
■ 基本スペック (ノーマル時)
| 項目 | スペック |
| メーカー | トヨタ |
| 駆動方式 | FR |
| エンジン | 2GR-FSE V型6気筒 |
| 総排気量 | 3,456cc |
| 最高出力 | 315ps / 6,400rpm |
| 最大トルク | 38.4kgf・m / 4,800rpm |
| 全長×全幅×全高 | 4,840×1,780×1,470mm |
| 車両重量 | 1,640kg |
| トランスミッション | 6速AT |
クラウンにスポーツをやらせたら、案外ちゃんと速かった。しかも少し生意気で、そこが良かった
ゼロクラウンという車は、今振り返るとかなり思い切っています。
長く“いつかはクラウン”なんて言われてきた車に対して、トヨタは突然
「いや、ゴールじゃなくてスタートです」
みたいな顔をし始めたわけです。
今までのクラウンが応接室の延長みたいな存在だったとすれば、この世代はそこへジャケットの下にスポーツウェアを着込ませた。
上品さは残す。
でも、ただ偉そうなだけでは終わらせない。
その空気を最も分かりやすく背負っていたのが、このGRS184のアスリート G Packageです。
しかも中身が半端ではない。
3.5リッターのV6を積んで、当時としてはかなりしっかり速い。
クラウンのくせに、と言うと失礼ですが、クラウンのくせに案外ちゃんと走るんです。
ここがこの車の面白いところです。
ゼロクラウンは、クラウンに若作りをさせた
ただし、その若作りは意外と成功している
この世代のクラウンが出た時、正直かなり驚きました。
クラウンといえば、もっと肩に力の入った高級セダンだったはずです。
それがゼロクラウンでは、全体に背を低くして、ラインを寝かせて、顔つきも少しシャープにした。
要するに、**「もう役員車だけやってる時代じゃないんで」**という態度です。
この変化は、当時かなり賛否がありました。
古いクラウンのファンからすると、少し軽く見えたでしょう。
逆に若い側からすると、ようやくクラウンがまともに見えた。
どちらの言い分も分かります。
でも2005年のアスリート G Packageまで来ると、その若作りが案外板についています。
見た目だけの若作りじゃない。
ちゃんとシャシーも、エンジンも、その方向に寄せてきている。
だからこの車は、単なる“新しい顔のクラウン”ではなく、クラウンを一回スポーティに作り直そうとした本気の世代として見るべきです。
3.5L V6という、なかなか気持ちのいい無駄
この車の魅力は、やはりここです。
3.5リッターV6。
最近はこういう大排気量NAのセダン自体がだいぶ減りました。
効率とか燃費とか、そういう話を真顔でする時代に、3.5Lの自然吸気をFRのセダンに積んでいた。
冷静に考えると、かなり贅沢です。
しかもこのエンジン、ただ排気量が大きいだけではない。
当時のクラウンとしてはかなり元気がいい。
踏めばしっかり前に出るし、回した時の伸びも悪くない。
最近の小排気量ターボみたいに、数字だけ立派で中身が忙しい感じではなく、最初から余裕がある速さです。
ここが非常にクラウン向きなんです。
スポーツカーみたいに神経質にパワーをひねり出す必要がない。
でも、いざ踏めば“ただの高級セダン”では終わらない。
その中途半端さが、実はすごくちょうどいい。
要するにこの3.5L V6、
速さを見せびらかすためのエンジンではなく、余裕をわざわざ過剰にしているエンジンです。
高級セダンとしては、なかなか正しい贅沢でしょう。
アスリート G Packageというグレードが、実にいやらしくていい
ここも大事です。
アスリートだけでも十分やる気があります。
でもG Packageが付くと、話が少し変わる。
ただのスポーティクラウンではなく、ちゃんと装備も質感も欲しい人のための仕様になる。
これが実にクラウンらしい。
走りたい。
でも安っぽいのは嫌。
速いのはいい。
でもシートヒーターも上質感もちゃんと欲しい。
この欲張りさが日本の高級セダンらしくていいんです。
スポーツセダンを標榜する車の中には、速さのために全部を削りたがるものがあります。
でもクラウンはそんなことをしない。
ちゃんと快適性も見栄も残したまま、そこへ少し速さを足す。
この“削らないスポーツ”が、クラウンのアスリート系の味です。
特にG Packageは、
アスリートの少しヤンチャな顔つきに、クラウンらしいちゃんとした豪華さを上乗せした仕様と言っていい。
このバランスはかなりうまいです。
走りは、スポーツカーではなく“速いクラウン”
それで十分どころか、むしろそこがいい
ここを勘違いすると、この車の評価はすぐズレます。
GRS184のアスリート G Packageは、M3でもなければIS Fでもありません。
速いは速い。
でも、それはあくまでクラウンとして速いのであって、最初からサーキットで暴れるための車ではない。
ただ、その“クラウンとして速い”の中身がかなりちゃんとしている。
FRらしい自然な動きはあるし、直進安定性も高い。
高速道路を流すと、いかにもこの車の領域だなという感じがある。
車体の落ち着きも、エンジンの余裕も、全部が高速巡航と相性がいい。
つまりこの車の走りは、
ワインディングで歓声を上げる類ではなく、右足に少し力を入れると急に格が見える類です。
この速さの出し方が大人っぽい。
しかも少し悪そう。
そこがアスリートのいいところです。
マークXより上品、セルシオより若い
ちょうどその中間を狙った車
この時代のトヨタFRセダンを並べると、立ち位置がよく分かります。
マークXはもっと若い。
少し不良っぽく、少し雑味がある。
セルシオは逆に、もっと格が高く、もっと静かで、もっと別世界です。
その間にゼロクラウンのアスリートがいる。
これが実にうまい。
クラウンだから、ちゃんと格がある。
でも、セルシオほど気取りすぎていない。
アスリートだから、少し速そうで、少し若い。
でも、マークXほど生々しくない。
要するにこの車は、
“速そうに見える高級セダン”として、日本で一番ちょうどよかった位置にいたんです。
派手すぎない。
でも地味でもない。
ここがクラウン アスリートの強さでした。
忖度なしで言うなら、少し“頑張っている感”もある
もちろん、いいところばかりではありません。
この車には、少しだけ頑張っている感じがあります。
まず、ゼロクラウンの“若返りました”感は、今見ると少し露骨です。
もう少し自然にやれなかったのか、と思う瞬間はあります。
従来のクラウンの重厚さを知っている人ほど、その頑張りが見えてしまう。
次に、内装も質感は悪くないですが、完全な別格ではありません。
クラウンとしては十分上等。
でも、セルシオや後年のレクサスみたいな圧倒的な高級感と比べると、少し現実的です。
このあたりは良くも悪くも“トヨタの上級車”の枠に収まっています。
それと、今となっては当然ながら古い。
電子制御も、質感も、ナビまわりも、全部が時代相応です。
名前だけでありがたがる段階は過ぎていて、今は個体の状態を見るべき車です。
ここを外すと、ただの“昔のクラウン”で終わります。
それでも、この車をちゃんと評価したくなる理由
それでもGRS184の3500アスリート G Packageに価値があるのは、
クラウンがまだFRセダンとしてちゃんと色気を持っていた時代の証拠だからです。
最近の車は便利です。
でも、便利なだけで終わるものも多い。
一方でこのクラウンには、便利さと格と少しの速さが、かなりいやらしく混ざっている。
上品なようで、少し悪い。
高級なようで、少しやる気がある。
この中途半端さが、実はすごく魅力的なんです。
しかも3.5LのV6という時点で、今ではもう説明不要の贅沢です。
こういう車、無くなってから効いてくる。
派手に神格化されるタイプではないけれど、後から
「あれ、実はかなり良かったな」
と効いてくる。
GRS184はそういう車だと思います。
まとめ
トヨタ クラウン アスリート G Package(GRS184)'05は、
クラウンにスポーツをやらせてみたら、意外とちゃんと似合っていた時代の象徴です。
ゼロクラウンらしい若返り。
3.5L V6の余裕。
アスリートの少し悪い顔。
G Packageのちゃんとした上質感。
全部がきれいに揃っている。
忖度なしで言えば、
少し頑張りすぎ。
少し若作り。
今見ると時代相応の古さもある。
でも、それでもなお、
“速いクラウンって、実はかなりいいじゃないか”と素直に思わせる説得力がある。
要するにGRS184のアスリート G Packageは、
一番格の高いクラウンではないけれど、一番色気のあるクラウンのひとつです。
そういう車は、派手ではなくても長く残ります。
