
■ 基本スペック (ノーマル時)
| 項目 | スペック |
| メーカー | マツダ |
| 駆動方式 | FR |
| エンジン | BP-ZE 直列4気筒 NA |
| 総排気量 | 1,839cc |
| 最高出力 | 130ps / 6,500rpm |
| 最大トルク | 16.0kgf・m / 4,500rpm |
| 全長×全幅×全高 | 3,955×1,675×1,235mm |
| 車両重量 | 1,000kg |
| トランスミッション | 5速MT |
NA型ロードスターは、今さら説明不要なくらい有名な車ですが、あらためて言えば、**「軽くて、シンプルで、操ること自体が楽しい」**という思想を真正面から形にしたオープンスポーツです。
世の中には速い車がいくらでもあります。
高級な車もあります。
電子制御まみれで、誰でもそれなりに速く走れる車もあります。
でもNAロードスターは、そのどれでもない。
“人が車を動かしている感覚”を味わわせることに、異様に特化した車です。
その中でもS-SPECIAL TYPE IIは、単なるベースグレードの延長ではなく、ロードスターの持つ軽快さやスポーティさをより分かりやすく味わえる、いわば**「NAの美味しいところを濃くした仕様」**として見ると分かりやすいです。
だからこの車は、スペック表だけ見て判断すると良さが伝わりません。
むしろ逆で、数字に表れない部分こそが本体です。
ロードスターは、消えかけていたライトウェイトスポーツを本気で復活させた
NAロードスターの歴史を語るとき、単に「1989年に出た人気オープンカー」で終わらせると本質を外す。1970年代には安全・排ガス規制の強化で、欧州を中心に栄えた軽量2座オープンスポーツが市場から次々と姿を消していた。そんな中、1980年代初頭のマツダ社内で「現代の技術でライトウェイトスポーツを復活させる」という構想が動き始めた。
企画段階ではFF、ミッドシップ、FRの案が検討されたが、最終的に選ばれたのはフロントエンジン・後輪駆動。さらに2+2ではなく純粋な2シーター、電動ではなく軽い手動ソフトトップという割り切りを選んだ。馬力や装備を増やすより、不要なものを削り、操作に対して車が素直に応えることを優先した。
「人馬一体」は宣伝文句ではなく、設計の基準だった
マツダがロードスターの思想を表す言葉として使ったのが「人馬一体」だ。開発では重量増を抑えるため、出力競争や装備追加を優先せず、アルミ製ボンネットで重心を下げ、排気管には理想的な流れを狙ってステンレス材を採用するなど、軽さと操作性のために必要な部分へコストを使った。
オープンボディでも軽量と安全性を両立するため、当時進歩したコンピュータ解析も積極的に活用された。雨の多い日本で手動幌を選び、後席を持たない2シーターを貫いたのも、便利さより人馬一体を優先した結果だった。
この思想は本記事のNA8C S-SPECIAL TYPE IIにもそのままつながっている。1.8L化や後期型としての熟成は進んでも、根本は「速さの数字を増やすより、軽さと反応の気持ちよさを残す」という初代ロードスターの考え方だ。
1989年の成功は、世界のオープンスポーツを再び動かした
ロードスターは1989年春に北米で発売され、日本では同年9月にユーノス ロードスターとして販売を開始した。結果はマツダ自身の想定を超える成功となり、1990年代に各メーカーが再び小型オープンスポーツへ参入するきっかけの一つになった。
その影響は販売台数にも表れている。1989年4月から1999年10月末までの生産累計は531,890台に達し、2000年5月には「世界で最も多く生産された2人乗りオープンスポーツカー」としてギネス世界記録に認定された。
つまりNAロードスターが特別なのは、単に一台の名車だったからではない。消えかけていたライトウェイトオープンスポーツというジャンルそのものを世界市場で成立させ直した車だった。その歴史を知ると、S-SPECIAL TYPE IIの「遅くても楽しい」という価値も、単なる懐古ではなくロードスター誕生時から一貫した設計思想だと分かる。
良いところ
1. とにかく操作していて気持ちいい
NAロードスター最大の美点はここです。
ハンドル、ペダル、シフト、車体の動きがちゃんとつながっていて、動作に対する返事が素直です。
今の車は性能が高い代わりに、どこか“間に何かいる”感じがすることがあります。
でもNAは違う。
切ったら曲がる。踏んだら進む。シフトを入れたらちゃんと走りが変わる。
この当たり前の感覚が、ものすごく濃い。
要するにこの車、人間の操作を面白く見せるのが上手いんです。
それが今でも名車扱いされる最大の理由でしょう。
2. 軽さは正義を体現している
この時代のロードスターは、現代の安全基準や快適装備で太っていない分、車全体に無駄が少ないです。
そのため、大パワーがなくても走りが死なない。
むしろ、そこそこのパワーだからこそ、車の軽さとバランスの良さが生きる。
最近は何でも高出力化しがちですが、ロードスターは逆です。
「このくらいで十分楽しい」を証明してしまった車です。
しかもS-SPECIAL系は、その楽しさをさらに分かりやすく感じさせる方向に振られているため、ただの“雰囲気の良いオープンカー”で終わっていません。
ちゃんと走りの芯があります。
3. 見た目に嫌味がない
NAロードスターのデザインは、今見てもかなり優秀です。
小さくて、丸くて、親しみやすい。
でも、ただ可愛いだけでもない。ちゃんとスポーツカーらしい。
最近のスポーツカーは、顔が怖すぎたり、線が多すぎたり、妙に威圧的だったりします。
それに比べるとNAは驚くほど素直です。
**「乗る前から嫌な気分にさせないスポーツカー」**なんです。
この点はかなり大きい。
オーナーが構えずに付き合えるし、周囲から見ても過剰に嫌味にならない。
スポーツカーなのに、妙な押しつけがない。ここは名作です。
4. “遅いのに楽しい”を成立させた
これは本当にすごいことです。
世の中の多くの車は、パワーや高級感やブランド力が魅力の中心です。
でもNAロードスターは、そういう武器が薄いのに、今でも熱狂的に支持される。
なぜか。
答えは単純で、運転していてちゃんと面白いからです。
馬力の暴力がないぶん、速度域が低くても遊べる。
だからサーキットだけでなく、普通の道でも車との会話が成立する。
このバランス感覚は本当に上手いです。
ダメなところ
1. 速くない。今の感覚では普通に遅い
ここは夢を壊してでも言うべきです。
NAロードスターは、速さを期待すると肩透かしです。
もちろん軽いのでテンポよく走れます。
でも絶対的な加速力や高速域での余裕は、現代の基準ではかなり控えめ。
「スポーツカー」という名前から想像する豪快な速さはありません。
だからこの車に対して、ゼロヨンだの最高速だの、そういう物差しを持ち込むと一気に魅力がしぼみます。
逆に言えば、速さだけで語る人にはたぶん向いていないです。
2. 古い。かなり古い
これはもうどうにもなりません。
年式相応どころか、今となっては完全に旧車の入口から中盤に足を踏み込んでいる存在です。
静粛性、剛性感、エアコン、遮音、乗り心地、安全性。
どれも最新車と比べれば当然見劣りします。
オープンカーとしての割り切りもあるので、快適性の面ではかなり妥協が必要です。
つまりこの車は、
便利だから乗る車ではない。
ここを勘違いすると痛い目を見ます。
3. ボディや個体の状態で評価が激変する
NAロードスターは名車ですが、名車だからといって全部当たりではありません。
むしろ今となっては、個体差がかなり大きい車種です。
ボディのヤレ、下回り、幌まわり、足まわり、内装の劣化、過去の改造歴。
こうした要素で印象が大きく変わります。
良い個体は感動できますが、疲れた個体は「なんでこんなに持ち上げられてるの?」となっても不思議ではない。
だからこの車を評価する時は、ロードスターという車種そのものと、残っている車両の状態を切り分けて考えないと危険です。
4. オープンカーの不便さは普通にある
屋根が開くというのは魅力ですが、それは同時に面倒も引き受けるということです。
夏は暑い。冬は寒い。雨の日は気を使う。防犯も弱い。
要するに、ロマンには実務コストが付いてくる。
そこを「味」と呼べる人には最高です。
でも、ただ便利な移動手段が欲しい人にはまったく向きません。
この車の一番痛いところ
NAロードスターの一番痛いところは、神格化されすぎていることです。
確かに名車です。
でも、神話として持ち上げすぎるとおかしくなります。
実際には遅いし、古いし、快適でもないし、安全性だって現代水準では弱い。
しかも今は中古相場も昔ほど気軽ではない。
つまりこの車、理屈だけで買うと普通に不満も出るんです。
それでも評価されるのは、そうした弱点を上回る“運転の快感”があるから。
ここを理解していないと、「思っていたより普通だな」で終わる可能性もあります。
NAロードスターは、誰が乗っても無条件で感動する魔法の箱ではありません。
分かる人には深く刺さる、でも刺さらない人にはただの古い小さいオープンカーです。
そこは正直に見ておくべきです。
歴代ロードスターとの比較
NBとの比較
NBはNAの正常進化です。
剛性感も上がり、全体の完成度も高い。
速さや実用性でも少し前に出ます。
ただ、そのぶんNA特有の軽さや素朴さはやや薄まったとも言えます。
雑に言えば、
NAは原液、NBは飲みやすく整えた版です。
どちらが上かではなく、好みの問題です。
NCとの比較
NCはサイズも重量も増えて、ロードスターとしての性格が少し変わりました。
より現代的で、より安定していて、より万人向け。
その代わり、NAのような“小さくて軽い玩具感”は薄れます。
だからNA好きからすると、NCは悪くないけど別物に見えやすい。
逆に、NAの古さがつらい人にはNCのほうが入りやすいです。
NDとの比較
現行世代に近いNDは、かなり上手く原点回帰しています。
軽さ、サイズ感、楽しさを取り戻しつつ、現代の車としての完成度も高い。
正直、総合性能ではNDのほうが明らかに上です。
それでもNAが支持されるのは、
最初のモデル特有の純度と、時代の軽さと、ユーノスブランド時代の空気があるからでしょう。
NDが優秀な現代ロードスターなら、
NAは**“文化になった元祖”**です。
ユーノスという名前が持つ意味
この車はマツダ車でありながら、「ユーノス」の名を背負っていた時代のモデルです。
ここがまた面白い。
ただのロードスターではなく、バブルの余韻と、メーカーの遊び心と、ブランド実験の匂いが残っている。
今の時代にこういう売り方は、なかなか難しいでしょう。
だからこそユーノス ロードスターには、単なるオープンスポーツ以上の“時代性”があります。
車そのものの出来だけでなく、背景込みで記憶される理由があるわけです。
総評
ユーノス ロードスター S-SPECIAL TYPE II(NA8C)’96は、速さや便利さを捨ててでも、運転の楽しさを最優先した名車です。
しかもそれを、重装備や大パワーに頼らず成立させたところがすごい。
忖度なしで言えば、古いです。遅いです。不便です。
でも、その欠点を分かったうえでなお、
「こういうのでいいんだよ」ではなく、
「こういうのがいいんだよ」
と言わせる力がある。
要するにこの車は、
スポーツカーの基本を思い出させる教科書みたいな一台です。
しかも教科書のくせに、乗るとちゃんと面白い。
そこがNAロードスターのずるいところでしょう。
