ホンダ

ホンダ S660 CONCEPT EDITION(JW5)'15は名車か優等生か――現代軽スポーツの本音評価

■ 基本スペック (ノーマル時)

項目スペック
メーカーホンダ
駆動方式MR
エンジンS07A 直列3気筒ターボ
総排気量659cc
最高出力64ps / 6,000rpm
最大トルク11.0kgf・m / 2,600rpm
全長×全幅×全高3,395×1,475×1,180mm
車両重量830kg
トランスミッション6速MT / CVT

S660は、ホンダが「今の時代にもう一度、軽スポーツを本気でやるならどうなるか」を形にした車です。
軽自動車で、2シーターで、MRで、オープン。
この時点でかなり変わっています。

しかも、ただの話題作りではありません。
見た目だけスポーティな軽ではなく、ちゃんと運転の楽しさを中心に設計された軽スポーツです。
だからS660は、N-BOXのついでに作ったような車ではない。
むしろ、採算や効率を考えると「よく出したな」と思うタイプの車です。

その中でもCONCEPT EDITIONは、名前の通り**“ショーモデル的な華やかさ”を少し強めた特別仕様**としての意味合いが強い。
性能そのものが別次元というより、S660という車の世界観を象徴する版と見たほうがしっくりきます。


良いところ

1. 今の時代にこんな車を出したこと自体が偉い

まずここです。
軽自動車は本来、実用・燃費・維持費の世界です。
そこに対してS660は、あえて不便な2シーター、しかもMRオープンで出してきた。
これはかなり異常です。

要するにこの車、
合理性ではなく趣味性で生まれた軽なんです。
この時点で、もう好きな人にはかなり刺さります。

最近の車は優秀でも、効率の理屈が前に出すぎることがあります。
でもS660は、そういう空気にちゃんと逆らっている。
ここがまず大きな価値です。

2. 軽スポーツとしての見た目の完成度が高い

S660は見た目がいいです。
低い。小さい。幅広く見える。
軽自動車なのに、ちゃんと“スポーツカーらしい緊張感”があります。

ビートは可愛さが強く、どこか愛嬌のあるデザインでした。
一方でS660は、もっと現代的でシャープです。
軽なのに安っぽく見えにくい。ここはかなり強い。

しかもCONCEPT EDITIONになると、通常モデルより少し特別感の演出が濃くなるので、
「ただのS660ではない感じ」がきちんと出ています。
この“限定感の見せ方”は上手いです。

3. 軽規格の中では、かなり真面目に走りへ振っている

64馬力の壁がある以上、絶対的な速さでは勝負できません。
でもS660の良さはそこではありません。
着座位置の低さ、MRらしいレイアウト、ボディの雰囲気、操作した時の一体感
こういう部分で“走っている気分”をちゃんと濃くしてくれる。

雑にアクセルを踏んで速さを楽しむ車ではないです。
でも、コーナーを抜ける時の感覚や、車との距離感の近さはしっかりある。
ここはただの軽オープンでは終わっていません。

4. ビートとは違う方向で、現代的に洗練されている

ビートは高回転NAと軽さで遊ばせる車でした。
S660はそれに比べると、もっと現代的で、もっと理性的です。
ターボ化され、ボディ剛性も上がり、見た目も洗練されている。
つまり、“昔の軽スポーツの楽しさ”を現代の基準でやり直した車なんです。

この点は素直に評価できます。
単なる懐古趣味ではなく、ちゃんと新しい時代の軽スポーツにしている。
そこはホンダらしいです。


ダメなところ

1. 速さの期待値を上げると普通にズレる

S660最大の誤解されやすい点はここです。
見た目はかなり本気です。
着座位置も低い。雰囲気もある。
でも中身は軽規格なので、絶対的な速さには限界があります

ここを理解せずに乗ると、
「思ったより速くないな」
となりやすい。

当然です。
軽自動車ですから。
S660は速さよりも、雰囲気と操作感と満足感を楽しむ車です。
ここを勘違いすると評価を誤ります。

2. 実用性はかなり薄い

これはもう容赦なく言っていいです。
荷物は積めない。室内も広くない。2人しか乗れない。屋根も気軽とは言いにくい。
つまり、生活の道具として見たらかなり苦しいです。

しかも軽だから何でも便利だろう、という期待も裏切ります。
S660は軽の中でもかなり趣味車寄りです。
要するに、
「軽だから気軽」ではなく「軽なのに面倒」
という側面がちゃんとある。

ここは大きな欠点です。

3. ビートほどの“バカっぽさ”は薄い

これは好みが分かれるところですが、辛口で言えばここです。
ビートは、軽でMRでオープンで高回転NAという、かなり無邪気な変態車でした。
一方でS660は、もっとよく出来ています。もっと洗練されています。
でもそのぶん、少し真面目すぎるとも言えます。

つまり、
ビートが“無邪気な名作”なら、
S660は“ちゃんと考えて作った優等生”です。

この差を進化と取るか、毒が薄れたと取るかで評価が分かれます。
私はここはかなり賛否ポイントだと思います。

4. CONCEPT EDITIONは特別感が先に立ちやすい

CONCEPT EDITIONは魅力的です。
ただし、性能面で完全に別物という期待を持つとズレます。
この仕様の価値は、世界観や演出や初期特別仕様としての意味にあります。

つまり、走りの本質が劇的に変わるというより、
**S660という車を“少し特別に味わうための仕様”**です。
そこを理解できる人には刺さる。
でも、スペックだけで特別感を測る人には弱く映る可能性があります。


この車の一番痛いところ

S660 CONCEPT EDITIONの一番痛いところは、見た目と存在感が強いぶん、性能への期待を上げすぎてしまうことです。

低い。カッコいい。MR。オープン。
言葉だけ並べると、かなり本格派です。
でも現実には、軽自動車の制約がしっかりある。
だから、見た目のテンションで乗ると「あれ?」となる人が出ます。

逆に、最初から
“速さではなく、軽スポーツという文化を味わう車”
として見れば、評価はかなり上がります。

つまりこの車は、
スペックで勝つ車ではなく、存在そのもので価値を持つ車です。
そこが魅力であり、同時に弱点でもあります。


ビートや他の軽スポーツとの比較

ビートとの比較

これはどうしても避けられません。
ビートはホンダ軽スポーツの伝説です。
そしてS660は、その精神的後継として見られやすい。

ただし両者はかなり違います。
ビートは高回転NAの快活さと、良い意味での軽薄さが魅力でした。
S660はもっと低く、もっと硬く、もっと現代的です。

雑に言えば、
ビートは陽気な名車、S660は真面目な名車候補
です。
どちらが好きかは、かなり人によります。

コペンとの比較

コペンは、軽オープンとしての実用性や親しみやすさがまだ残っています。
一方でS660は、もっとスポーツ寄りです。
つまり、
コペンが“軽オープンを楽しむ車”なら、S660は“軽スポーツを味わう車”
です。

そのぶんS660のほうが不便です。
でも、その不便さ込みの濃さがあります。

カプチーノとの比較

カプチーノは古典的なFR軽スポーツで、軽さとシンプルさが強みです。
S660は対して、もっと現代的で、もっと凝った作りです。
ただし、洗練されたぶん、昔の軽スポーツ特有の“荒っぽい面白さ”は薄い。
ここも好みが分かれるところでしょう。


ホンダというメーカーから見たS660

この車はかなりホンダらしいです。
ただし、普段の実用車ホンダではなく、技術屋が趣味に寄った時のホンダです。

普通なら、軽でここまでやりません。
売れ筋でもない。効率も悪い。
でもやった。
しかも中途半端ではなく、ちゃんとスポーツカーらしい空気まで持たせた。

ここがすごい。
S660は、ホンダが
「うちはまだこういう無駄を作れる」
と示した車です。
この価値はかなり大きいです。


総評

ホンダ S660 CONCEPT EDITION(JW5)'15は、現代の軽スポーツとしてかなり完成度の高い、でもかなり割り切りの強い趣味車です。
見た目は良い。
世界観もある。
MR軽オープンという時点でかなり面白い。
しかもCONCEPT EDITIONは、その中でも特別感を濃く味わえる。

忖度なしで言えば、
速さには限界があります。
実用性も薄いです。
ビートほどの無邪気な毒も少し弱い。
でも、それでもなお、
今の時代にこういう車が存在したこと自体が価値です。

要するにこの車は、
**“速さで勝つ軽”ではなく、“文化として残したい軽スポーツ”**です。
そういう目線で見ると、S660 CONCEPT EDITIONはかなり味わい深い一台です。

-ホンダ