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日産 NISSAN GT-R Premium edition T-spec(R35)'24を忖度なしで批評――最後まで強さを手放さなかったGT-R

■ 基本スペック (ノーマル時)

項目スペック
メーカー日産
駆動方式4WD (独立型トランスアクスル4WD)
エンジンVR38DETT V型6気筒 ツインターボ
総排気量3,799cc
最高出力570ps / 6,800rpm
最大トルク65.0kgf・m / 3,300-5,800rpm
全長×全幅×全高4,710×1,895×1,370mm
車両重量1,760kg
トランスミッション6速DCT

日産 NISSAN GT-R Premium edition T-spec(R35)'24は、R35 GT-Rの最終期を象徴する一台として見ると分かりやすい。
R35という車は、登場した瞬間からずっと“怪物”だった。スーパーカー級の加速性能、4WDによる異常なトラクション、そして年々磨き上げられてきた戦闘力。その一方で、軽快なスポーツカーの美学や、繊細なスーパーカーの色気とは少し違う場所に立ってきた車でもある。

Premium edition T-specは、そのR35の晩年らしいグレードだ。
速さは十分すぎるほどある。装備や雰囲気にも特別感がある。だが、相変わらず軽い車ではないし、繊細な車でもない。
むしろこの車は、最後まで“重武装の高性能GT”として生き切ったR35の集大成に近い。

要するにこの車は、
“最後のGT-R”としてよく出来ている。だが、最後までスポーツカーというより強すぎるマッスルGTの匂いを残した車
である。


この車はどんな存在なのか

R35 GT-Rは、R32からR34までのスカイラインGT-Rとは完全に別物だ。
かつてのGT-Rが、市販車をベースに戦闘力を高めた怪物だったのに対し、R35は最初からGT-Rという高性能専用機として存在している。

そのR35の中で、T-specは日産公式でも専用のカーボンセラミックブレーキやカーボン製リヤウイングなどを組み合わせた特別仕様として位置づけられてきた。さらに2025年モデルでは、Premium edition T-specが設定され、R35終盤の象徴的グレードのひとつになっている。

つまりT-specは、単なる色替えや記念バッジ仕様ではない。
R35が積み上げてきた速さと存在感に、最終期らしい記号性と上級感を重ねた仕様である。


良いところ

1. 最後まで速さの説得力が落ちていない

R35はデビューから長い時間が経っても、最後まで“速い車”としての説得力を失わなかった。
この点は素直にすごい。
日産公式のR35ヒストリーでも、2017年モデルで最高出力570PS化、快適性改善、2020年モデルで加速レスポンス向上、さらにT-specの追加など、最終期まで改良が続けられていたことが分かる。

実際のキャラクターとしても、R35は最後まで「踏めばすぐ速い」。
高回転まできれいに回して楽しむ車というより、中間からでも高負荷域からでも容赦なく前へ出る
この分かりやすい速さは、最後の最後までGT-Rの看板にふさわしい。

2. T-specは“最後の特別感”が強い

R35には長い歴史の中で多くの仕様があった。
その中でT-specは、最終期のGT-Rを象徴する記号としてかなり上手い。
専用装備、限定感、そして“これが最後の特別なR35だ”と感じさせる雰囲気。
この記号としての強さは大きい。

要するに、ただのPremium editionではなく、
R35を長く追ってきた人が最後に手にしたくなる理由をちゃんと用意したグレード
になっている。

3. 高性能GTとしての完成度はかなり高い

R35をスーパーカーではなく高性能GTとして見ると、この車はかなり優秀だ。
速い。安定している。長距離もこなせる。装備もそれなりにある。
そしてT-spec/ Premium editionの組み合わせになると、単なるタイムアタック兵器ではなく、高性能な“乗り物”としての完成度も見えてくる。

ここがR32~R34との大きな違いだ。
かつてのGT-Rは“戦う市販車”だった。
R35終盤は、そこからさらに**“超高性能GTカー”**へ寄っている。

4. 最後までGT-Rらしい怪物感がある

R35はどれだけ改良されても、最後まで“怪物”だった。
穏やかな紳士にはならなかった。
Premium edition T-specになっても、根本には巨大な性能を力でまとめている車の圧がある。

この怪物感は、現代の高性能車の中でもかなり独特だ。
上品に速い車は他にもある。
でもR35は、最後まで
「お前、本当に公道車か?」
と言いたくなる圧力を残していた。
そこは魅力であり、GT-Rという名前の強さそのものでもある。


ダメなところ

1. 最後まで軽快なスポーツカーにはなれなかった

ここははっきり書いていい。
R35はどれだけ改良されても、軽快なスポーツカーではない
速い。曲がる。止まる。
しかし軽くはないし、身のこなしがひらひらしているわけでもない。

だから、S2000やポルシェの一部のような“軽さの気持ちよさ”を求めると方向が違う。
R35の魅力はそこではなく、重さごと性能でねじ伏せることにある。
このキャラは最後まで変わらない。

2. “最後の型式”としては新鮮味に欠ける

R35系として最後の時期であることは間違いない。
だが、その最後が“完全新設計の最終型”ではなく、長く熟成してきたR35の最終仕上げである点は、人によっては少し寂しい。

つまりT-specは、すごく悪い言い方をすれば
「新時代を示す最終型」ではなく「現行R35を最高にそれっぽく仕上げた締めくくり」
にも見える。
ここは評価の分かれ目だ。

3. 価格と希少性が純粋な車評価を邪魔する

R35終盤、とくにT-specのような特別仕様は、どうしても車としての出来以上に“希少価値”で語られやすい
もちろん中身も良い。
だが、それと同じくらい
「最後だから」
「特別仕様だから」
「もう買えないから」
という理由で持ち上げられている面もある。

これはR34にも似た問題だが、R35終盤もかなりこの傾向が強い。
名車であることと、市場価値で語られることは別だ。
そこは切り分けたほうがいい。

4. 2024年になってもR35はやはりR35のまま

ここが一番本質かもしれない。
T-specになっても、Premium editionになっても、結局この車はR35だ。
つまり、

  • 重い
  • 強い
  • 速い
  • でも少し無機質
  • 少しアメリカンな豪快さがある
  • 繊細な名車というより高性能兵器寄り

この本質は変わらない。
それを“最後までぶれない魅力”と見るか、“結局最後まで方向転換できなかった”と見るかで評価は変わる。


この車の一番痛いところ

NISSAN GT-R Premium edition T-spec(R35)'24の一番痛いところは、**“最後のGT-Rとしては強すぎるが、美しすぎるわけではないこと”**だ。

完成度は高い。
速さもある。
GT-Rとしての説得力もある。
だが、心を酔わせる美しさや、スポーツカーらしい繊細な気持ちよさでは少し弱い。
この車は最後まで、
“強さでねじ伏せるGT-R”
だった。

そこがR35らしくもあり、最後の型式として少し惜しくもある。


R35前期・中期との比較

2014年型との比較

2014年型R35は、もっと荒い。
怪物感が強く、少し雑で、少し未成熟な高性能兵器だった。
それに対して2024年型T-specは、その怪物をかなり上手に飼い慣らした最終進化型に見える。

雑に言えば、

  • 2014年型は暴れる怪物
  • 2024年型T-specは完成された怪物

そんな違いがある。
だから、純粋な怪物感なら前期~中期を好む人もいるし、完成度なら最終期を選ぶ人もいる。

2017年型との比較

2017年型は、R35が少しGT寄りに整ってきた時期だ。
そこからさらに進んだ最終期T-specは、**“R35を仕上げ切った感”**が強い。
見た目の熟成、装備の特別感、そして最終期らしい記号性。
そのぶん、初期の野性味はやや薄れている。


R32〜R34との違い

R32〜R34が“戦う市販車”なら、R35は“勝つための専用兵器”だ。
そしてT-specのような最終期モデルは、その専用兵器を最も上質に、最も特別に仕立てた形と言える。

だから、昔のGT-R信仰が強い人ほど複雑だろう。
R35は間違いなくすごい。
だが、R32〜R34のような情緒や荒々しい市販車感とは別物だ。
そこは最後まで変わらなかった。


日産というメーカーから見た2024年型T-spec

この車は、日産がR35 GT-Rというプロジェクトを最後まで諦めずに磨き続けた証拠でもある。
公式にもR35は18年にわたり改良を重ね、2025年8月に最終車両がラインオフしたとされている。

つまりT-specは、単なる終売前の記念車ではない。
長年積み上げたR35の改良史を、最後に分かりやすくまとめた象徴的仕様だ。
そこは素直に評価していい。


総評

日産 NISSAN GT-R Premium edition T-spec(R35)'24は、R35系GT-Rの締めくくりとしてかなり説得力のある一台だ。
最後まで速い。
最後まで強い。
最後までGT-Rらしい怪物感がある。
そのうえで、最終期らしい特別感まできちんと持たせた。

忖度なしで言えば、
最後まで軽快なスポーツカーにはならなかった。
最後まで少し無機質で、少しマッスルGT的だった。
そして最後の型式としては、新時代を見せるより“R35を仕上げ切る”方向だった。
だが、それでもなお
「R35の最後がこれでよかった」
と思わせるだけの完成度はある。

要するにこの車は、
“美しく終わったGT-R”ではなく、“最後まで強さを手放さなかったGT-R”
である。
そしてそれこそが、R35という車の一番R35らしい終わり方なのかもしれない。

-日産