
■ 基本スペック (ノーマル時)
| 項目 | スペック |
| メーカー | ホンダ |
| 駆動方式 | FF |
| エンジン | K20A 直列4気筒 NA |
| 総排気量 | 1,998cc |
| 最高出力 | 220ps / 8,000rpm |
| 最大トルク | 21.0kgf・m / 7,000rpm |
| 全長×全幅×全高 | 4,385×1,725×1,385mm |
| 車両重量 | 1,180kg |
| トランスミッション | 6速MT |
DC5型インテグラ タイプRは、DC2の後継として登場した時点で、かなり厳しい目で見られる運命でした。
DC2は軽い、尖っている、荒い、でもとんでもなく気持ちいい。そんな“FFの伝説”みたいな車です。
そこからDC5になると、ボディは一回り現代的になり、剛性感も上がり、エンジンはK20Aへ進化し、6速MT化もされる。
つまり、より速く、より洗練され、より現代的なFFスポーツに進化したわけです。
ただ、この“進化”がそのまま“歓迎”されたわけではない。
DC2のような生っぽさや軽さを愛する人からすると、DC5はどうしても少し優等生で、少し大人びて、少し丸い。
ここが今でも賛否の分かれ目になっています。
でも逆に言えば、DC5は
タイプRを古典的な職人道具から、もう少し広い世界で通用するスポーツクーペへ引き上げた車
でもあります。
そこをどう見るかで評価が決まる車です。
良いところ
1. K20Aがかなり完成されている
DC5の最大の武器は、やはりK20Aです。
DC2のB18Cも名機ですが、K20Aはそれとは少し性格が違います。
回して気持ちいいのはもちろん、そのうえで中域の厚みや使いやすさも増している。
つまり、ただの“高回転だけの気持ちよさ”ではなく、実用域から上まできれいにつながるんです。
ここはDC5の大きな美点です。
DC2ほど「高回転域だけがご褒美」という極端さではなく、もう少し広い範囲で楽しい。
そのせいで“ドラマ性が減った”と思う人もいますが、車としての出来はかなり高いです。
2. 6速MTとの相性が良い
DC5は6速MTです。
これがK20Aとかなりよく噛み合っています。
回転を美味しいところに保ちやすく、テンポよく繋げられる。
ホンダらしいカチッとした操作感もあり、シフト操作そのものが気持ちいい。
タイプRは、速さだけでなく操作の手応えが大事です。
その意味でDC5は、“運転していてちゃんと楽しい”をかなり高い水準で維持している。
ここは強いです。
3. DC2より落ち着いていて、速さを出しやすい
DC2は濃いです。軽いです。反応も鋭いです。
ただ、そのぶん少しナーバスで、乗り手の雑さも出やすい。
一方でDC5は、もう少し懐が深い。
ボディ剛性、足まわり、全体の安定感が増していて、速さを出す時の安心感があります。
つまり、
**DC2が“尖った名車”なら、DC5は“速く走らせやすい名車寄り”**です。
ここを退屈と見るか、完成度と見るかで評価が変わります。
4. 見た目が意外とまとまっている
DC5は、DC2ほどいかにも90年代ホンダの硬派さはありません。
でも、クーペとして見ると案外まとまっています。
やりすぎず、でも普通すぎず、ちゃんとタイプRらしい雰囲気がある。
最近の車ほど大げさでもなく、DC2ほど古典味も強すぎない。
この2000年代前半らしい、少しシャープで少し軽快な空気は結構魅力です。
ダメなところ
1. DC2の後継としては、どうしても薄味に見える
これは避けて通れません。
DC5そのものが悪いわけではなく、比較対象が悪すぎるんです。
DC2があまりにも伝説すぎて、何をしても「DC2のほうが生っぽい」「DC2のほうが軽い」「DC2のほうがRらしい」と言われやすい。
しかもそれは半分正しい。
DC5は実際、DC2より洗練されています。
その洗練が、タイプRに求められる“狂気”を少し薄めて見せる。
ここはかなり損しています。
2. 重くなったぶん、初代ほどの切れ味は薄い
DC5はDC2よりも現代化されています。
その代償として、どうしても軽さ一発の切れ味では不利です。
もちろん十分に速いし、ハンドリングもいい。
でも「わっ、軽い」「この反応やばい」というDC2的な生々しさは少し減っている。
要するに、
良くなった部分と引き換えに、失った魅力もあるんです。
これがDC5の難しいところです。
3. タイプRとしては少し優等生すぎる
DC5は出来がいいです。
でも、その“出来の良さ”が逆にタイプRとしては少し物足りなく感じられることがあります。
乗りやすい。
速い。
安定している。
エンジンも気持ちいい。
全部正しいです。
でも、心を乱暴に揺さぶるようなクセの濃さは少し薄い。
ここがDC5最大の賛否ポイントでしょう。
4. 今は個体差と相場が無視できない
DC5ももう十分に古いです。
しかもタイプRですから、過去にかなり走らされていた個体も多い。
改造歴、足まわり、エンジンの状態、ミッション、ボディの疲れ。
こうした部分で当たり外れが出やすい。
さらに人気もあるので、「ちょっと古いFFクーペ」として気軽に買うには重い存在です。
この車の一番痛いところ
DC5の一番痛いところは、**“かなり良い車なのに、伝説の後継であるせいで正当に評価されにくいこと”**です。
実際、K20Aは良い。
6速MTも良い。
シャシーも真面目。
速さもある。
でも、DC2と並べた瞬間に「丸くなった」と言われやすい。
この不運はかなり大きいです。
つまりこの車は、
単体で見れば高完成度、系譜で見ると損をする車
なんです。
そこがDC5の一番もったいないところです。
DC2や他のタイプRとの比較
DC2との比較
これはどうしても中心になります。
DC2は軽くて、尖っていて、荒くて、でもとんでもなく濃い。
DC5はそれに比べると、もっと安定していて、もっと洗練されていて、もっと広い場面で速い。
雑に言えば、
- DC2は名刀
- DC5は完成度の高い実戦剣
です。
どちらが好きかはかなり好みですが、私は車としての出来の総合力はDC5もかなり高いと思います。
EK9との比較
EK9はもっと軽快で、もっとやんちゃです。
DC5はもう少し大人で、もう少し本格派。
EK9が“元気なFFハッチの傑作”なら、
DC5は**“成熟したFFクーペのタイプR”**という感じです。
現代のタイプRとの比較
現代のタイプRは速いです。
性能の絶対値で見れば当然かなり上です。
でもDC5には、まだ車がそこまで大きくなりすぎていない時代の良さがあります。
軽さ、サイズ感、アナログ感。
このへんはやはり魅力です。
ホンダというメーカーから見たDC5
DC5はかなりホンダらしいです。
ただし、DC2時代の“荒々しい職人感”ではなく、より洗練された高性能FFを作る方向のホンダらしさです。
高回転NA。
6速MT。
FFの旋回性能への執念。
量販車ベースなのに、ちゃんとタイプRとして別物に仕立てる真面目さ。
このへんはやはりホンダです。
要するにDC5は、
「タイプRを次の時代へ持っていくならこうなる」というホンダの答え
だったんだと思います。
総評
ホンダ インテグラ タイプR(DC5)'04は、DC2の影に隠れがちですが、実力で見ればかなり完成度の高いタイプRです。
K20Aは良い。
6速MTも良い。
安定感も高い。
そしてちゃんとタイプRらしい濃さも残している。
忖度なしで言えば、
DC2ほどの狂気は薄いです。
軽さの切れ味も少し後退しています。
タイプRとしては優等生すぎる面もあります。
でも、その代わり速さと使いやすさと完成度をかなり高いところで両立している。
要するにこの車は、
**“前任が偉大すぎたせいで損をしている、かなり優秀なタイプR”**です。
DC5はそういう一台です。
