
PRINCESSとは
PRINCESS。
名前は姫。
だが見た目は、白とピンクの派手なグラフィックをまとったNC1型NSX。
さらにゲーム内スペックは3.8L級V6ターボ、808ps、94kgm、4WD。
姫というより、城ごと焼き払ってから紅茶を飲むタイプである。
ベース車は、見た目からしてホンダ NSX Type S(NC1)’22と見ていい。
NC1型NSXは、3.5L V6 DOHCツインターボに3モーターを組み合わせたSPORT HYBRID SH-AWDを採用した2代目NSX。Type Sは2代目NSXの最終モデルとして世界350台限定、日本国内30台限定で販売された特別仕様だった。ホンダ公式でも、Type Sは3.5L V6ツインターボとSPORT HYBRID SH-AWDを組み合わせ、走行モード制御によって街乗りからサーキットまで対応するモデルとして説明されている。
つまりこのPRINCESSは、もともと特別なNSX Type Sを、さらにゲーム的に過激化した仕様だ。
素材は一級品。
ただし、改造難度も一級品。
普通のターボ車感覚で触ると、姫ではなく機嫌の悪い女王になる。
ベース車としてのNC1 NSX Type S
NC1型NSXは、初代NA1/NA2とはまったく性格が違う。
初代NSXは軽さ、視界、NA V6、ミッドシップの素直さで勝負した車だった。
NC1はそこに、ツインターボ、ハイブリッド、3モーター、9速DCT、トルクベクタリングAWDを入れた。
要するに、人間と機械が一緒に速く走るタイプのスーパースポーツだ。
Type Sではさらにパワーアップし、アキュラ公式では600hp級、492lb-ft級の最終仕様として発表されている。しかも専用ターボ、ブーストアップ、バッテリー出力向上、9速DCTの変速レスポンス改善、専用タイヤ、カーボン系軽量パッケージなど、かなり細かく手が入っている。
ここが大事だ。
NC1 NSXは、エンジンだけ速くすればいい車ではない。
エンジン、モーター、DCT、バッテリー、冷却、AWD制御、タイヤ、ブレーキ、空力。
全部がつながっている。
だから、このPRINCESSのように808ps級まで持っていくなら、単純なブーストアップでは済まない。
これはもう、車全体を作り直す領域だ。
見た目は……姫というより夜職の戦闘機
白ベースにピンクの差し色、ボンネットの大きな文字、フロントバンパーのピンクアクセント、サイドの派手なグラフィック。
かなり目立つ。
正直、上品ではない。
PRINCESSという名前なのに、王室感は薄い。
どちらかと言えば、深夜の湾岸に出てくる“金のかかった痛い車”に近い。
ただ、NC1 NSXは元のデザインがかなり現代的なので、派手なラッピングを受け止める力はある。
低いノーズ、広い車幅、複雑なエアインテーク、ミッドシップらしいキャビン位置。
そこにピンクを入れても、車体が負けない。
でも辛口で言えば、ボンネットの文字はかなり余計だ。
NC1 NSXは、造形だけで十分に情報量がある。
そこへさらに文字を乗せると、少し安く見える。
話し言葉で言えば、
「姫ならドレスは分かる。でも、胸元に“私、姫です”って書かなくていい」
という感じだ。
808psは実車で可能か
結論から言えば、方向性としては可能。ただし相当本気。
NC1 NSXはノーマルでもかなり高度な車だ。
しかもType Sは最終強化版。
そこから808ps級を狙うなら、エンジン単体だけでなく、ツインターボ、燃料、冷却、DCT、ハイブリッド制御、モーター側との協調まで考える必要がある。
実際にNC1向けには、ScienceofSpeedなどから2017〜2022年式NSX用のダウンパイプ、エキゾースト、インテーク系、インタークーラー系パーツが展開されている。特に同社のスポーツダウンパイプでは、排気系パーツがシャシーに近い位置にあるため、遮熱板を維持する重要性も説明されている。つまりNC1は、ただ排気を抜けばいい車ではなく、熱害まで含めて考える車だ。
808ps級まで行くなら、現実的には以下の方向になる。
- ECU/ハイブリッド制御の再調整
- 大容量タービンまたはタービン加工
- 高効率ダウンパイプ
- 高効率エキゾースト
- 大容量インタークーラー
- 燃料系強化
- DCT保護・冷却
- モーター・バッテリー熱管理
- 駆動系とタイヤの強化
かなり大仕事だ。
「マフラーとECUでちょっと速くする」程度の話ではない。
3.8L級という設定はかなり攻めている
ゲーム内では排気量が3.8L級になっている。
実車のNC1 NSX Type Sは3.5L V6ツインターボなので、そこから排気量アップしている設定だ。
実車でこれをやるなら、かなり特殊なエンジンビルドになる。
必要になるものは以下。
- ストローカーキット
- 鍛造ピストン
- 鍛造コンロッド
- 強化メタル
- 強化ヘッドガスケット
- ヘッドスタッド
- 強化バルブスプリング
- カムシャフト
- 強化オイルポンプ
- バランス取り
- ECU/ハイブリッド制御の再構築
ただし、現実的に考えるなら、まず3.5Lのまま高効率ターボ化で700ps級を狙う方が自然だ。
3.8L化は、数字の再現やトルク重視の本気仕様。
費用も手間も跳ね上がる。
この車の場合、808psという数字よりも、そのパワーをハイブリッドAWDでどう安全に使うかの方が難しい。
実車で作るなら、まずリフレッシュではなく診断とデータ取り
NC1は旧車ではない。
だが、複雑だ。
なので最初にやるべきは、古い車のようなレストアではなく、車両の状態診断とデータ取り。
見るべき部分は以下。
- エンジン圧縮・リークチェック
- タービン状態
- 冷却水温
- 油温
- 吸気温
- ノック傾向
- 燃圧
- DCT油温
- モーター温度
- バッテリー温度
- エラーコード履歴
- ブレーキ温度
- タイヤ摩耗
- アライメント
- ハイブリッド制御ログ
NC1はセンサーと制御の車だ。
勘で触る車ではない。
データを見ずに改造するのは、姫の機嫌を読まずに王室晩餐会へ突撃するようなもの。
だいたい怒られる。
エンジン・ターボ系
808ps級を目指すなら、まずエンジンとターボまわりを作る。
必要な内容は以下。
- 大容量タービン
- 強化アクチュエーター
- 高効率ダウンパイプ
- 高効率エキゾースト
- 大容量インタークーラー
- 吸気系強化
- ブースト制御
- ECUセッティング
- ノック対策
- 排気温管理
- 遮熱対策
NC1はエンジンルームの熱がかなり重要になる。
ミッドシップで、ツインターボで、さらにハイブリッド。
熱源が多い。
ここを甘く見ると、パワーは出ても安定しない。
話し言葉で言えば、
「速いけど、すぐ熱ダレする姫」は扱いにくい。
気品以前に持久力がいる。
燃料系
808ps級なら、燃料系も大幅に見る必要がある。
- 大容量燃料ポンプ
- 大容量インジェクター
- 燃圧管理
- 燃料ライン点検
- 空燃比管理
- ノック制御
- 必要に応じて高オクタン燃料前提のセッティング
NC1は普通の古典的なターボ車と違い、制御がかなり複雑。
燃料だけ増やして終わりではない。
エンジン、モーター、トルク制御、DCT保護まで含めて整合を取る必要がある。
DCTと駆動系
ここがかなり重要。
NC1 NSXは9速DCT。
Type Sではこの9速DCTにも改良が入っており、変速レスポンスの向上などが行われている。
だが808ps級となると、DCTの熱と耐久性がかなり気になる。
必要な内容は以下。
- DCT油温管理
- DCTクーラー強化
- 強化クラッチパック検討
- トルクリミット管理
- 前後駆動配分の制御
- ドライブシャフト点検
- ハブベアリング点検
- モーターユニット冷却管理
この車で一番怖いのは、エンジンが壊れることだけではない。
DCTやハイブリッド制御が許容しない領域に入ることだ。
古いFRターボなら、クラッチとデフを強くして踏む。
NC1はそう単純ではない。
車側が賢いぶん、改造する側も賢くないといけない。
冷却系
PRINCESSを実車化するなら、冷却は最重要項目のひとつだ。
必要な内容は以下。
- 大容量ラジエーター
- 大容量インタークーラー
- オイルクーラー
- DCTクーラー
- モーター冷却系チェック
- バッテリー冷却管理
- 吸気温管理
- 遮熱板の維持・追加
- エンジンルーム排熱対策
NC1はエンジン、ターボ、DCT、モーター、バッテリーが絡む。
冷やす場所が多い。
しかもミッドシップなので、熱がこもる。
この車は、パワーを出すよりパワーを連続で使えるようにする方が大事だ。
1発だけ速い車なら作りやすい。
何周も踏める車は難しい。
足回り
NC1 NSXは元からかなり完成度が高い。
だから足回りは、闇雲に硬くすると台無しになる。
必要な内容は以下。
- 高性能車高調
- 電子制御ダンパー対応の検討
- ピロ化は必要箇所のみ
- 強化ブッシュ
- アライメント調整
- コーナーウェイト調整
- 専用高性能タイヤ
- ホイール軽量化
Type Sでは専用タイヤやトレッド拡大、足回り・制御の最適化も行われている。
つまり、純正の時点でかなり詰められている。
そこへ社外足を入れるなら、純正以上に狙いをはっきりさせる必要がある。
見た目重視で車高だけ落とすのは、かなりもったいない。
NC1は「低いから速い」ではなく、「制御と接地が整っているから速い」車だ。
ブレーキ
808ps級なら、ブレーキは当然強化対象。
必要な内容は以下。
- カーボンセラミックブレーキ
- 高性能ブレーキパッド
- 高沸点ブレーキフルード
- ステンメッシュホース
- ブレーキ冷却ダクト
- キャリパー温度管理
- ABS制御との相性確認
Type Sには軽量パッケージとしてカーボンセラミックブレーキ、カーボンエンジンカバー、カーボンインテリアパッケージが用意され、約58lbの軽量化に寄与する内容が紹介されている。
このクラスの車は、ブレーキも制御と一体だ。
ただ大きいキャリパーを付ければ終わりではない。
ABS、タイヤ、車重、前後バランス、熱容量。
全部を見る必要がある。
ボディ補強
ここはかなり慎重に考えるべきだ。
NC1 NSXは、古い鉄ボディのチューニングカーとは違う。
純正状態でアルミや高剛性素材を組み合わせた現代スーパースポーツとして設計されている。
さらにエンジン、モーター、バッテリー、DCT、冷却系まで含めたパッケージになっている。
つまり、補強は“足す”だけではなく、純正バランスを崩さないことが大事になる。
フロントまわり
- フロントストラット周辺点検
- フロントロアブレース
- サブフレーム取付部点検
- ステアリング系点検
- ブッシュ・マウント類確認
NC1はフロントにモーターも関わる。
フロントまわりの剛性は、操舵だけでなくトルクベクタリングの効き方にも関係してくる。
適当に固めるより、まず純正状態の精度を維持するべきだ。
センター・フロアまわり
- フロアブレース
- サイドシル周辺点検
- アンダーパネル保持
- ジャッキアップポイント確認
- バッテリー搭載部周辺点検
ハイブリッド車では、フロアまわりを雑に触るのは避けたい。
補強を追加するなら、熱、配線、バッテリー、サービス性まで考える必要がある。
リアまわり
- リアサブフレーム点検
- エンジンマウント確認
- DCTマウント確認
- リアブレース
- GTウイング取付部補強
- リアディフューザー取付部補強
この車はリアがかなり重要だ。
エンジン、DCT、ターボ、排熱、駆動、空力。
全部がリアに集まる。
大型ウイングを付けるなら、取付部の補強は必須級。
PRINCESSのような外装なら、ウイングの見た目だけでなく、実際にダウンフォースを受ける前提で作りたい。
ロールケージ
サーキット専用に近づけるならロールケージもあり。
- 4点式
- 6点式
- サイドバー追加
- カーボン内装との干渉確認
- エアバッグ・センサー類への影響確認
ただし、NC1でケージを組むのはかなり割り切りがいる。
センサー、内装、乗降性、重量増、資産価値。
全部に影響する。
ストリート仕様なら、まずは純正剛性を活かしつつ、ウイング取付部、サブフレーム周辺、足回りブッシュ、冷却系固定部を整える方が現実的だ。
軽量化
ゲーム内では車重1,725kg。
NC1 NSXはハイブリッドAWDなので、初代NSXのような軽さはない。
むしろこの重さを、モーターと制御で速さに変える車だ。
実車で軽量化するなら以下。
- カーボンセラミックブレーキ
- カーボンエンジンカバー
- カーボン内装パネル
- 軽量ホイール
- 軽量マフラー
- 軽量バッテリーは慎重に検討
- 不要な内装の整理
- カーボンエアロ
ただし、NC1で無理な軽量化はあまり似合わない。
この車は軽さだけで勝負する車ではない。
重さを制御で使う車だ。
だから、無理に内装を剥がすより、
ホイール、ブレーキ、排気系、エアロの軽量化
を優先した方が自然だ。
外装を実車で再現するなら
PRINCESS風にするなら必要な外装パーツは以下。
- ホワイト系ラッピングまたは塗装
- ピンク系アクセント
- ボンネットグラフィック
- フロントリップ
- サイドスカート
- リアディフューザー
- 大型リアウイング
- 鍛造ホイール
- ローダウン
- カーボンエアロ
ただし、実車ならもう少し引き算した方がいい。
白とピンクの組み合わせは悪くない。
だが、文字や模様を盛りすぎると急に安っぽくなる。
NSX Type Sは、元からかなり高い車だ。
高い車を安く見せる改造は、なかなか罪深い。
おすすめは、
ホワイトボディ、ピンクの差し色、カーボンエアロ、大型ウイング、文字は控えめ。
これなら姫感と戦闘力の両方が出る。
今の画像は、少し自己紹介が多い。
辛口総評
PRINCESSは、かなり面白いNC1 NSXカスタムだ。
ベースはNSX Type S。
しかもゲーム内では3.8L級V6ターボ、808ps、94kgm、ハイブリッドAWD。
数字だけ見れば完全にモンスターだ。
ただし、実車でやるなら難度はかなり高い。
NC1は単純なターボ車ではない。
エンジン、モーター、DCT、バッテリー、AWD制御、冷却、ブレーキ、空力が全部つながっている。
そこを理解せずにパワーだけ上げると、かなり高い授業料を払うことになる。
外装は悪くないが、少し喋りすぎ。
白とピンクは似合う。
ただ、ボンネットの文字は減らした方がいい。
姫は自分で「姫です」と叫ばない。周りが勝手に道を空けるから姫なのである。
要するにこの車は、
見た目は派手な姫仕様、中身は相当危ないハイブリッドスーパースポーツだ。
雑に作れば、高額な飾り物。
きっちり作れば、かなり恐ろしい現代NSXになる。
そしてPRINCESSという名前も、案外悪くない。
綺麗で、扱いが難しくて、機嫌を損ねると高くつく。
まさに姫だ。