CUSTOMIZED CAR

LOYAL BUTLERは“執事の名前をした、かなり過激なNA2 NSXカスタム”だった

LOYAL BUTLER

LOYAL BUTLERとは

LOYAL BUTLER。
忠実な執事。名前だけ聞けば、紅茶でも運んできそうだ。
だが実物は、黒とシルバーのNSXに巨大ウイング、ボンネットにはグラフィック、そして中身は3.5L級NA・473ps
紅茶どころか、主人の敵を無言で消しに行くタイプの執事である。

ベース車は、見た目とレイアウトから見てホンダ NSX Type S Zero(NA2)'97と思われる。
実車のType S Zeroは、C32B型3.2L V6 VTEC、6速MT、MR、軽量化、ハードセッティングサスを特徴としたかなり尖ったモデルだ。ホンダ公式でもType S Zeroはエアコンやオーディオ非装着、遮音材軽減などで軽量化し、ハードセッティングのサスペンションを採用したモデルと説明されている。

ゲーム内のLOYAL BUTLERは、そこからさらに3,496cc、473ps、53kgm、MR、1,304kgまで盛られている。
これはもう、Type S Zeroを少し速くした程度ではない。
NSXの上品さを残しながら、中身だけかなり物騒にした仕様だ。


ベース車としてのNSX Type S Zero

NSX Type S Zeroは、かなり特殊な存在だ。

普通のNSXは、速さだけではなく扱いやすさ、視界、乗りやすさまで含めて作られたスポーツカーだった。
そこからType S Zeroは、快適装備を削り、軽量化し、足を締めたモデル。
つまり、元からかなり走り寄りである。

NSXの面白いところは、スーパーカーっぽい見た目なのに、作りはかなり理性的なことだ。
ミッドシップ、アルミボディ、VTEC V6、6速MT。
派手なようでいて、実はものすごく真面目。
ホンダらしいと言えばホンダらしい。
真面目すぎて、逆に変態である。

だからこそ、このLOYAL BUTLERのようなカスタムは少し危うい。
NSXは素材の完成度が高い。
雑にいじると、速くなる前に品が落ちる。


見た目は意外と悪くない

黒とシルバーのツートン風ボディ。
大型GTウイング。
ボンネットの控えめなグラフィック。
これまでの派手なカスタムカー群と比べると、かなり落ち着いている。

正直、これは悪くない。
NSXは元の形が強いので、派手な色や巨大な文字で飾り立てるより、こういう落ち着いた方向の方が似合う。
黒とシルバーは車の低さを強調するし、ウイングも機能パーツっぽく見える。

ただし、辛口で言えば、フロントまわりのグラフィックは少し余計だ。
NSXのボンネットは面が綺麗なので、何かを描きたくなる気持ちは分かる。
でも、描かない方が強い車でもある。

話し言葉で言えば、
「執事なら、胸元にデカい名札はいらんだろ」
という感じだ。

大型ウイングは似合っている。
だが、実車でやるなら取付部の補強までセット。
羽だけ大きくて、ボディが受け止めていない車はかなり残念だ。


473ps NAは実車で可能か

ここは分けて考えたい。

NSXを473ps級にすること自体は可能。
実際、NSX向けにはスーパーチャージャーキットが存在し、ScienceofSpeedのTVSスーパーチャージャーでは、3.2Lエンジンとの組み合わせで大幅な出力向上を狙う例が紹介されている。過給機を使えば、473ps級はかなり現実味が出る。

ただし、このLOYAL BUTLERは表示上では自然吸気
つまり、NAで3.5L・473psを狙う設定だ。

これはかなり本気のエンジン製作になる。
C32Bを3.5L級まで拡大し、NAで473psまで持っていくとなると、ストローカー、鍛造内部、ハイカム、圧縮比、ヘッド加工、吸排気、ECUまで全部やる領域だ。
街乗りライトチューンではなく、競技寄りのエンジンビルドに近い。

現実的に仕上げるなら、方向性は2つある。


現実的に作るなら2パターン

1. NSXらしさ重視のNA仕様

NSXらしさを残すなら、こっちだ。

  • C32Bリフレッシュ
  • 吸排気交換
  • エキマニ
  • スポーツ触媒
  • 軽量マフラー
  • 現車合わせECU
  • 軽量フライホイール
  • 強化クラッチ
  • 冷却系強化
  • 足回りとブレーキ強化

この仕様なら、馬力で派手に見せるより、レスポンスとバランスで勝負する。
数字はゲームほど大きくなくても、NSX本来の良さはしっかり残る。

Type S Zero風に作るなら、こっちの方が美しい。
速さを数字で叫ばない。
踏んだ時に分からせる。
執事っぽさで言えば、かなり正しい。


2. LOYAL BUTLER再現の3.5L NA仕様

ゲーム内スペックに寄せるなら、かなり本気だ。

必要な内容は以下。

  • 3.5L級ストローカー化
  • 鍛造ピストン
  • 鍛造コンロッド
  • 強化メタル
  • 強化ヘッドガスケット
  • ヘッドスタッド
  • ハイカム
  • 強化バルブスプリング
  • ポート研磨
  • 高圧縮化
  • 大容量スロットル
  • 吸気ボックス最適化
  • エキマニ
  • 高効率マフラー
  • 現車合わせECU
  • エンジンバランス取り

ここまでやると、もう普通のNSXチューンではない。
エンジン単体を作品として作る世界だ。

ただ、NSXでここまでやるならショップ選びがかなり重要。
NSXとC型エンジンを理解していない店で触ると、名前通り悪夢に近づく。
LOYAL BUTLERなのに、主人の財布を裏切る執事になる。


過給機仕様も選択肢としては強い

自然吸気にこだわらないなら、スーパーチャージャーはかなり現実的だ。
NSXはターボよりスーパーチャージャーの方がキャラクターに合う場面も多い。
アクセルレスポンスが自然で、ミッドシップのバランスも崩しにくい。

必要なパーツは以下。

  • スーパーチャージャーキット
  • インタークーラー
  • 大容量燃料ポンプ
  • インジェクター
  • 現車合わせECU
  • 強化クラッチ
  • オイルクーラー
  • ラジエーター強化
  • 各種メーター

473ps級を目指すなら、この方向の方が作りやすい。
ただし、Type S Zeroの“軽くて鋭いNA”という味は少し薄れる。
ここは好みが分かれる。


53kgmはNSXではかなり太い

この車のトルクは53kgm。
NSXとしてはかなり強い。

MRなのでトラクションはある。
しかし、後ろにエンジンがある車は、雑に踏むと挙動が一気に濃くなる。
FRのようにリアを流して遊ぶ感覚とは違う。
ミッドシップは、きれいに扱えば最高に速い。
雑に扱うと、車から返事が早すぎる。

53kgm仕様なら、駆動系とリアまわりはしっかり作るべきだ。

必要なのは以下。

  • 強化クラッチ
  • 軽量フライホイール
  • LSD
  • ミッションマウント
  • エンジンマウント
  • ドライブシャフト点検
  • ハブベアリング点検
  • ミッションオイル管理
  • デフオイル管理

NSXはエンジンだけ強くしても完成しない。
後ろで受け止める部分まで作って、初めて速くなる。


冷却系

NSXはミッドシップなので、冷却系の管理はかなり大事だ。
エンジンが後ろ、ラジエーターが前。
配管も長い。
古い個体ではホースや樹脂部品の劣化も見る必要がある。

必要な内容は以下。

  • 大容量ラジエーター
  • 強化ラジエーターホース
  • ローテンプサーモ
  • オイルクーラー
  • 水温計
  • 油温計
  • 油圧計
  • 電動ファン制御確認
  • 冷却水ライン総点検

高回転NAでも、過給機でも、熱管理は必須。
冷えないNSXは速くない。
ただ高いだけだ。


燃料系

473ps級を狙うなら、燃料系も重要になる。

  • 大容量燃料ポンプ
  • 大容量インジェクター
  • 燃圧レギュレーター
  • 燃料フィルター
  • 燃料ライン点検
  • 空燃比管理
  • ノック対策

NAで詰めるにしても、スーパーチャージャーで盛るにしても、燃料は外せない。
燃料が足りない高回転V6は、かなり怖い。
音は良いかもしれないが、壊れる音まで聞きたくはない。


足回り

NSXは前後ダブルウイッシュボーン。
ホンダ公式の1997年NSX諸元でも、サスペンションは前後ダブルウイッシュボーン、ブレーキは前後ベンチレーテッドディスクとされている。

足回りはかなり重要だ。
NSXは車高を落とせばいい車ではない。
ジオメトリーが崩れると、せっかくのミッドシップバランスが濁る。

必要な内容は以下。

  • 高性能車高調
  • ピロアッパー
  • 調整式アーム
  • 強化ブッシュ
  • スタビライザー
  • ハイグリップタイヤ
  • アライメント調整
  • コーナーウェイト調整

特にコーナーウェイトはやりたい。
NSXはバランスで走る車だ。
左右のバランスが雑なままパワーだけ上げても、良さが半分になる。


ブレーキ

473ps級なら、ブレーキはかなり大事だ。

必要なものは以下。

  • 4pot〜6potキャリパー
  • 大径ローター
  • スポーツパッド
  • ステンメッシュホース
  • 高沸点ブレーキフルード
  • ブレーキ導風板

NSXは軽さとバランスで止める車だが、パワーを上げるならブレーキも上げる。
速いのに止まらないNSXは見たくない。
それは執事ではなく、ただの暴走使用人だ。


ボディ補強

ここは慎重にやりたい。

NSXはオールアルミモノコックの車だ。
普通の鉄ボディ車と同じノリで、溶接補強やスポット増しを気軽に考える車ではない。
ホンダは初代NSXで量産車として世界初のオールアルミ・モノコックボディを採用し、軽量化と剛性確保に大きく振った。

だから補強の基本は、
ボルトオン補強、ブッシュ・マウント管理、足回り精度の向上
になる。

フロントまわり

  • フロントストラットタワーバー
  • フロントロアブレース
  • フロントサスペンションブッシュ交換
  • ステアリング系点検
  • ラジエーターコアサポート周辺点検

OKUYAMA/CARBINGにはNSX NA1/NA2用のストラットタワーバーが設定されており、左右のストラット上部をつないでボディを補強し、サスペンションを設計通りに動かす考え方のパーツとして説明されている。

センター・フロアまわり

  • フロアブレース
  • センターブレース
  • サイドシル周辺点検
  • アンダーパネル補強
  • ジャッキアップポイント周辺確認

NSXは床下の一体感が大事だ。
フロントとリアが別々に動くような感覚が出ると、ミッドシップの良さが薄れる。
古い個体では、まず取り付け部やボディ状態の確認が先。

リアまわり

  • リアストラットタワーバー
  • リアメンバーブレース
  • エンジンマウント強化
  • ミッションマウント強化
  • デフ周辺点検
  • GTウイング取付部補強

NSXは後ろが主役だ。
エンジン、ミッション、駆動、荷重。全部がリアに集まる。
ここを締めると、アクセルを入れた時の反応がかなり変わる。

大型ウイングを付けるなら、取付部の裏板補強は必須級。
羽だけ立派で、トランク側が負けるとかなり格好悪い。
空力パーツは飾りではない。
付けるなら、受け止めるボディも作る。

ブッシュ・マウント類

古いNSXでは、ここがかなり効く。

  • ロアアームブッシュ
  • トーコントロール系ブッシュ
  • スタビブッシュ
  • エンジンマウント
  • ミッションマウント
  • リアサブフレーム周辺

いきなりタワーバーを入れるより、ブッシュをリフレッシュした方が変化が大きいこともある。
古いゴムのまま補強パーツだけ足すと、上だけ立派で下が逃げる。

ロールケージ

サーキット寄りならロールケージもあり。

  • 4点式
  • 6点式
  • サイドバー追加
  • ダッシュ逃げ
  • ダッシュ貫通

ただし、NSXでケージを組むならかなり割り切りが必要だ。
内装、乗降性、快適性は落ちる。
LOYAL BUTLERをストリート寄りに仕上げるなら、まずはボルトオン補強とブッシュリフレッシュ。
タイムアタック寄りにするならケージ。
ここは用途で分けるべきだ。


軽量化

ゲーム内の車重は1,304kg。
実車Type S Zeroがかなり軽量化されたモデルであることを考えると、極端な数字ではない。
ただし、3.5L化や補強、大型ウイング、ブレーキ強化を入れるなら、重量増も考える必要がある。

軽量化するなら以下。

  • フルバケットシート
  • 軽量バッテリー
  • 軽量マフラー
  • カーボンボンネット
  • カーボンリアハッチ
  • 軽量ホイール
  • 不要内装の整理
  • 防音材の軽減
  • 必要に応じてアクリルウインドウ

ただ、NSXは軽さだけでなくバランスが大事だ。
無理に削りすぎるより、前後バランスを崩さない軽量化をした方がいい。


外装を実車で再現するなら

必要な外装パーツは以下。

  • ブラック/シルバー系ラッピングまたは塗装
  • ボンネットグラフィック
  • フロントリップ
  • サイドステップ
  • リアディフューザー
  • 大型GTウイング
  • 鍛造ホイール
  • ローダウン
  • 必要に応じて軽量ボンネット

ただし、実車ならもう少し抑えていい。

この車はNSXだ。
過剰な装飾で目立たせなくても、低いボディとミッドシップの形だけで十分に特別感がある。

おすすめは、
黒×シルバーのツートン、控えめなグラフィック、大型ウイング、鍛造ホイール、低すぎない車高。

これで十分強い。
執事なら、派手なネクタイより仕立ての良いスーツで勝つべきだ。


辛口総評

LOYAL BUTLERは、かなり良い方向のNSXカスタムだ。

派手すぎない外装。
黒とシルバーの落ち着いた色使い。
大型ウイング。
そして3.5L級NA・473psというかなり攻めた中身。
名前は執事だが、やっていることはかなり過激だ。

辛口で言えば、NAで473psという設定は相当な本気仕様。
実車でやるなら、自然吸気メカチューンで突き詰めるか、スーパーチャージャーで現実的に狙うか、最初に方向を決める必要がある。

ただ、この車の見た目はかなり好印象だ。
NSXの造形を完全には殺していない。
そこがいい。

要するにこの車は、
NSX Type S Zeroの上品さを残しつつ、数字だけはかなり物騒にしたカスタムだ。

雑に作れば、高いNSXを台無しにする。
きっちり作れば、かなり美しい戦闘機になる。

そしてLOYAL BUTLERという名前も悪くない。
静かに立っている。
だが命令されたら、たぶん一番速い。

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