
UNRIVALED EMPERORとは
UNRIVALED EMPEROR。
名前がもう強すぎる。
「無敵の皇帝」だ。普通なら名前負けする。軽自動車にこの名前を付けたら、ナンバー返納レベルの事件である。
ベース車は、見た目からして**日産 スカイラインGT-R VスペックⅡ(BNR34)**と思われる。
青いボディ、R34らしい四角い顔、GT-Rバッジ、大型リアウイング。
見た瞬間に「これはR34系だな」と分かる。
ただし、中身はかなり普通ではない。
ゲーム内表示ではV6ターボ、4.1L級、4WD、1500ps級。
つまり、純正のRB26DETTを強化したというより、R35 GT-R系のVR38DETTを4.1L級まで拡大して載せたような魔改造として見るのが自然だ。
R34の皮をかぶった、R35系エンジンの怪物。
もうこれはGT-Rというより、GT-R同士の合体事故である。
ベース車としてのR34 GT-R VスペックⅡ
R34 GT-R VスペックⅡは、GT-R史の中でもかなり濃い一台だ。
日産ヘリテージコレクションによると、VスペックⅡは2000年8月登場。BNR34型で、RB26DETT型2.6L直列6気筒ツインターボを搭載し、NACAダクト付きカーボン製エンジンフードやアルミ製ペダルを採用したスパルタンな仕様だった。Vスペック自体も、専用エアロ、専用サスペンション、アクティブLSDなどで走りに振ったモデルとされている。
R34 GT-Rは、いまや神格化されすぎている。
もちろん良い車だ。
だが、扱いがほとんど仏像である。
「磨く」「保管する」「相場を見る」ばかりで、走らせる話が後回しになりがちだ。
その点、UNRIVALED EMPERORは遠慮がない。
R34を保存対象ではなく、戦闘車両の素材として見ている。
これはかなり好きだ。
外装は皇帝というより、青い戦闘機
外装はかなり分かりやすい。
鮮やかなブルー。
金色系のグラフィック。
巨大リアウイング。
R34らしい角ばったフロント。
ボディ全体に“王者感”を出そうとしている。
辛口で言えば、少し演出が強い。
R34 GT-Rは素の形だけで十分に威圧感がある。
そこへ「皇帝です」と言わんばかりの装飾を足すと、やや自己紹介が長い。
ただ、この車名なら仕方ない。
UNRIVALED EMPERORを名乗っておいて、外装が地味な純正シルバーだったら、それはそれで困る。
この車は黙って速いタイプではない。
登場した瞬間に「道を空けろ」と言うタイプだ。
ちょっと面倒くさいが、ボス車としては正しい。
最大のポイントは“R34なのにV6”という違和感
この車の面白いところは、外観がR34なのに、エンジン表示がV6になっているところだ。
純正R34 GT-RはRB26DETT。
直列6気筒ツインターボだ。
そこをV6ターボとしているなら、実車で考える場合はVR38DETT系スワップが一番しっくりくる。
R35 GT-RのVR38DETTは3.8L V6ツインターボ。
そこから4.1L〜4.3L級へ排気量アップするメニューは実在する。HKSのVR38DETT 4.1Lキットは、ビッグタービンを考慮してロングストローク化し、低速トルクを稼ぐ狙いで開発されたもの。HKSは同キットを「800+」からのステップアップ向けとして説明しており、目安として1000ps・120kgm程度まで視野に入れている。
さらにHKSはVR38DETT 4.1Lキットを4.3Lキットへリニューアルし、ストローク99.0mm、許容トルク150kgf-mへの対応を掲げている。
UNRIVALED EMPERORの数字は、そのさらに上を狙うイメージだ。
つまり、これは普通のR34チューンではない。
R34にR35系の心臓を移植し、さらに極限まで盛った車と見るべきだ。
実車で可能なチューニングか
方向性としては成立する。
ただし、これは「R34のチューニング」ではなく、R34ボディを使ったフルビルドGT-Rだ。
実車でやるなら、必要になるのはこのあたり。
- VR38DETTエンジン
- 4.1L〜4.3L級ストローカーキット
- 鍛造ピストン
- 鍛造コンロッド
- 強化クランク
- 強化ヘッドガスケット
- ヘッドスタッド
- ハイカム
- 強化バルブスプリング
- 大容量ツインターボ
- 大容量インタークーラー
- 大容量燃料系
- フルコン制御
- 強化ミッション
- 強化トランスファー
- 強化ドライブシャフト
- 強化デフ
- 冷却系総強化
- ボディ補強
- ロールケージ
この仕様で大事なのは、エンジンだけではない。
むしろエンジンを載せてからが本番。
VR38をR34に積むなら、マウント、ミッション、プロペラシャフト、配線、ECU、冷却、補機類、フロアまわり、駆動系の整合性まで考える必要がある。
見た目はR34でも、中身はほとんど別の車になる。
話し言葉で言えば、
「R34を直す」じゃない。「R34で新車を建てる」
に近い。
1500ps級にするなら、エンジンより周辺が本番
1500ps級は、数字だけなら夢がある。
だが、夢はだいたい請求書を連れてくる。
必要なエンジン周辺は以下。
- 4.1L〜4.3L級VR38
- ビレットブロックまたは強化ブロック
- 鍛造ピストン
- 鍛造コンロッド
- ビレットクランク
- 強化メタル
- ヘッド加工
- 強化バルブスプリング
- ハイカム
- 大容量ツインターボ
- 大容量サージタンク
- ビッグスロットル
- 大容量インジェクター
- ツイン/トリプル燃料ポンプ
- E85または高オクタン燃料前提の燃調
- フルコン制御
1500ps級では、タービンだけ大きくしても車にならない。
燃料、点火、吸気温、排気温、ブースト制御。
このへんを全部詰めて初めて成立する。
馬力だけ大きい車は、シャシダイの上では偉い。
道路の上では、冷却と駆動系とタイヤが偉い。
UNRIVALED EMPERORを本当に皇帝にするなら、数字より“踏める状態”が大事だ。
駆動系は最重要
この車は4WD。
だから踏める。
そして踏めるからこそ、駆動系に全部来る。
必要な内容は以下。
- 強化ミッション
- ドグミッション
- 強化トランスファー
- 強化プロペラシャフト
- 強化ドライブシャフト
- 強化ハブ
- 前後LSD
- 強化デフマウント
- 強化エンジンマウント
- 強化ミッションマウント
- ミッションオイルクーラー
- トランスファーオイルクーラー
- デフオイルクーラー
R34純正の駆動系をそのまま信じる領域ではない。
1500ps級なら、どこか一箇所を甘くするとそこが真っ先に名乗り出る。
エンジンは皇帝。
駆動系は家臣。
家臣が先に逃げたら、皇帝もただの置物だ。
この仕様で一番ダサいのは、エンジンだけ元気でミッションが先に辞表を出すこと。
「UNRIVALED」どころか「UNRELIABLE」である。
冷却系
冷却はかなり重要だ。
1500ps級で冷却が弱いと、速さより先に熱が勝つ。
必要な内容は以下。
- 大容量ラジエーター
- 大容量インタークーラー
- ツインオイルクーラー
- ミッションオイルクーラー
- トランスファーオイルクーラー
- デフオイルクーラー
- パワステクーラー
- 導風板
- ボンネットダクト
- フェンダーダクト
- フロントアンダーカバー
- 水温計
- 油温計
- 油圧計
- 排気温計
- 吸気温管理
NISMOのBNR34用Z-tuneエアロは、高出力エンジンと高性能ブレーキの冷却、ダウンフォース増加を狙った設計で、フロントバンパーはインタークーラー、ラジエター、オイルクーラー、ブレーキへ走行風を導く思想がある。フロントフェンダーもエンジンルーム内の熱を抜く開口部を持ち、冷却効率とダウンフォース向上を狙っている。
UNRIVALED EMPERORも、この方向で作りたい。
ダクトは飾りではない。
風を入れる。熱を抜く。
ここをやって初めて、1500ps級の見た目に中身が追いつく。
足回り
R34 GT-Rは4WDだから、パワーを路面に落としやすい。
ただし、1500ps級では足回りが甘いと一気に怖い車になる。
必要なパーツは以下。
- 全長調整式車高調
- 減衰調整付きダンパー
- ピロアッパー
- 調整式アーム
- 強化スタビライザー
- ピロブッシュ
- ハイグリップタイヤ
- ワイドホイール
- アライメント調整
- コーナーウェイト調整
狙うべきは、硬い足ではない。
踏める足だ。
フロントが入る。
リアが粘る。
立ち上がりで四輪が逃げずに前へ出る。
この状態を作って初めて、1500ps級が意味を持つ。
車高だけ落として、タイヤだけ太くして、アライメントが適当。
それは写真用のGT-Rだ。
皇帝を名乗るなら、走りで黙らせたい。
ブレーキ
この仕様でブレーキを軽く見るのはかなり危ない。
必要な内容は以下。
- 6pot〜8pot級フロントキャリパー
- 4pot〜6pot級リアキャリパー
- 大径2ピースローター
- 高性能ブレーキパッド
- ステンメッシュホース
- 高沸点ブレーキフルード
- ブレーキダクト
- ABSとの相性確認
- ペダルフィール調整
速いGT-Rが止まらないのは、本当に笑えない。
しかも4WDで重さもある。
速度の乗り方も速い。
1500ps級でブレーキが弱い車は、スポーツカーではなく、ただの高価な飛び道具だ。
ボディ補強
UNRIVALED EMPERORでかなり大事なのがボディ補強だ。
BNR34は元から剛性のある車だが、1500ps級、4WD、ワイドタイヤ、大型ウイングを入れるなら、ボディ側も作る必要がある。
フロントまわり
- フロントストラットタワーバー
- フロントロアブレース
- フロントメンバーブレース
- ステアリングラック周辺補強
- フロントサスペンション取付部点検
- フロントクロスメンバー補強
- エンジンマウント周辺補強
NISMOのアンダーフロア補強バーは、BNR34にも設定され、フロア下部を補強して車体のねじれ剛性と曲げ剛性を高め、リニアで安定した挙動を狙うパーツとされている。
フロントが弱いと、重いエンジンと強いブレーキに負ける。
R34は顔が強いだけではダメだ。
骨も強くする。
センター・フロアまわり
- フロアブレース
- センターブレース
- トンネル補強
- サイドシル補強
- ジャッキアップポイント補強
- アンダーパネル固定強化
- スポット増し
- シーム溶接
高出力4WDは、ボディ全体に力が入る。
床下が甘いと、足回りの動きもぼやける。
見えないところに金を入れているGT-Rは強い。
見えるところだけ派手なGT-Rは、まあ、イベント会場では強い。道路では別の話だ。
リアまわり
- リアタワーバー
- リアメンバーブレース
- デフマウント強化
- サブフレームブッシュ交換
- リアアーム類リフレッシュ
- リアウイング取付部補強
NISMOのリアメンバーブレースは、BCNR33/BNR34用として設定され、リアサスペンション構造の剛性を高め、たわみによるアライメント変化を抑え、コーナリングやトラクションを改善する狙いのパーツとされている。
UNRIVALED EMPERORは大型ウイング付き。
なら、取付部の補強も必要だ。
ウイングは飾りではない。
速度域が上がれば、ボディに力を入れる部品になる。
羽だけ立派で土台が弱い車は、かなり恥ずかしい。
ロールケージ
1500ps級なら、ロールケージはかなり現実的な選択肢になる。
- 6点式
- 8点式
- サイドバー追加
- ダッシュ逃げ
- ダッシュ貫通
- フロントストラット接続
- リアストラット接続
- スポット増しとの併用
街乗りを残すなら6点。
サーキットや記録狙いなら8点以上。
UNRIVALED EMPERORという名前でここまでやるなら、骨まで作るべきだ。
外装だけ皇帝で、中身が一般兵では困る。
外装を実車で再現するなら
UNRIVALED EMPEROR風にするなら、外装はかなり王道のR34チューンでいける。
必要な内容は以下。
- ブルー系オールペンまたはラッピング
- 金色系グラフィック
- カーボンボンネット
- ダクト付きボンネット
- Z-tune風フロントバンパー
- Z-tune風フロントフェンダー
- フロントリップ
- カナード
- サイドステップ
- 大型リアウイング
- アンダーカバー
- 鍛造ホイール
- ハイグリップタイヤ
おすすめは、ブルーを主役、金色は控えめ、黒カーボンで締める構成。
金を入れすぎると一気に成金っぽくなる。
皇帝と成金は似ているようで、かなり違う。
R34は素の形が強い。
だから、全部を飾るより、要所だけで威圧感を出す方がいい。
辛口総評
UNRIVALED EMPERORは、R34 GT-R VスペックⅡをベースに、R35系VR38DETT 4.1L級スワップを思わせる超高出力カスタムだ。
外観はR34。
中身はV6ターボ。
4WDで1500ps級。
この時点で、普通のGT-Rチューンとは別の世界にいる。
辛口で言えば、名前も見た目も少し偉そうだ。
ただし、この数字なら偉そうでも仕方ない。
1500ps級のGT-Rが謙虚だったら、それはそれで気味が悪い。
要するにこの車は、
R34 GT-RのボディにVR38DETT 4.1L級の心臓を入れた、ゲーム的フルビルド皇帝仕様だ。
雑に作れば、青いだけの重たい魔改造車。
きっちり作れば、かなり異様な存在感を持つ4WDモンスターになる。
UNRIVALED EMPEROR。
名前は大げさ。
見た目も大げさ。
中身はもっと大げさ。
そして実車で作るなら、一番先に臣下としてひざまずくのは財布である。