ホンダ

ホンダ シビック タイプR(FL5)'22は完成形か優等生か――現代タイプRの本音評価

■ 基本スペック (ノーマル時)

項目スペック
メーカーホンダ
駆動方式FF
エンジンK20C VTEC TURBO 直列4気筒
総排気量1,996cc
最高出力330ps / 6,500rpm
最大トルク43.0kgf・m / 2,600-4,000rpm
全長×全幅×全高4,595×1,890×1,405mm
車両重量1,430kg
トランスミッション6速MT

FL5は、FK8で確立した“高性能FFとしてのタイプR”をさらに磨き込んだモデルです。
昔のタイプRは、軽さ、高回転、削ぎ落とし感、そして少し危ういくらいの生っぽさが魅力でした。
一方でFL5は、そこからさらに一段進んで、「誰が見ても速いし、実際にかなり完成されている」タイプRになっています。

つまりこの車は、
タイプRを昔ながらの職人道具として残すのではなく、世界基準の本気FFスポーツとして仕上げた車
です。

だからFL5は、歴代Rの延長線上にありながら、価値観はかなり現代的です。
軽量NAでニヤつかせるというより、高出力ターボと高剛性ボディで、速さと精度をきっちり出してくる
この方向転換を受け入れられるかどうかで、評価が少し分かれます。


良いところ

1. とにかく完成度が高い

FL5の最大の美点はここです。
速いです。安定しています。曲がります。ブレーキも強い。
しかも、その全部がかなり高い次元でまとまっています。

最近の高性能車には、パワーだけが先に立つものもあります。
でもFL5は違う。
エンジン、シャシー、足、電子制御、その全部をきちんと噛み合わせて速くしている
だからただのハイパワーFFには見えません。

雑に言えば、
**“失敗しにくい速い車”**です。
ここはかなり大きい。

2. K20C1ターボが分かりやすく強い

昔のタイプRみたいに、回してやっと本気、という感じではありません。
FL5はもっと現代的です。
下からトルクがあり、中間も厚く、そのまま上まできれいに伸びる。
要するに、踏めばちゃんと速い

この分かりやすさは大きな武器です。
EK9やDC2のような高回転NAの神経質な楽しさとは違いますが、
実戦での速さ、扱いやすさ、再加速の強さで見ると、FL5はかなり頼もしいです。

3. 見た目がようやく“大人になった”

FL5はここも評価できます。
FK2やFK8は、速そうではありましたが、少しやりすぎでした。
一方でFL5は、ちゃんと速そうなのに、前より落ち着いて見える。
つまり、ようやく“速い車の品”を持ったタイプRになった感じがあります。

派手さはある。
でも、無駄にうるさくない。
ここはかなり大きな進歩です。

4. 歴代タイプRの中でも“日常との両立”がしやすい

もちろん趣味車ではあります。
でもFL5は、昔のRに比べると圧倒的に現代車です。
ボディ剛性、乗りやすさ、快適性、実用性、全部が昔より高い。
だから、速いのに生活から遠すぎない

この点は、古いタイプRにはない強みです。
昔のRは気合いが要る車でした。
FL5はその気になればちゃんと日常もこなせる。
この万能感はかなり現代的です。


ダメなところ

1. 優秀すぎて、少しつまらない

FL5最大の欠点は、ある意味ここです。
出来が良すぎる。

昔のタイプRには、ちょっと危なっかしいとか、少し荒いとか、だからこそ人間が介入する余地がありました。
でもFL5は、かなりきれいにまとまっています。
速さも安定感も高い。
その代わり、“乗り手が苦労して手懐ける感じ”は薄い

つまり、
名車っぽい苦味が少し薄い
ここを物足りないと感じる人はいます。

2. もう軽快なタイプRではない

これははっきり言えます。
FL5は速いですが、軽いタイプRではありません
やはりボディは大きいし、現代車としての重さもある。
EK9やDC2のような“ひらっとした感触”を期待すると、当然違います。

要するに、
昔のRが名刀なら、FL5は高性能精密兵器です。
ここは好みが分かれます。

3. 値段も存在感も、もう気軽ではない

タイプRは昔から特別ですが、FL5はかなり現代のプレミアム寄りです。
価格も安くない。
見た目も、昔のような“分かる人だけ分かればいい”感じではない。
つまり、昔のホンダスポーツみたいな気軽さはかなり薄いです。

ここは人によっては大きなマイナスでしょう。
“庶民の本気ホンダ”という空気は、昔よりだいぶ減っています。

4. 昔のタイプR信者ほど素直に褒めにくい

これは避けられません。
EK9、DC2、DC5あたりを強く好きな人ほど、FL5は少し複雑です。
なぜなら、FL5は明らかに速い。
でも、昔のタイプRが持っていた削ぎ落とし感や高回転NAの純度とは別物だからです。

つまり、
性能では勝っていても、ロマンの方向が違う
ここがFL5の評価を少し難しくしています。


この車の一番痛いところ

FL5の一番痛いところは、**“ほぼ欠点の少ない優秀車だからこそ、語る時に熱狂より納得が先に来ること”**です。

速い。
完成度が高い。
見た目もよくなった。
使い勝手も悪くない。
これだけ揃うと、たしかにすごい。
でもそのぶん、昔のタイプRみたいな危うさや毒が薄れる

つまりこの車は、
**“感情を乱暴に揺さぶる車”というより、“理屈でも感覚でもちゃんと優秀な車”**なんです。
そこが強みであり、同時に少し物足りないところでもあります。


FK2・FK8・EK9/DC2との比較

FK2との比較

FK2は問題作でした。
速いけれど、見た目も性格もかなり尖っていた。
FL5はそこからかなり洗練されています。
雑に言えば、
FK2が荒々しい革命児なら、FL5は完成された本命です。

FK8との比較

FK8で高性能FFとしての方向性はかなり確立されました。
FL5はその熟成版です。
見た目も落ち着き、全体の質感も上がり、完成度はさらに高い。
要するに、
FK8が派手な実力派、FL5が洗練された完成形寄りです。

EK9・DC2との比較

ここは価値観が違います。
EK9やDC2は、軽くて、薄くて、回して、苦労して速くするRでした。
FL5は、もっと太く、もっと大きく、もっと現代的に速い。
だから単純比較はできません。

雑に言えば、

  • EK9/DC2は純度の高い古典
  • FL5は現代の高性能完成形

です。
どちらが好きかは、もう思想の好みです。


ホンダというメーカーから見たFL5

この車はかなりホンダらしいです。
ただし、昔の“高回転NAに執念を燃やすホンダ”ではありません。
今の時代でちゃんと勝てる、世界で通用する高性能FFを本気で作るホンダです。

つまりFL5は、
「タイプRを懐古趣味で終わらせず、現代でも本物にし続ける」というホンダの答え
なんだと思います。
そこは素直に強いです。


総評

ホンダ シビック タイプR(FL5)'22は、歴代タイプRの中でもかなり完成度が高く、かなり優秀で、かなり現代的な一台です。
速い。
安定している。
見た目も洗練された。
そしてちゃんとタイプRとして本気です。

忖度なしで言えば、
昔のRみたいな軽さや危うさは薄いです。
優秀すぎて、少し面白みに欠ける部分もあります。
でも、それでもなお、
“今のタイプRはこれが正解だろう”と言えるだけの説得力がある。

要するにこの車は、
**“昔の名車の再現”ではなく、“現代で最も完成度の高いタイプRのひとつ”**です。
FL5はそういう一台です。

-ホンダ