ホンダ

ホンダ シビック タイプR(FK2)'15は問題作か実力派か――ターボ化で変わったタイプRの本音

■ 基本スペック (ノーマル時)

項目スペック
メーカーホンダ
駆動方式FF
エンジンK20C VTEC TURBO 直列4気筒
総排気量1,996cc
最高出力310ps / 6,500rpm
最大トルク41.0kgf・m / 2,500rpm
全長×全幅×全高4,390×1,880×1,460mm
車両重量1,380kg
トランスミッション6速MT

FK2は、タイプRの歴史の中でもかなり大きな転換点です。
なぜなら、自然吸気高回転VTECの系譜から、明確にターボ時代へ踏み込んだ最初の本格派タイプRだからです。

それまでのタイプRは、軽さ、高回転、シャープなレスポンス、削ぎ落とした純度で勝負するイメージが強かった。
ところがFK2は違う。
2.0L直噴VTECターボで、下から強い。中間も太い。高速域も速い。
つまり、“回して速い”から“踏めば速い”方向へかなり寄ったタイプRです。

だからこの車は、
伝統の延長というより、タイプRの価値観を一度更新した車
と見たほうがしっくりきます。


良いところ

1. とにかく速い。しかも分かりやすく速い

FK2の最大の強みはここです。
昔のタイプRみたいに、おいしい回転域をきっちり使って初めて本気、という感じではありません。
踏めばちゃんと前に出る。しかもかなり強く。

この分かりやすさは大きいです。
DC2やEK9のような“分かる人向けの高回転型”に比べて、FK2はもっと広い人に速さが伝わりやすい。
言ってしまえば、タイプRが少し大衆に分かりやすくなったとも言えます。

2. FFとしての実戦力が高い

FK2はパワーだけの乱暴なFFではありません。
強いエンジンを載せつつ、ちゃんと曲がるようにまとめている。
ここはやはりホンダです。

FFでこの出力になると、雑な車ならすぐ破綻します。
でもFK2は、速さだけでなく、速く走らせるための足とボディも用意している
だから“ただのハイパワーFF”で終わっていない。
ここはかなり評価できます。

3. K20C1のキャラクターが時代に合っている

昔のタイプRファンからすると、ターボというだけで拒否反応が出るのも分かります。
でも、冷静に見るとFK2のターボ化は理にかなっています。
今の時代に合わせた速さ、扱いやすさ、実用域での厚み。
そういう意味では、タイプRを新時代に生き残らせるための正しい進化でもありました。

4. 見た目のインパクトはかなり強い

FK2は大人しくありません。
はっきり言って、かなりイキっています。
ただ、その過剰さも含めてFK2の個性です。

昔のタイプRのような“静かな硬派さ”とは違う。
でも、見るからにただ者ではない感じはちゃんとある。
この押しの強さが好きな人には、かなり刺さります。


ダメなところ

1. 昔のタイプRらしさはかなり薄い

ここが最大の賛否ポイントです。
EK9、DC2、DC5、そうしたタイプRが好きな人ほど、FK2には違和感を持ちやすい。
なぜなら、軽さ・高回転・削ぎ落とし感より、パワーと速さの分かりやすさが前に出ているからです。

要するに、
“速いタイプR”ではあるが、“昔ながらのタイプR”とは別物感が強い。
ここは避けて通れません。

2. 見た目がやりすぎと感じる人も多い

FK2のデザインはかなり好みが分かれます。
戦闘的と言えば聞こえはいいですが、見方によっては少し落ち着きがなく、過剰装飾気味です。

EK9やDC2のような、あの“分かる人には分かる硬派さ”とは真逆に近い。
だから、昔のホンダスポーツの美学が好きな人ほど、FK2の見た目は少しうるさく見えやすいです。

3. 軽快感では古いタイプRに負ける

FK2は速いです。
でも、軽いかと言われると別です。
やはり現代的なサイズと装備を背負っている分、EK9やDC2みたいな“ひらっとした軽快感”では不利です。

つまり、
絶対的な速さは上がったが、操作の純度や軽さの気持ちよさは少し薄れた。
ここはかなり大きいです。

4. タイプRとしては少し分かりやすすぎる

これは褒め言葉でもあり、欠点でもあります。
FK2は速さが分かりやすい。
そのぶん、昔のタイプRにあった**“分かる人だけがニヤつく職人感”**は少し減りました。

言い換えれば、
昔のタイプRが名刀なら、FK2は高性能兵器寄りです。
この方向転換を受け入れられるかどうかで、評価はかなり変わります。


この車の一番痛いところ

FK2の一番痛いところは、“出来が悪いから叩かれるのではなく、変わりすぎたから叩かれる”ことです。

実際、車としての出来はかなり高いです。
速いし、実戦力もあるし、エンジンも優秀。
でも、タイプRという名前に人が求めていたものと少しズレた。
そこがFK2の苦しさです。

つまりこの車は、
性能ではかなり優秀なのに、伝統との距離感で損をしている車
なんです。
ここが一番もったいない。


EK9・DC2・DC5との比較

EK9との比較

EK9は軽くて、回して、元気に走るタイプRでした。
FK2はその真逆です。
EK9が軽快な名作なら、FK2は重武装の高速型です。

DC2との比較

DC2はFFの名刀です。
軽く、鋭く、回して楽しい。
FK2はそこに対して、速さと安定感を大きく増した代わりに、生っぽさを少し失った車です。

DC5との比較

DC5は“現代化されたNAタイプR”という感じでした。
FK2はさらにそこから踏み込んで、完全にターボ時代のタイプRへ移行した存在です。
この意味で、DC5よりもさらに賛否が大きいです。


ホンダというメーカーから見たFK2

この車はかなりホンダらしいです。
ただし、昔ながらの“高回転NAに執念を燃やすホンダ”ではなく、時代の変化を受け入れつつ、それでもタイプRを本気で速くしようとしたホンダです。

ホンダはこの車で、
「伝統を守ること」より「今の時代で勝てるタイプRを作ること」
を選んだ。
だからFK2は、好き嫌いはあっても無視できない存在です。


総評

ホンダ シビック タイプR(FK2)'15は、昔ながらのタイプR信仰が強い人ほど評価が割れやすい、でも車としてはかなり優秀なハイパフォーマンスFFです。
速い。太い。安定している。
そしてちゃんとタイプRとしての本気もある。
その一方で、軽さや高回転NAの純度を愛する人には、どうしても“別物”に見える。

忖度なしで言えば、
昔のタイプRらしさは薄いです。
見た目もやりすぎです。
軽快感でも古典的なRには負けます。
でも、それでもなお、
“現代の速いタイプR”として見ればかなり強い

要するにこの車は、
**“伝統型タイプRの完成形”ではなく、“新時代型タイプRの問題作であり実力派”**です。
FK2はそういう一台です。

-ホンダ