
THE LEGENDとは
THE LEGEND。
名前が強い。強すぎる。
自分から「伝説です」と名乗る車は、だいたいハードルを自分で首に巻いて走っている。
ベース車は、見た目からしてホンダ NSX(NC1)’17と思われる。
低いノーズ、ワイドなボディ、ミッドシップらしいキャビン位置、そしてハイブリッドAWDスーパーカー特有の無機質な雰囲気。
初代NSXのような薄味の美しさではなく、こちらはもっと複雑で、電子制御と空力と冷却の都合がボディに出ている。
ゲーム内では3,841cc、843ps、95kgm、4WD、1,534kg。
実車のNC1 NSXは3.5L V6ツインターボに3つのモーターを組み合わせるSport Hybrid SH-AWDで、システム最高出力は573hp、最大トルクは476lb-ftという構成だった。そこから843psまで持ち上げるとなると、もう「少し速いNSX」ではない。ハイブリッド制御まで巻き込んだ、かなり本気の怪物になる。
ベース車としてのNC1 NSX
NC1型NSXは、初代NSXの直接的な続編として見ると少しややこしい。
初代は軽量、自然吸気V6、ミッドシップ、職人的なハンドリング。
一方、NC1は3.5L V6ツインターボ、9速DCT、3モーター、4WD、電子制御。
方向性がまったく違う。
言ってしまえば、初代NSXが「包丁」なら、NC1は「電動工具付きの多機能工作機械」だ。
切れ味はある。だが、操作感はかなり違う。
NC1はアメリカ・オハイオ州のPerformance Manufacturing Centerで生産され、3.5LツインターボV6はAnna Engine Plantで手組みされる。さらにNSX専用のマルチマテリアルボディとアルミ主体のスペースフレームを持つ、かなり凝った構造の車だった。
この車は、単純な「ホンダのスポーツカー」ではない。
ホンダがハイブリッド時代にスーパーカーを作るならこうなる、という実験作に近い。
成功作かどうかは議論がある。
ただ、技術の詰め込み方は相当なものだ。
問題は、それが分かりやすい快感として伝わりにくかったこと。
NSXという名前を背負った時点で、世間は勝手に“軽くて気持ちいい和製フェラーリキラー”を期待する。
そこへ出てきたのが、かなり賢いハイブリッドAWD。
そりゃ話がこじれる。
見た目は派手。だが車名ほど伝説感はない
THE LEGENDの外装は、かなり目立つ。
水色系のボディ。
ゴールド系の模様。
大きめのリアウイング。
フロントもかなり攻撃的で、ノーマルNSXよりもショーカー感が強い。
悪くない。
ただし、少し喋りすぎている。
NC1 NSXは元々、造形がかなり複雑だ。
サイドインテーク、低いフロント、厚いリア、空力のための開口部。
そこへ派手なグラフィックを足すと、車体の線よりデザインの主張が前に出る。
話し言葉で言えば、
「伝説を名乗るなら、もう少し黙っててもよかった」
という感じだ。
ただ、色の方向性は悪くない。
水色と金の組み合わせは、NSXの未来感に合う。
スカルや炎ではなく、少し神話っぽい方向に振っているのも車名とは合っている。
でもTHE LEGENDという名前は重い。
この名前を付けるなら、見た目だけでなく中身も相当作り込まないといけない。
名前が強すぎる車は、中身が追いつかないとすぐコントになる。
843psは実車で可能か
方向性としては成立する。
ただし、NC1 NSXで843psを狙うなら、普通のチューニングカーとはかなり話が変わる。
NC1はエンジンだけの車ではない。
V6ツインターボ、9速DCT、リアのDirect Drive Motor、フロントのTwin Motor Unit、バッテリー、制御系。
全部がつながって動く。
ここに大パワーを入れるなら、エンジンだけ強くしても足りない。
吸排気、タービン、冷却、燃料、ECU、DCT、モーター制御、バッテリー温度管理まで見る必要がある。
実際、ScienceofSpeedがSEMAで発表したNC1 NSX “Dream Project”では、ダウンパイプ、軽量ステンレスマフラー、液体噴射式インタークーリングなどでシステム出力610hp、トルク507lb-ftまで高めていた。つまり、NC1 NSXを純正以上に伸ばす土台は現実にある。
ただし、THE LEGENDの843psはさらに上だ。
610hp級ならチューニングNSXとして現実味がある。
843ps級になると、もう「パーツを替えました」ではなく、パワーユニット全体を作る領域になる。
3.8L級という設定
ゲーム内の排気量は3,841cc。
実車NC1のV6は3.5Lなので、これは3.8L級まで排気量を拡大した仕様と見るのが自然だ。
実車で寄せるなら、かなり大掛かりなエンジンビルドになる。
必要な内容は以下。
- ストローカークランク
- 鍛造ピストン
- 鍛造コンロッド
- 強化メタル
- 強化ヘッドガスケット
- ヘッドスタッド
- 強化バルブスプリング
- カムシャフト
- 強化オイルポンプ
- エンジンバランス取り
- ECU再セッティング
- ハイブリッド制御との整合
843psだけを見るなら、大容量タービンと補機類で狙う方向もある。
だが、3.8L化する意味はトルクだ。
この車は4WDで、しかもハイブリッド。
低中速の押し出しを強くして、そこへモーターのレスポンスを重ねる。
理屈としてはかなり強い。
ただし、整備性と費用はかなり濃い。
NC1 NSXのエンジンルームは、昭和のFRターボみたいに「ボンネット開けて適当に触る」車ではない。
高級な知恵の輪である。
95kgmはかなり危ない数字
843psより怖いのは95kgmだ。
4WDだから踏める。
ハイブリッドだから立ち上がりも鋭い。
だが、そのぶんDCT、クラッチ、トランスファー、ドライブシャフト、モーター、冷却系に負担がかかる。
NC1 NSXは、単純な機械式4WDではない。
フロントは左右独立したモーターで制御し、リアはV6ターボとモーター、9速DCTが絡む。
この構成で95kgm級を扱うなら、制御の作り込みがかなり重要になる。
馬力だけ上げると、車が速くなる前に制御が困る。
人間で言えば、筋肉だけ増やして神経系が追いついていない状態だ。
見た目は強そうでも、動きがぎこちない。
THE LEGENDを名乗るなら、出力より制御が大事だ。
伝説は雑なブーストアップでは作れない。
実車で作るなら、まず600〜650ps級
実車で現実的に楽しむなら、まず600〜650ps級がかなり良い。
必要な内容は以下。
- スポーツダウンパイプ
- 高効率マフラー
- インタークーラー強化
- チャージパイプ強化
- ECUチューン
- ブースト管理
- 吸気温管理
- DCT温度管理
- 高性能タイヤ
- ブレーキ強化
- 足回りセッティング
ScienceofSpeedには2017〜2022年式NSX向けのバルブ付きスポーツマフラー、スポーツダウンパイプ、チャージチューブ、インタークーラーアップグレードなどが用意されている。純正のモード制御を活かしつつ、排気音と流量を改善する方向のパーツも存在する。
このくらいなら、NC1 NSXの完成度を壊さずに速くできる。
純正のハイブリッド制御、AWD、DCTの良さも残る。
843psまで盛る前に、まずは“踏める600ps台”を作る。
その方が車としてまとまりやすい。
THE LEGEND再現の843ps仕様
ゲーム内の数字に寄せるなら、かなり本気の内容になる。
必要な内容は以下。
- 3.8L級エンジンビルド
- 鍛造ピストン
- 鍛造コンロッド
- 強化バルブスプリング
- 大容量ツインターボ
- 強化アクチュエーター
- 高効率ダウンパイプ
- 高効率マフラー
- 大容量インタークーラー
- 液体噴射式インタークーリング
- 強化チャージパイプ
- 大容量燃料ポンプ
- 大容量インジェクター
- ECU現車合わせ
- ハイブリッド制御最適化
- DCT冷却強化
- ブレーキ強化
- 足回り強化
- ボディ補強
ここまでやるなら、もう純正NC1の延長ではない。
別物のハイブリッドスーパーカーだ。
ただし、NC1の場合はエンジン単体で考えると失敗する。
この車はシステムで速い。
エンジン、モーター、DCT、バッテリー、タイヤ、ブレーキ、空力。
全部が揃って初めて意味がある。
843psを作ることより、843psを車として使える状態にすることが本題である。
タービン・吸排気
843ps級を狙うなら、タービンは大容量化が前提になる。
必要なパーツは以下。
- 大容量ツインターボ
- 強化エキマニ
- 高効率ダウンパイプ
- スポーツキャタライザー
- 低排圧マフラー
- 強化チャージパイプ
- 大容量インタークーラー
- ブースト制御
- ECU現車合わせ
ただし、NC1 NSXは排気音が控えめだとよく言われる車でもある。
純正は上品だが、悪く言えば大人しすぎる。
THE LEGEND仕様なら、排気音はもう少し主張があっていい。
ただし、ただうるさいだけのNSXはかなり安い。
音量ではなく、抜け、熱、制御、音質。
ここを整えたい。
「音だけ速い車」は多い。
NSXでそれをやると、かなり悲しい。
冷却系
NC1 NSXで高出力化するなら、冷却はかなり重要だ。
実車のNSXは開発時から「Total Airflow Management」という考え方で、エンジン、モーター、トランスミッション、ブレーキ、空力をまとめて扱う冷却設計がされている。フロント開口部、サイドインテーク、ルーフ後方の流れまで使って、各冷却系に空気を送る構造だ。
必要な内容は以下。
- 大容量インタークーラー
- ラジエーター強化
- エンジンオイルクーラー
- DCTクーラー
- ハイブリッドシステム冷却管理
- ブレーキダクト
- 導風板
- 排熱ダクト
- 水温計
- 油温計
- DCT油温管理
- 吸気温管理
NC1は冷却が複雑だ。
古いFRターボのように「前に大きいインタークーラーを置けば終了」ではない。
エンジン、モーター、DCT、バッテリー、ブレーキが全部熱を持つ。
843ps級なら、ここを作らないと話にならない。
伝説は熱ダレした瞬間、ただの高い機械になる。
駆動系とDCT
NC1 NSXの駆動系はかなり特殊だ。
リアはV6ターボと9速DCT、フロントは左右独立モーター。
しかもトルクベクタリングまで絡む。
必要な内容は以下。
- DCT油温管理
- DCTクーラー強化
- クラッチ保護制御
- トルクリミット管理
- ドライブシャフト点検
- ハブベアリング点検
- 前後モーター制御確認
- ハイブリッド系統診断
- 高性能タイヤ
- アライメント調整
NC1は、機械だけでなく制御が命だ。
ここを理解せずにパワーだけ盛ると、車が変な動きをする。
4WDだから安心、ではない。
4WDだからこそ、出力を逃がさず全部受け止める。
つまり壊れる時もきっちり高額になる。
足回り
NC1 NSXは純正の足がかなり高度だ。
公式のシャシー解説では、前後アルミ製サスペンションを高剛性マルチマテリアルスペースフレームへ直接マウントし、前はダブルウィッシュボーン、後ろはマルチリンク。さらに第3世代の磁性流体式ダンパーを採用している。
この車を下げるなら、ただ車高を落とすだけではもったいない。
必要な内容は以下。
- 専用ローダウンキット
- 電子制御ダンパーとの整合
- 高性能タイヤ
- アライメント調整
- コーナーウェイト調整
- 強化ブッシュ
- 必要に応じて車高調
- フロントリフト機構
ScienceofSpeedのDream Projectでは、カスタムのローダウンキットで車高を約1インチ下げ、さらにiLIFTのフロントリフトシステムも組み合わせていた。NC1で実車を作るなら、見た目の低さと実用性の両方を見たい。
低いNSXはかっこいい。
だが、段差でフロントを擦って毎回顔が死ぬ車はスマートではない。
スーパーカーは速さだけでなく、使い勝手も含めて完成度だ。
ブレーキ
843ps級なら、ブレーキは本気で作る必要がある。
必要な内容は以下。
- カーボンセラミックブレーキ
- 高性能パッド
- 高沸点ブレーキフルード
- ステンメッシュホース
- ブレーキダクト
- ABSとの相性確認
- 回生ブレーキ制御との整合
NC1 NSXは回生ブレーキと摩擦ブレーキを統合する仕組みを持つ。
そこに強いブレーキパーツを入れるなら、ペダルフィールと制御の自然さも見たい。
速いNSXが止まらないのは、かなりダサい。
しかもハイブリッドスーパーカーでそれをやると、技術の無駄遣い感が強い。
止まれるから速い。
これはNC1でも同じだ。
ボディ補強
THE LEGENDで重要なのがボディ補強だ。
NC1 NSXは、旧車のように単純にタワーバーを入れて終わる車ではない。
そもそも構造がかなり特殊だ。
NSXの車体はマルチマテリアルスペースフレームで、アルミ主体の構造、アブレーション鋳造ノード、アルミパネル、オプションのカーボンルーフなどを組み合わせる。外板は最後に装着される構造で、一般的なモノコック車とは考え方が違う。
フロントまわり
- フロントサスペンション取付部点検
- フロントロア部補強
- フロントリップ取付部補強
- カナード取付部補強
- ブレーキダクト固定部確認
- フロントアンダーパネル固定強化
NC1はフロントにモーター系と冷却系がある。
ここにエアロを足すなら、ただ見た目で付けるのではなく、空気の通り道を考える必要がある。
フロントカナードや大型リップは効く。
だが、固定が弱ければ飾り以下だ。
速度が出る車ほど、エアロは部品ではなく責任になる。
センター・フロアまわり
- アンダーパネル固定部強化
- センターフロア補強
- サイドシル周辺点検
- ジャッキアップポイント確認
- 冷却ダクト周辺の固定確認
- フロア下整流パネルの固定強化
NC1は床下の空力も重要だ。
車高を落とし、エアロを入れ、843ps級にするなら、床下のパネル固定や導風も見たい。
見えないところに金を入れるNSXは強い。
見えるところだけ青金に塗ったNSXは、説明が長いだけで終わる。
リアまわり
- リアサブフレーム周辺点検
- パワーユニットマウント確認
- リアウイング取付部補強
- リアディフューザー取付部補強
- エンジンルーム排熱対策
- リアバンパー内の導風確認
この車はリアウイングが大きい。
なら、取付部の補強はかなり大事だ。
NC1はミッドシップなので、リアまわりにエンジン、DCT、ターボ、冷却系が集中する。
ここへ大型ウイングとディフューザーを足すなら、空力と排熱をセットで見るべきだ。
羽だけ立派で、熱が抜けないNSX。
それはかなり情けない。
ロールケージ
サーキット寄りならロールケージも選択肢に入る。
- 4点式
- 6点式
- サイドバー追加
- ダッシュ逃げ
- ダッシュ貫通
ただし、NC1の場合は簡単ではない。
ハイブリッド系、内装、センサー、配線、エアバッグ、スペースフレーム構造との兼ね合いがある。
ストリート寄りなら、まずは空力パーツの固定強化、足回り精度、冷却、DCT温度管理、タイヤ、ブレーキ。
サーキット専用に寄せるなら、ケージまで含めて作る。
この順番が自然だ。
軽量化
ゲーム内の車重は1,534kg。
NC1 NSXとして見ると、かなり軽い。
近づけるなら以下。
- カーボンルーフ
- カーボンボンネット
- カーボンエンジンカバー
- 軽量ホイール
- チタンマフラー
- フルバケットシート
- 軽量バッテリー
- 内装一部軽量化
- カーボンエアロ
- カーボンセラミックブレーキ
ただし、NC1はハイブリッドシステムを持つため、軽量化にも限界がある。
バッテリー、モーター、DCT、冷却系を抱えた車だ。
単純に内装を剥がして軽くする車ではない。
この車は、無理にスカスカにするより、冷却・ブレーキ・タイヤ・空力を整えた方が速い。
軽さだけを追うなら、そもそもNC1を選ぶ意味が薄れる。
NC1は重さを技術で処理する車だ。
そこを理解して作る方がいい。
外装を実車で再現するなら
THE LEGEND風にするなら、必要な外装パーツは以下。
- ターコイズブルー系ラッピング
- ゴールド系グラフィック
- フロントリップ
- カナード
- サイドステップ
- リアディフューザー
- 大型リアウイング
- 鍛造ホイール
- ローダウンキット
- 必要に応じてワイドボディキット
Liberty WalkからはNC1 NSX向けにフロントディフューザー、サイドディフューザー、リアディフューザー、リアウイングなどを含むエアロキットも展開されている。実車でこの方向を作るなら、見た目だけでなく、冷却と空力の流れまで考えたい。
おすすめは、
青系ボディ、金の装飾は控えめ、大型ウイングは機能重視、フロント開口は冷却重視。
今の仕様はかなりキャラが立っている。
ただし、実車でやるなら少し引き算した方がいい。
THE LEGENDを名乗るなら、派手に説明しなくても存在感が出る方が強い。
伝説は、自分で長々と自己紹介しない。
辛口総評
THE LEGENDは、かなり強いNC1 NSX風カスタムだ。
ベースはホンダ NSX(NC1)’17。
3.5L V6ツインターボ、3モーター、9速DCT、Sport Hybrid SH-AWD。
純正の時点でかなり凝ったハイブリッドスーパーカーである。
そこへ3.8L級、843ps、95kgm、4WD。
実車で作るなら、エンジン、タービン、燃料、冷却、DCT、モーター制御、空力、ブレーキ、ボディ補強まで全部見る必要がある。
辛口で言えば、THE LEGENDという名前は少し背負いすぎだ。
だが、NC1 NSXを843ps級まで作り込むなら、その名に近づく資格はある。
見た目だけ派手なNSXなら名前負け。
冷えて、曲がって、止まって、何度も踏めるなら本物だ。
要するにこの車は、
NC1 NSXの複雑なハイブリッドAWDをさらに高出力化した、かなり難易度の高いスーパーカーカスタムだ。
雑に作れば、派手なだけの高額NSX。
きっちり作れば、名前通りかなり伝説級の一台になる。
THE LEGEND。
名前は大きい。
でもNC1 NSXという素材なら、まだその看板を背負える。
問題は、作る側の腕と財布が伝説級かどうかだ。