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三菱 GTO TWIN TURBO(Z16A)'95は“鋼鉄の怪物”だった

■ 基本スペック (ノーマル時)

項目スペック
メーカー三菱
駆動方式4WD
エンジン6G72 V型6気筒 ツインターボ
総排気量2,972cc
最高出力280ps / 6,000rpm
最大トルク43.5kgf・m / 2,500rpm
全長×全幅×全高4,575×1,840×1,285mm
車両重量1,710kg
トランスミッション6速MT

GTOを語る時、まず捨てたほうがいい先入観があります。
それは、「スポーツカーなら軽くてシャープであるべきだ」という考え方です。

GTOは、その方向には行っていません。
むしろ真逆です。
ボディは大きい。重い。装備は多い。駆動系も複雑。
そして、その全部を抱えたまま速い。
この車の魅力はそこにあります。

要するにGTOは、
“無駄を削った名車”ではなく、“無駄ごと全部積んで速くした名車”
なんです。

この発想が、実に三菱らしい。
スマートではない。
でも、やたら本気。
そして、妙に頑丈そう。
それがGTOです。


これは“パジェロ的”な三菱のスポーツカーだった

この車を見ていると、たしかに少しパジェロっぽい発想を感じます。
もちろんSUVではないし、車高も低い。
でも、車作りの根っこの部分にあるのは、**「まず土台を強く作って、そこに全部盛る」**という三菱的な思想です。

GTOは、繊細に削って作ったライトウェイトスポーツではありません。
最初からかなり堅牢で、かなり重厚で、かなり大げさ。
その上で、ツインターボ、4WD、電子制御、空力デバイスまで持ち込んで、
「これで速くないわけがないだろ」
と押し切ってくる。

この“剛の設計”が、GTOの一番大きな個性です。

だからGTOは、
ハンドルを切った瞬間にヒラッと向きが変わる車ではない。
人間の入力に対して繊細な薄さで返してくるタイプでもない。
もっと鈍重で、もっと重くて、でもその重さの奥に異様な安心感と力強さがある。
そこがたまらない人には、本当にたまらない。


GTOはGT-Rの対抗馬だった。だが、勝負の仕方が違った

当時の空気で言えば、GTOは間違いなくGT-Rの対抗馬です。
ただ、比較するとすぐ分かるのが、両者は似て非なるものだったということです。

GT-Rは、速く走ることを最優先に煮詰めた感じが強い。
戦うための合理性がある。
一方でGTOは、もっと**“豪華で重くて強いものを、高性能で成立させてしまえ”**という発想に見える。

雑に言えば、

  • GT-Rは戦闘機
  • GTOは重武装巡洋艦

です。

この違いが面白い。
GT-Rのほうが軽やかで、速さの見せ方もシャープです。
でもGTOには、GT-Rにはない**“力技で成立させたロマン”**がある。

しかもこの力技が、ただの見せかけでは終わっていない。
ちゃんと速い。
ちゃんと強い。
そのうえ、見た目まで堂々としている。
ここがGTOの恐ろしいところです。


この車の魅力は、速さより“圧”にある

GTO TWIN TURBOに乗ると、たぶん最初に感じるのは軽快感ではありません。
圧です。

ボディの厚み。
前に何か大きい機械が詰まっていそうな感じ。
路面に対して車がどっしりと居座る感じ。
全部が「軽快」より「重厚」で説明できる。

これ、スポーツカーとしては欠点にも見えます。
実際、純粋なハンドリングマシンを求める人からすれば不満でしょう。
でもGTOは、その欠点を魅力に変えてしまっている。

なぜか。
重いのに速いからです。
しかも、ただ直線が速いだけでなく、全体の技術の塊として妙に説得力がある。
この説得力が、GTOの価値を支えています。

要するにこの車は、
“研ぎ澄まされた美しさ”で勝負するのではなく、
**“過剰な装備と剛性感で押し切る格好良さ”**で勝負しているんです。


忖度なしで言えば、スポーツカーとしてはかなり大味です

ここははっきり書いておくべきです。
GTOは名車です。
でも、誰が見ても分かる欠点があります。

まず重い。
本当に重い。
この時点で、ライトウェイトスポーツの文法からは外れます。

次に、操作の気持ちよさが繊細ではない。
気持ちよくないわけではありません。
でもその気持ちよさは、ロードスターやNSXやS2000のような“人間の手に近い感じ”ではない。
もっと遠くて、もっと大きくて、もっと機械的です。

さらに、ハイテクを盛り込みすぎた結果として、複雑さそのものが車の重さや濃さに直結している
これは魅力でもあるが、同時に欠点でもあります。
要するに、GTOは
“シンプルに良い車”ではなく、“複雑だからこそ面白いが、その複雑さが重荷にもなる車”
なんです。

ここを理解せずに乗ると、
「なんかデカいし重いし、思ったよりシャープじゃないな」
で終わる可能性もある。


それでも、この車は妙に忘れられない

GTOのすごいところは、こういう欠点があるのに、なぜか記憶に残ることです。

たぶんそれは、この車が普通の正解を選んでいないからです。
軽くする。
削る。
単純化する。
そういうスポーツカーの定石を、かなりの部分で無視している。

その代わりに、

  • ツインターボ
  • 4WD
  • ゴツいボディ
  • 技術の全部盛り
  • 見た目の押し出し

こういう“子どもが考えた最強マシン”みたいな方向へ、かなり真面目に走っている。
この無茶さが、今見ても魅力なんです。

だからGTOは、車としての正解に最短距離で届いた名車ではない。
むしろ、回り道と重量と技術過多の果てに、変な説得力を持ってしまった名車です。


今見ると、90年代の三菱の全部が詰まっている

この車には、当時の三菱の良さも悪さも詰まっています。

良い意味では、本気。
技術を惜しまない。
他社に対して遠慮がない。
やるなら全部載せる。
この姿勢は本当にすごい。

悪い意味では、やりすぎ。
少し不器用。
商品としての整理が甘い。
もっと軽く、もっとシンプルにできたはずなのに、それをやらない。
でも、そこも含めて三菱らしい。

つまりGTOは、
90年代三菱の“過剰な本気”そのものなんです。
だから好きな人には深く刺さるし、嫌いな人にはまったく刺さらない。


総評

三菱 GTO TWIN TURBO(Z16A)'95は、軽快なスポーツカーではなく、頑丈すぎる重武装GTです。
GT-Rの対抗馬として見れば、方向性の違いがはっきりしていて面白い。
GT-Rが速さの合理性で勝負したのに対し、GTOは技術と重量と装備の全部盛りで殴ってくる
その無茶さが、この車の最大の魅力です。

忖度なしで言えば、
重い。
大味。
シンプルなスポーツカーとしての気持ちよさでは不利。
でも、それでもなお、
“こんな車を本気で市販した”という事実そのものが格好いい。

要するにGTOは、
名刀ではなく、鋼鉄の怪物です。
そして、そういう名車が一台くらいあるから、90年代の国産スポーツは面白かったんだと思います。

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