
■ 基本スペック (ノーマル時)
| 項目 | スペック |
| メーカー | トヨタ |
| 駆動方式 | 4WD (GR-FOUR) |
| エンジン | G16E-GTS 直列3気筒 ターボ |
| 総排気量 | 1,618cc |
| 最高出力 | 272ps / 6,500rpm |
| 最大トルク | 37.7kgf・m / 3,000-4,600rpm |
| 全長×全幅×全高 | 3,995×1,805×1,455mm |
| 車両重量 | 1,280kg |
| トランスミッション | 6速MT (iMT) |
“ヤリス”の皮を被った競技用の変態車。まともな会社が量産するものではない
GRヤリスRZは、かなり変な車です。
誉め言葉です。
まず名前がずるい。
“ヤリス”なんて付いているから、知らない人は少し元気のいいコンパクトカーくらいに思う。
ところが中身はまるで違う。
3ドア、専用ボディ、1.6Lの3気筒ターボ、4WD。
つまりこれは、日常車の延長でできたホットハッチではなく、ラリーの都合を市販車の形にねじ込んだ車です。
最近のメーカーは、たいてい賢いです。
売れるものを作る。
燃費と装備と見た目を整える。
そのうえで少しスポーティに見せる。
みんな大人です。
でもGRヤリスは違った。
“そうじゃないだろ、まず勝てるベース車を作れ”
という、少し頭のおかしい発想から始まっている。
こういう車、昔はたまにありました。
でも2020年にこれをトヨタが本当に出した。
そこがまず驚きです。
まともに見えて、かなり理不尽な成り立ち
この車の一番すごいところは、スペック表そのものより、作り方が異常に本気なことです。
普通のホットハッチは、既存の量産車をベースに、エンジンと足を強くして終わりです。
でもGRヤリスは、そんな生ぬるい話ではない。
ボディからして普通のヤリスとかなり違う。
後ろ姿も低い。
ルーフも下げる。
トレッドも広げる。
4WDも専用。
つまり最初から、
“売れ筋の小型車を速くしました”
ではなく、
“競技のために必要なものを市販車にしました”
なんです。
こういう車って、冷静に考えると採算の匂いがしません。
たぶん会議室では何人か頭を抱えたはずです。
でも、それを通してしまった。
だからGRヤリスには、最近の優等生なスポーツモデルにはない“変な説得力”がある。
速さの質が、普通のハッチバックとはまるで違う
GRヤリスRZを普通のホットハッチと同じ目で見ると、すぐに話がズレます。
この車の速さは、FFの延長ではありません。
もっと立体的です。
もっと“路面を掴んでいる感じ”が濃い。
アクセルを踏んだ時の前へ出方もそうですが、それ以上に面白いのは、
「この車、最初から少し荒れた路面とか、ちょっと変な場所のほうが本気を出しそうだな」
と感じさせるところです。
普通のスポーツカーは、きれいな舗装路で褒められたがります。
でもGRヤリスは、舗装の継ぎ目とか、少し荒れた場所とか、天気の悪い日とか、そういうところで急に目つきが変わりそうな空気がある。
要するに、
**サーキットで速い車というより、“条件が悪いほど頼もしい車”**なんです。
ここがただのハイパワーハッチと決定的に違う。
3気筒ターボ? ふざけた構成に見えて、ちゃんと本気
1.6Lの3気筒ターボ。
言葉だけ見ると、少し色物っぽいです。
昔の車好きほど、最初は眉をひそめたかもしれません。
「どうせ今どきの話題作りだろ」と。
でも、実際はそうじゃなかった。
このエンジン、ちゃんと中身があります。
小排気量だからといって貧相な感じは薄いし、ただ効率だけを狙った機械でもない。
むしろ、小さいのにかなり殺気立っている。
そのアンバランスさが面白い。
もちろん、直6のような品格はありません。
V8のような懐の深さもない。
でもGRヤリスにそんなものは必要ない。
この車に必要なのは、
軽くて、鋭くて、前に出るための気迫です。
その意味で、この3気筒はかなり正しい。
少し乱暴に言えば、
“高級な速さ”ではなく、
**“勝つために選ばれた速さ”**です。
見た目は、可愛いどころかかなり物騒
ヤリスという名前から受ける印象と、実車の顔つきの差も、この車の面白いところです。
普通のヤリスなら、街中で穏やかに買い物へ行きそうな顔をしています。
でもGRヤリスは違う。
開口部が大きい。
腰が低い。
横から見ても普通の5ドアハッチバックの空気がない。
つまり、ちゃんと“普通じゃない”見た目をしている。
とはいえ、スーパーカーみたいな華やかさではありません。
もっと実戦的で、もっと機能優先の殺気です。
言ってしまえば、少し色気に欠ける。
でも、そこがいい。
この車は、見せるための派手さより
「分かるやつだけ分かればいい」
という顔つきをしている。
最近のスポーツモデルによくある、“空力っぽい何か”を盛っただけの顔とは違う。
GRヤリスは、そこにちゃんと理由がありそうに見える。
この“理由のある物騒さ”が魅力です。
忖度なしで言うと、日常車としては案外だるい
ここはちゃんと書いておきたいです。
GRヤリスは名車です。
でも、誰にでも優しい車ではありません。
まず、これを“便利なコンパクトカー”だと思って買うと、たぶん少し後悔します。
3ドアです。
後席も気軽な空間ではない。
乗り降りも楽とは言いにくい。
荷物も万能ではない。
要するに、
ヤリスという名前のくせに、妙に気を使わせる。
しかも、乗り味も普通の小型車のつもりで付き合うと少し疲れる。
路面に対する緊張感があるし、気軽にただ流すだけでも、どこか車の側が
「本気出せる場所はまだか」
みたいな空気を出してくる。
街乗りだけなら、正直ここまでの車はいらない。
そこははっきりしています。
つまりGRヤリスは、
万能なコンパクトカーではなく、不便さを少し我慢してでもこの変態性を楽しむ車です。
この車のすごさは、“令和にこんなものが出た”ことそのもの
ここが一番大事かもしれません。
GRヤリスをただの高性能車として見ると、比較対象はいくらでもあります。
もっと速い車もある。
もっと豪華な車もある。
もっと洗練された4WDもある。
でも、この車の本当の価値はそこじゃない。
こんなに競技ベース色の強い車を、2020年にちゃんと量産で出したことです。
この事実が大きい。
昔のホモロゲモデルは、伝説になりやすい。
でもそれは、“昔だからできた”で済まされることも多い。
GRヤリスは違う。
今の時代に、今の基準で、今の巨大メーカーが、こんな変な車を出してきた。
だから余計に価値がある。
この車は、性能だけではなく、
存在の仕方そのものがもう名車っぽいんです。
ただし、神格化しすぎるのも違う
ここまで褒めておいて何ですが、GRヤリスもまた、すでに少し神格化が始まっています。
何でもかんでも
「最後のホモロゲーションマシン!」
「トヨタの奇跡!」
みたいに語るのは、少し雑です。
たしかに特別です。
でも、ポルシェみたいな高級感はない。
ランチア・デルタみたいな妖しい色気とも違う。
もっと現代的で、もっとトヨタ的で、もっと真面目です。
良くも悪くも、会社がちゃんと作った優秀な変態車なんです。
ここは見失わないほうがいい。
つまりGRヤリスは、
破天荒な夢の車というより、
理屈を積み上げた結果、妙なところに着地した車です。
だからこそ信頼できるし、だからこそ少し面白みが理性的でもある。
まとめ
トヨタ GRヤリス RZ(GXPA16)'20は、
ヤリスの名前を借りた競技ベース車であり、令和に出てきたかなり貴重な変態車です。
3気筒1.6ターボ。
専用4WD。
短くて低い3ドアボディ。
そして、悪条件ほど本気を出しそうな空気。
どれも今の時代には少し珍しい。
そして、その珍しさがちゃんと走りの説得力に繋がっている。
忖度なしで言えば、
日常では不便です。
少し気難しい。
ヤリスのくせに全然気軽じゃない。
でも、それでもなお、
“こんな車を本当に出したのか”という驚きごと愛せる一台です。
要するにGRヤリスRZは、
速いだけのコンパクトカーではなく、“競技の都合で生まれた市販車”という意味でちゃんと特別な車なんです。
そういう車は、やっぱり強いです。
