尽なものです。
合理性だけで全部決まるなら、もっと小さい車でいい。
もっと安い車でいい。
でも人は、広さと静かさと余裕と見栄を欲しがる。
そしてトヨタは、それを嫌味なく商品化するのがうまい。

このヴェルファイア3.5VLは、その“欲望のまとめ方”が実に上手い。
だから少々理不尽でも売れる。
そして乗ると妙に納得してしまう。
そこが腹立たしいくらい上手なんです。


アルファードではなくヴェルファイアを選ぶ人の心理も、だいたい分かる

アルファードが正装なら、ヴェルファイアは少し柄の強いスーツです。
中身は近い。
でも、醸し出す空気が違う。

ヴェルファイアを選ぶ人は、たぶんただの高級感では少し物足りないんです。
もう少し押しが欲しい。
もう少し凄みが欲しい。
もう少し“普通の偉い車”からズラしたい。
その気持ちに、この車はきれいに応えている。

だからヴェルファイアって、単なる兄弟車の片割れではありません。
アルファードでは少し上品すぎると感じる人のための、高級ミニバンの裏口みたいな存在です。
その意味で、この3.5VLはかなりヴェルファイアらしい。


それでも名車かと言われると、少し考える

この車を“名車”と呼ぶかどうかは、少し迷います。
歴史を変えたスポーツカーみたいな名車ではない。
運転の楽しさで語り継がれる車でもない。
でも、日本の高級ミニバン文化を代表する一台かと言われれば、たぶん間違いなくそうです。

つまりこれは、
運転好きが崇拝する名車ではなく、日本人の移動文化と見栄の文化を非常にうまくパッケージした名物車です。
そう考えると、むしろかなり価値がある。

今後こういう大排気量NAの上級ミニバンは、ますます減っていくでしょう。
そうなると、このGGH35Wみたいな車は、ただの中古車ではなく、
「あの頃の日本は、こういう贅沢を真顔でやっていた」
という証拠みたいな存在になっていく気がします。


まとめ

トヨタ ヴェルファイア 3.5VL(GGH35W)'15は、
高級ミニバンの姿をした、少し理不尽で、かなり魅力的な贅沢品です。

3.5LのV6。
4WD。
大きな車体。
豪華な室内。
そして少し押しの強い顔。
全部が“やりすぎ”寄りです。
でも、そのやりすぎがきれいにまとまっている。

忖度なしで言えば、
効率の良い車ではない。
取り回しも楽じゃない。
見た目も少し頑張りすぎ。
でも、それでもなお、
この車には“日本の高級ミニバンってこういうものだよね”と言わせるだけの説得力があります。

要するにGGH35Wのヴェルファイア3.5VLは、
上品さと威圧感、実用性と贅沢、合理性と見栄、その全部を同時に欲しがった結果生まれた、実に日本的な高級車なんです。
そこまで割り切っているから、案外嫌いになれません。

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