三菱

三菱 エクリプス GT(DK4A)'05は失敗作ではなく“北米向け問題作”だった

■ 基本スペック (ノーマル時)

項目スペック
メーカー三菱
駆動方式FF
エンジン6G75 V型6気筒
総排気量3,827cc
最高出力276ps / 5,750rpm
最大トルク36.0kgf・m / 4,500rpm
全長×全幅×全高4,805×1,839×1,369mm
車両重量1,575kg
トランスミッション6速MT / 5速AT

三菱 エクリプス GT(DK4A)'05は、ひとことで言えば日本人が思う“三菱スポーツ”の文法からかなり外れた車です。
ランエボのような硬派さもない。GTOのようなバブル的な過剰さとも少し違う。しかもこの世代のエクリプスは、国内の三菱ファンが思い浮かべる“三菱らしさ”より、北米で売るためのスペシャルティクーペとしての色がずっと濃い。三菱の北米向け公式資料でも、4代目エクリプスは“futuristic styling”や“attainable exotic”を前面に押し出して紹介されており、若年層だけでなく少し上の層にも訴求するスポーツクーペとして打ち出されていました。

だからこの車は、日本で見ると少し居場所が曖昧です。
「エクリプスって、そんな車だったか?」となるのも無理はない。けれど北米市場の目線で見ると、話はかなり分かりやすくなる。向こうでは4代目エクリプスは、2.4LのGSと3.8L V6のGTという分かりやすい構成で売られ、GTには6速MTまたは5速オートが用意されていました。つまりこの世代のエクリプスGTは、**“三菱版マッスル寄りスポーツクーペ”**としてちゃんと立ち位置があったわけです。


日本で“何とも言えない車”に見えた理由

このエクリプスが問題作に見える最大の理由は、たぶん日本で期待される三菱スポーツ像と、実際の商品の作り方がズレていたことです。

2000年代半ばの三菱に、国内の車好きが求めていたものはかなり明確でした。
四駆の暴力、ラリー由来の硬派さ、あるいはGTOみたいな技術過多の大味さ。ところが4代目エクリプスはそこへ行かなかった。北米の三菱はこの車を「日常でも使えるクーペ」「エキゾチックな見た目を持つ手の届くスポーツ」として訴求していて、キャラクターの中心は**“ランエボ的な速さ”ではなく“見た目と雰囲気を含めたスペシャルティ感”**にありました。

その結果、日本の目で見るとこの車は少し浮く。
フロントフェイスも全体の塊感も、どこかアメリカ向けの大味さがあり、軽快でシャープな国産クーペというより、**“アメリカの広い道で映えるクーペ”**に見える。国内で三菱に勤めていた人の中にも存在感が薄かったと言われても、正直それほど不思議ではありません。少なくとも商品企画の重心は、日本より北米にあったと見るほうが自然です。


3.8L V6という、いかにも北米向けの答え

この車の一番面白いところは、やはりGTに3.8L V6を積んだことでしょう。
北米向け公式資料によれば、GTの6G75型3.8L V6は263hpと260lb-ftを発生し、クラス最高トルクをうたっていました。しかも6速MTが標準、5速Sportronicオートも用意されていた。これ、今見てもかなり“そっち側”です。高回転NAの気持ちよさで勝負する日本的な2.0Lクーペではなく、排気量とトルクで満足感を作るアメリカ市場向けのスポーツクーペなんです。

この時点で、もうキャラクターはかなりはっきりしています。
繊細なハンドリングマシンではない。軽量高回転の和製名車でもない。
むしろ、**“三菱が作った前輪駆動寄りのアメリカンスポーツクーペ”**と見たほうがしっくりくる。
だから日本で見た時に違和感が出るのは当然で、逆に北米で人気が出たのも理解しやすい。実際、三菱はこの世代のエクリプスを北米で“signature luxury performance sports coupe”とまで表現しており、ブランドの象徴的クーペとして扱っていました。


見た目は、かなり良かった

正直に言えば、この車は見た目だけなら今見てもかなり魅力があります。
三菱自身も“bold styling”“driven to thrill design”と前面に出していましたが、それは誇張ではない。丸みの強いルーフライン、グラマラスなフェンダー、厚みのあるボディサイド、低く構えたフロント。昔のエクリプスのようなシャープなターボクーペではない代わりに、**“塊感のあるエキゾチック風クーペ”**としてはかなりよくまとまっていました。

この“エキゾチックっぽいのに手が届く”という感覚は、当時の北米で受けた理由でもあるはずです。
実際、三菱はこの車を“attainable exotic”と呼んでいた。つまり最初から、フェラーリやポルシェの代用品ではなく、**“それっぽい高揚感を現実的な価格で味わえるクーペ”**として売っていたわけです。


ただし、速さや純度で語ると苦しい

ここがこの車の厳しいところです。
見た目はかなり気分を上げてくる。3.8L V6という数字も強い。
でも、そこから想像するほどピュアなスポーツカーではない

北米向け資料でも、この世代のエクリプスは“daily driverとしての実用性”をかなり意識していて、4人乗り、装備、オーディオ、快適装備なども売りにしていました。つまり設計思想としては、最初から純スポーツよりスペシャルティクーペ寄りです。GTが速いのは事実でも、サーキットで名を刻むような尖った存在ではない。日本の車好きが“三菱のGT”という名前から勝手に期待する濃さまでは、正直持っていません。

だからこの車を“問題作”と呼ぶなら、それは失敗作という意味ではなく、
見る側の期待と、商品としての実態がズレていた車
という意味での問題作です。
アメリカでは分かりやすい。日本では少し説明がいる。そこがこの車の面倒くささであり、同時に面白さでもあります。


そして、消え方まで北米クーペらしかった

4代目エクリプスは、北米で長く売られたものの、三菱は2011年に2012年型を最後に生産終了すると発表しました。つまりこの路線は、完全に次世代へつながったわけではなく、北米スペシャルティクーペとして一時代を終えた形です。のちに“Eclipse”の名は2018年にEclipse CrossというクロスオーバーSUVで復活しますが、これはクーペではなく完全に別の文法です。

ここも象徴的です。
エクリプスという名は残ったが、かつてのクーペの魂がそのまま復活したわけではない。
だから4代目エクリプスGTは、余計に宙ぶらりんに見える。
最後の“エクリプスらしくないエクリプス”であり、最後の“ちゃんとクーペだったエクリプス”でもある
この矛盾が、この車をより問題作らしく見せています。


総評

三菱 エクリプス GT(DK4A)'05は、日本では居場所が曖昧で、北米ではちゃんと文脈があった車です。
3.8L V6、エキゾチック風のスタイリング、手の届くスペシャルティクーペという立ち位置。
これだけ見ると、北米向け商品としてはかなり筋が通っている。

忖度なしで言えば、日本の車好きが期待する“三菱スポーツ”とはだいぶ違います。
だから国内では「何とも言えない車」に見えたし、知らない人がいても不思議ではない。
でも、雑に失敗作で片付けるのも違う。
この車は、“海外で売るために本気で作ったら、日本では妙に浮いた”という意味での問題作です。
そしてそういう車は、時間が経つほど味が出る。

要するにエクリプス GT(DK4A)'05は、
国内目線ではズレている。だが、北米目線ではかなり素直で、今見ればむしろ面白い。
そんな一台です。

-三菱