マツダ

マツダ ロードスター RS(ND5RC)'15は“外車っぽい顔をしたロードスター”だった

■ 基本スペック (ノーマル時)

項目スペック
メーカーマツダ
駆動方式FR
エンジンP5-VP 直列4気筒 NA
総排気量1,496cc
最高出力131ps / 7,000rpm
最大トルク15.3kgf・m / 4,800rpm
全長×全幅×全高3,915×1,735×1,235mm
車両重量1,020kg
トランスミッション6速MT

ND型ロードスターRSを初めて見た時、多くの人が感じるのは
「これ、今までのロードスターと少し雰囲気が違うな」
という違和感だと思う。

もちろん、ちゃんとロードスターです。
小さい。低い。軽い。FRでオープン。
ロードスターの文法そのものはきっちり守っている。

でも、見た目の空気は少し違う。
フロントマスクの鋭さ、フェンダーの張り、サイドビューの艶っぽさ、全体の塊感。
そのせいでNDは、国産ライトウェイトスポーツというより、少しBMW Z4っぽい気取り方をしているように見える。
さらに、あとから出てきたアバルト124スパイダーと世界観が近いこともあって、なおさら**“イタリア車っぽい色気”**まで感じさせる。

要するにNDロードスターRSは、
従来のロードスターの軽快な親しみやすさに、少し外車的な色気を足した車
なんです。

これが魅力にもなっているし、逆に少し“やりすぎ”にも見える。
そこがこの車の面白さです。


NAやNBの延長ではなく、“見せ方が上手いロードスター”

昔のロードスターは、もっと素朴でした。
とくにNAやNBは、「軽くて楽しい小さなスポーツカーです」という素直さが前に出ていた。
良い意味で、誰にでも愛される顔だった。

ところがNDは違う。
かなり意識して**“見せるスポーツカー”**になっている。
停めてある時の見栄え、斜め前から見た時の色気、夜に街灯の下で見た時の艶。
このへんをかなり計算している。

だからNDは、運転席に座る前から少しドラマが始まっている。
ここは上手い。かなり上手い。
国産コンパクトオープンにここまでの“雰囲気商売”を持ち込んだのは、マツダらしいと言えばマツダらしい。

ただし、ここで少しだけ厄介なことも起きます。
見た目が良すぎるせいで、乗る前の期待値が上がるんです。
「これは相当速そう」
「かなり濃いスポーツカーなのでは」
そう思わせる力がある。
でも実際のND5RC RSは、そこまでパワーで殴る車ではありません。


RSなのに、力で押し切る車ではない

ND5RC RSは、名前だけ見るとかなり本気のグレードに見えます。
実際、足まわりや装備の面で“走り好き向け”の味付けはされている。
ですが、この車の本質はやはり軽さと応答性です。

1.5L自然吸気は、今の時代の感覚で言えば決して大排気量でも高トルクでもない。
直線で圧倒するタイプではないし、信号ダッシュで周囲を黙らせるような車でもない。
ここを勘違いすると、RSの名前に対して少し肩透かしを食らう。

ただ、その代わりにこの車には
“これ以上いらない”ちょうど良さ
があります。

アクセルを踏んだ時に重たすぎない。
車体の動きに余分な慣性が少ない。
ハンドルを切った時の返事が早い。
つまり、ND5RC RSは
速いから楽しいのではなく、動きが軽いから楽しい車
なんです。

ここはロードスターの伝統そのものでもあります。


外車っぽいのに、中身はかなり日本車的に真面目

この車が面白いのは、見た目や雰囲気はかなり外車っぽいのに、中身は意外と真面目です。
Z4みたいな威圧感や大人っぽい余裕を漂わせながら、実際にやっていることは
軽くして、気持ちよく曲がって、操る楽しさを濃くする
という、非常にロードスターらしい仕事です。

つまりNDは、
外車の顔をしたロードスター
なんです。
ここがうまいし、少しズルい。

しかも、BMW Z4のような高級GTではありません。
アバルト124のようなキャラクター作りの濃さとも少し違う。
もっと真面目で、もっとマツダ的です。
雰囲気は外車っぽいのに、走らせるとちゃんと“いつものロードスター”に戻ってくる。
このギャップはかなり魅力です。


では欠点は何か。答えは“色気と中身のズレ”

NDロードスターRSの弱点は、まさにこの“外車っぽさ”と“中身”の間にあります。

まず、見た目ほどの押しの強さはありません。
スタイルはかなり大人っぽく、少し気取っていて、国産離れした雰囲気をまとっている。
なのに中身は1.5Lで、走りもライトウェイト寄り。
だから、見た目のテンションで乗ると
「思ったより素直だな」
となる。

次に、昔のロードスターのような親しみやすさも少し減っています。
NAやNBはもっと“道具感”があった。
NCは少し大きいけれど、まだ国産スポーツとしての素朴さが残っていた。
NDはそこから一段、少し洒落て、少し気取って、少し都会的になった。
この変化を進化と見るか、キャラクターのズレと見るかで評価は分かれます。

そしてもうひとつ。
RSというグレード名が少し期待を煽りすぎる。
もちろん悪くはない。
でも、“濃いスポーツグレード”を想像すると、意外とこの車はきれいにまとまっています。
その完成度の高さが、逆に少し物足りなさにもつながる。
もっと暴れてもいいのに、意外と礼儀正しい
そこがND5RC RSの少し惜しいところです。


この車は“ロードスターとして良い”のか、“外車っぽい国産車として良い”のか

たぶんこの車を一番正しく表すなら、
「外車っぽい顔を手に入れたのに、ちゃんとロードスターであり続けた車」
です。

ここはかなり高く評価していい。
見た目が変わると、中身まで見失う車は多い。
でもNDはそうなっていない。
ちゃんと軽い。
ちゃんと気持ちいい。
ちゃんと“遅いのに楽しい”が成立している。
その意味では、ロードスターとしてかなり成功しています。

ただし、NAの原液みたいな純度を期待すると違う。
NBの軽快な素朴さとも違う。
NCの実直な親しみやすさとも違う。
NDはもっと洒落ていて、もっと演出的で、もっと“見せ方”がうまい

だからこれは、
ロードスターの本質を残したまま、外車っぽい色気をまとわせたモデル
と考えるのが一番自然です。


総評

マツダ ロードスター RS(ND5RC)'15は、BMW Z4っぽい洒落た空気と、アバルト的な色気を漂わせながら、最後はきっちりロードスターに着地する車です。

見た目はかなり外車っぽい。
雰囲気もある。
でも中身はちゃんと軽くて、ちゃんと気持ちいい。
そこがこの車の強さです。

忖度なしで言えば、
RSの名前ほど過激ではありません。
見た目ほど速くもありません。
昔のロードスターの素朴さも少し薄れています。
でも、それでもなお、
“今の時代にこういうライトウェイトスポーツを、ここまで色っぽく仕立てた”
という価値はかなり大きい。

要するにこの車は、
“外車っぽい顔をした、かなり出来のいいロードスター”
です。
それが気に入るかどうかで、ND5RC RSの評価は決まると思います。

-マツダ