
■ 基本スペック (ノーマル時)
| 項目 | スペック |
| メーカー | ホンダ |
| 駆動方式 | FR |
| エンジン | F20C 直列4気筒 NA |
| 総排気量 | 1,997cc |
| 最高出力 | 250ps / 8,300rpm |
| 最大トルク | 22.2kgf・m / 7,500rpm |
| 全長×全幅×全高 | 4,135×1,750×1,285mm |
| 車両重量 | 1,270kg |
| トランスミッション | 6速MT |
S2000という車自体、かなり特殊です。
2.0L自然吸気で高回転まで回り、FRで、オープンで、しかも6速MT。
今でも十分に変態的ですが、2000年代前半にこれをホンダが市販していたのは、かなり本気だったと言っていいです。
その中でTYPE-Vは、ただの特別色や装備パッケージではありません。
このグレードの要点は、VGS(可変ギアレシオステアリング)を軸に、S2000の応答性を別方向に磨いたことです。
要するに、
「S2000の鋭さは好きだが、その鋭さをもう少し整理して、もう少し狙いやすくしたい」
という発想の車です。
だからTYPE-Vは、普通のAP1と同じようでいて少し違う。
S2000の過激さを消したわけではない。
でも、そのままでもない。
この絶妙な立ち位置が、良くも悪くも通好みです。
良いところ
1. F20Cの存在がやはり圧倒的
この車を語るなら、まずここです。
F20CはS2000の心臓であり、この車の価値のかなり大きな部分を占めています。
低速トルクで押すエンジンではありません。
むしろ逆で、回してこそ本気を見せる高回転型です。
だから街中だけなら「案外普通だな」と思う人もいる。
でも回し始めると空気が変わる。
音、伸び、回転上昇の軽さ、その全部がホンダらしい。
今のターボ車みたいに楽ではないです。
でもそのぶん、ちゃんと自分で回して使う楽しさがあります。
ここはS2000全般に共通する最大の武器です。
2. TYPE-Vは“ただ怖いだけ”で終わらせない工夫がある
普通のAP1型S2000は、良くも悪くもかなり鋭いです。
前後バランスもよく、反応も早い。
でもそのぶん、雑に扱うとヒヤッとさせられることもある。
TYPE-Vはそこに対して、VGSなどを通して操舵に対する車の向きの変わり方を整理しようとした。
この方向性はかなり面白いです。
つまりこの車、
S2000の刺激を消すのではなく、刺激の出方を少しコントロールしやすくした仕様
とも言えます。
それがハマる人には、かなり魅力的です。
3. オープンスポーツとしての完成度が高い
S2000は、屋根が開くことが単なる雰囲気作りで終わっていません。
ちゃんと低く、ちゃんとスポーツカーらしく、ちゃんとオープンである意味がある。
見た目の美しさも強いですし、運転席に座った時の特別感も濃い。
最近のオープンカーはGT寄りだったり、見た目重視だったりすることもあります。
でもS2000は、ちゃんと走るためのオープンスポーツです。
ここはかなり大きいです。
4. TYPE-VはS2000の中でも“変化球の面白さ”がある
普通のS2000や後期型の話はよく出ますが、TYPE-Vはそこに少しズレた面白さがあります。
王道のS2000好きから見ると少し異端。
でもだからこそ、**「分かる人には分かる仕様」**として見える。
派手に神格化されるグレードではないかもしれません。
でも、こういうちょっと通な立ち位置は、長く見ると味が出ます。
ダメなところ
1. 低速ではやはり細い
ここは美化しません。
S2000は名車ですが、どの回転域でも楽しい万能エンジン車ではありません。
F20Cは高回転で本気を出すぶん、下のトルク感だけで見ると今の感覚ではかなりあっさりしています。
だから、見た目の派手さや伝説だけで期待値を上げると、街中では「思ったより普通だな」となりやすい。
この車は、
回して味わう車です。
そこを面倒と思う人には向きません。
2. TYPE-Vは“人工感”が気になる人もいる
TYPE-V最大の賛否ポイントはここです。
VGSによる味付けは、人によってはプラスです。
でも、S2000に求めるものが**“生っぽい手応え”“機械のダイレクト感”**である人にとっては、少し整理されすぎて見えることもある。
要するに、
標準車の荒々しさを魅力と見る人には、TYPE-Vは少しスマートすぎる。
ここはかなり好みが割れます。
3. 快適性や実用性はかなり薄い
これはもう仕方ありません。
2シーター、低い着座位置、オープン、荷物も大して積めない。
つまり、生活の相棒としてはかなり不便です。
しかもS2000は“オープンだから優雅に流す車”でもありません。
意外とスポーツ寄りで、気も使う。
だから、
便利な趣味車ではなく、ちゃんと不便な趣味車です。
ここを甘く見るとしんどいです。
4. 神格化と現実のギャップがある
S2000は今やかなり有名な名車です。
でも、持ち上げられ方が強すぎる面もあります。
確かに良い車です。
エンジンもすごい。
見た目も美しい。
でも、古いです。気難しいです。快適でもないです。
しかもTYPE-Vは、その中でもさらに好みが分かれる。
つまり、
“誰が乗っても即絶賛”みたいな車ではないです。
ここは冷静に見たほうがいいです。
この車の一番痛いところ
S2000 2.0 TYPE-V(AP1)の一番痛いところは、**“普通のS2000ほど分かりやすくなく、それでいて普通のS2000より気楽でもないこと”**です。
これはかなり皮肉です。
TYPE-Vは中途半端と言いたいわけではありません。
むしろ、中身はかなり真面目です。
でも評価が難しい。
- 標準S2000の過激さが好きな人には少し違う
- 気楽なオープンスポーツを求める人にも少し違う
- GT的な快適さを求めても違う
要するにこの車は、
**“S2000の中でもちょっと玄人向け”**なんです。
そこが魅力であり、同時に弱点です。
標準S2000や後期型との比較
標準のAP1との比較
標準のAP1は、もっと生っぽく、もっと鋭く、もっと“危うい楽しさ”が前に出ています。
それに対してTYPE-Vは、そこに少し整理整頓を入れた感じです。
だから、
標準AP1が荒々しい名作なら、TYPE-Vは少し理性的な変化球
です。
どちらが上かではなく、好みがかなり分かれます。
AP2との比較
後のAP2は排気量アップで、より中低速の扱いやすさが増します。
そのぶん、AP1のF20C的な狂気はやや薄まる。
この点でAP1 TYPE-Vは、F20Cの鋭さを残しつつ、操舵側で味付けを変えた仕様として独自の立場があります。
他のホンダスポーツとの比較
NSXやタイプR系が“削って磨いて速くするホンダ”だとすれば、S2000 TYPE-Vは**“感覚と操作の質で勝負するホンダ”**です。
ターボもない。4WDもない。
でも、運転していて濃い。
このあたりは、かなりホンダらしい変態性があります。
ホンダというメーカーから見たTYPE-V
この車は本当にホンダらしいです。
しかも、効率や売れ筋を優先するメーカーとしてではなく、技術屋が「こっちのほうが面白い」と考えてしまった時のホンダです。
普通なら、人気のスポーツカーにこういう変化球グレードはあまり入れません。
でもホンダはやる。
しかも単なる飾りではなく、ちゃんと中身で差を付けてくる。
この嫌らしい真面目さが実にホンダです。
要するにTYPE-Vは、
“S2000をもっと分かる人向けにしたホンダの実験作”
みたいな一台です。
だから今見ても面白い。
総評
ホンダ S2000 2.0 TYPE-V(AP1)'03は、標準S2000ほど分かりやすく神格化されていないのに、かなり通な面白さを持った高回転FRオープンです。
F20Cの魅力は本物。
見た目も美しい。
オープンスポーツとしての特別感も強い。
そのうえでTYPE-Vならではの味付けがある。
忖度なしで言えば、
低速では細いです。
快適性も薄いです。
評価も人を選びます。
標準車のほうが好きという人も当然います。
でも、それでもこの車には、
“普通のS2000では物足りない人が気になる濃さ”
がある。
要するにこの車は、
**“誰にでも薦めるS2000”ではなく、“刺さる人には深く刺さるS2000”**です。
TYPE-Vはそういう一台です。
