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ダイハツ ムーヴカスタム RSリミテッド (L152S) ’02|4気筒ターボを積んだ“便利そうで便利だけじゃ終わらない”軽

ダイハツ ムーヴカスタム

■ 基本スペック (ノーマル時)

項目スペック
メーカーダイハツ
駆動方式FF
エンジンJB-DET 直列4気筒ターボ
総排気量659cc
最高出力64ps / 6,000rpm
最大トルク10.2kgf・m / 3,600rpm
全長×全幅×全高3,395×1,475×1,610mm
車両重量870kg
トランスミッション4速AT

軽ハイトワゴンなんて、だいたいは生活の道具です。広い、安い、使いやすい。そこまではいい。
でもL152Sのムーヴカスタム RSリミテッドは、その枠に収まりきっていません。なにしろJB-DETの4気筒ターボを積んでいる。見た目は買い物車なのに、中身だけ妙に気合いが入っている。こういう車は面白いです。実用車の顔をした変わり種。そこがこの車の価値です。2002年10月発売のこのグレードは、659ccのJB-DET型ICターボ、64ps、10.2kgf・m、FF、4速ATという構成でした。

ただし、面白い車=無条件で名車、ではありません。
このムーヴ、褒めようと思えばいくらでも褒められますが、持ち上げすぎると一気に薄っぺらくなります。4気筒ターボは確かに魅力です。でも、だからといって全部が特別に優れているわけではない。むしろ「妙な魅力はあるが、古い軽としての雑さも普通に背負っている」という見方のほうが正しいです。

ただのムーヴではない、という話

L152Sのいちばん大きな武器は、やはりJB-DETです。
今の軽は効率重視で3気筒が主流ですが、この時代のRSリミテッドは4気筒ターボ。数字だけ見れば自主規制上限の64psで珍しくも何ともないように見えますが、面白いのは数値より成り立ちです。背の高い実用軽に、わざわざ4気筒ターボを載せる。この時点で少しおかしい。良い意味で、ですが。エンジンの回り方や雰囲気に、今の軽とは違う“機械っぽさ”があります。

しかも外見も、ただの地味な箱では終わっていません。
4灯式のヘッドランプ、エアロ、15インチアルミ、黒基調の内装。生活車にしては妙に気合いが入っている。ダイハツ自身もこの代のムーヴを大きく刷新したモデルとして打ち出していて、室内空間の拡大や使い勝手の向上も含め、主力車種としてかなり本気だったことがわかります。見た目だけ派手にして中身はいつもの軽、という雑な作りではなかったのは確かです。

良いところは、ちゃんと良い

まず素直に評価したいのは、実用性と趣味性のバランスです。
この車、速さだけのバカ車ではありません。ムーヴとしての室内空間や乗り降りのしやすさはちゃんと持っていて、日常の足として普通に成立します。そのうえで、4気筒ターボという“ちょっと変なご褒美”が乗っている。この二面性がL152Sの強さです。便利なだけの軽では物足りない、でもスポーツカーほど割り切りたくもない。そんな層には妙に刺さる車でした。

装備面も、当時の軽としてはなかなか頑張っています。
HID、15インチアルミ、ABS、本革巻きステアリングなど、軽だから適当でいいだろうという投げやり感は薄いです。今見ると豪華装備そのものではありませんが、少なくとも“安い軽の上級グレードです”で終わらせない意地は感じます。2000年代前半のカスタム軽らしい、少し見栄を張った感じがちゃんとある。そこはこの車の魅力です。

でも、持ち上げすぎるとウソになる

ここからが大事です。
この車を「軽なのに爆速」とか「今でも圧倒的」とか書くと、さすがに雑すぎます。4気筒ターボという響きは強いですが、試乗評価では、3000rpm以降のトルク感はある一方で、昔のターボ車みたいな過激さや暴力的な伸びを期待すると拍子抜けする、という見方もされていました。要するに、見た目ほどヤンチャではない。少し落ち着いた優等生寄りです。良く言えば洗練、悪く言えば毒が薄い。

足まわりや乗り心地も、手放しで褒めるのは無理があります。
装備を盛って見た目を整えたところで、ベースはあくまで当時の軽ハイトワゴンです。背の高い車体に4AT、年式相応の設計。現代の軽のような完成度や静粛性、CVTの滑らかさを期待すると普通に古いです。いかにも“昔の軽”らしい粗さは残っています。快適性まで高級車ヅラされると、それはさすがに話を盛りすぎです。

致命的欠陥はあるのか

ここは雑に断言しないほうがいいです。
L152Sだけが抱える「全車即アウト級の単独欠陥」が広く確定している、というより、この時代のダイハツ軽らしく冷却系や補機類、整備状態の差でコンディションが大きく変わる車と見たほうが現実的です。実際、ダイハツはムーヴを含む対象車に対して、冷却水配管の樹脂製ジョイントの耐熱性不足により変形し、冷却水がにじむおそれがあるとしてサービスキャンペーンを案内しています。

さらに、点検・整備時にオイルがオルタネータへ付着・浸入すると、発熱や発火につながるおそれがあるとして、ダイハツが注意喚起を行っています。
つまりこの車は、“神話級の一発地雷”があるというより、年式なりに冷却系・電装系・補機類の状態を見ずに買うと痛い目を見るタイプです。安い中古車にありがちな「とりあえずエンジンかかるからヨシ」で済ませると、その雑さのツケを後から払うことになります。古いターボ軽なんて、安く買って楽をするカテゴリーではありません。そこは勘違いしないほうがいいです。

発売当時の立ち位置と評価

2002年当時、このムーヴはダイハツの主力としてかなり力が入っていました。
3代目ムーヴはフルモデルチェンジで登場し、室内の広さや使い勝手の進化を前面に出しつつ、カスタム系はよりシャープで都会的な方向へ振っています。要するに、「生活車だけど安っぽくは見られたくない」という時代の空気をかなり正面から拾っていたわけです。今見るといかにも2000年代前半らしいですが、当時としてはわりと本気で“軽の上質化”を狙ったモデルでした。

当時の試乗評価も、面白いくらいこの車の本質を突いています。
デザインや質感については好意的な評価が多く、軽の安っぽさを感じにくいという見方がありました。一方で走りについては、期待したほど尖っていない、落ち着いている、というニュアンスも見られます。つまり発売当時からこの車は、「完成度は高い。でも思ったより悪ぶってはいない」という評価だったわけです。見た目はやる気十分、中身は意外と常識人。そういう車です。

令和8年での中古相場

2026年3月時点の中古相場は、だいたい20万〜50万円台が目安です。
カーセンサー掲載例では、支払総額20万円の修復歴あり・無整備車から、整備付きの20万円台後半、さらに走行距離や状態が比較的良い個体では50万円台まで確認できます。つまり「古いから全部タダ同然」というわけでもなく、状態が良さそうな個体にはちゃんと値段が付いています。逆に言えば、安い個体には安い理由があると思ったほうがいいです。

この手の車は、価格表だけ見て飛びつくと失敗しやすいです。
20万円で買えたとしても、その後に冷却系、足まわり、補機類、ゴム類、電装系を触るなら、結局それなりにお金はかかる。安く見えるのは入口だけで、出口は案外安くありません。古いターボ軽を買うというのは、“節約”ではなく“趣味への課金”です。そこを見誤ると、中古車を買ったはずが修理費のサブスクを契約した気分になります。

総評

L152Sムーヴカスタム RSリミテッドは、便利な軽として見れば十分に魅力があり、変わり種として見ればなおさら面白い車です。
JB-DETの4気筒ターボという時点で、もう今ではかなり貴重ですし、カスタム軽としての見た目の濃さもちゃんとある。実用車の顔をしているくせに、どこか趣味車の匂いがする。このアンバランスさは、今の優等生な軽にはなかなかありません。

ただし、神格化するほど万能でもありません。
速さは期待しすぎると肩透かし、快適性も年式相応、コンディション次第では普通に面倒くさい。要するに、名車というより“クセのある良車”です。
でも、だからこそ面白い。誰にでも勧められる車ではないが、刺さる人にはちゃんと刺さる。L152Sのムーヴカスタム RSリミテッドは、そういう一台です。

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