トヨタ

トヨタ bB Z X Version(NCP31)'03は“空気で売れた、でもちゃんと出来ていた名物車”だった

■ 基本スペック (ノーマル時)

項目スペック
メーカートヨタ
駆動方式FF
エンジン1NZ-FE 直列4気筒
総排気量1,496cc
最高出力109ps / 6,000rpm
最大トルク14.4kgf・m / 4,200rpm
全長×全幅×全高3,845×1,690×1,640mm
車両重量1,070kg
トランスミッション4速AT

四角いだけの若者向けかと思ったら、案外ちゃんと“時代の顔”だった

初代bBが出てきた時、多くの人はたぶんこう思ったはずです。
「なんだこの箱は」と。

低くもない。
速そうでもない。
高級そうでもない。
でも、妙に目立つ。
しかも若者が好きそうな顔をしている。
つまりbBは、登場した時点でかなり分かりやすかったんです。
**“実用車を、実用品っぽく見せないで売る”**というやり方が。

今でこそ、見た目重視のコンパクトや、ライフスタイル先行のクルマなんて珍しくありません。
でも2000年代前半のbBは、その流れをかなり上手く先取りしていました。
要するにこの車、
ただの四角いコンパクトではなく、“若い客にクルマをファッションとして売る”ことに成功した一台なんです。

そしてその中でもZ X Versionは、bBという車の“ちょっと悪そうで、ちょっと気取った感じ”を一番分かりやすく味わえる仕様でした。


この車、見た目で8割勝っている

でも残りの2割もちゃんと考えてある

bBの話をする時、まずデザインを避けるのは無理です。
だって、どう見てもデザインありきだからです。

四角い。
妙に平たい。
無駄に箱っぽい。
それなのに、普通の商用車や小型ワゴンみたいな生活臭はあまり出したがらない。
この“箱なのに、ただの箱で終わらせない”感じが、初代bBの一番の肝でした。

しかもZ X Versionになると、そのbBらしい記号がさらに強くなる。
エアロもそうですし、全体の雰囲気も少し濃い。
ノーマルのbBが“若者向けの実用車”だとすれば、Z X Versionは
**“若者向けの、ちょっと気合いの入ったbB”**です。

皮肉を言えば、性能ではなく見た目の気分で選ばれる車です。
でも、そういう車って案外バカにできない。
見た瞬間に欲しくなる力というのは、商品としてかなり大事です。
そしてbBはそこがとても上手かった。


“走り”の話を始めると、急に地味になる

だが、それでいい

正直に言います。
NCP31のbBに、走りの鋭さを期待する人は少ないでしょう。
速さで人を驚かせるクルマではない。
コーナーで歓声を上げる類でもない。
スポーティな顔をしていても、中身は基本的にちゃんとトヨタのコンパクトカーです。

でも、それでいいんです。
この車は最初から、スポーツコンパクトを目指していません。
目指していたのは、
扱いやすくて、広くて、見た目が強くて、若い層が“これ欲しい”と思うことです。
そこに対しては、かなり正しい出来になっている。

エンジンも、車格に対して必要十分。
街中で不満なく動く。
変に尖っていない。
だから、見た目に反して中身は実にまっとうです。
ここがbBの上手いところでしょう。

外は少し遊ぶ。
でも中身は、ちゃんと日常で使えるようにしておく。
その匙加減が実にトヨタです。
つまりbBは、
不良っぽい顔をしていても、根はかなり真面目なんです。


この車の魅力は“広さ”より“空気の作り方”にある

bBを褒める時、室内が広いとか、後席がどうとか、荷物がどうとか、そういう説明は確かにできます。
でも、本当の魅力はそこだけじゃありません。
bBは、中の空気まで含めて商品化したことがすごいんです。

インパネの見え方もそう。
座った時の視界もそう。
車内に入った瞬間に“ただの実用コンパクトではない”感じが出る。
この雰囲気づくりが上手い。

当時のbBって、カーオーディオ文化やドレスアップ文化とも相性が良かったですよね。
そのへんも全部ひっくるめて、
“クルマを移動道具以上の何かとして楽しむ入り口”
になっていた。
だから人気が出た。
単なる四角い便利グルマだったら、ここまで記憶に残っていません。


Z X Versionは、bBの“やりすぎる一歩手前”で止まっている

ここはかなり評価できます。
この手のクルマって、一歩間違えると本当に下品になります。
エアロを盛りすぎる。
メッキを増やしすぎる。
見た目だけで中身が追いつかない。
そうなると、ただの痛い若者車で終わります。

でも初代bB、とくにZ X Versionは、その一歩手前でちゃんと止まっている。
少し派手。
少しワルい。
でも、まだギリギリで商品としてまとまっている。
この“ギリギリ感”が絶妙です。

トヨタはこの手のバランス感覚が実に上手い。
本気で下品にはしない。
でも、地味にも逃げない。
結果として、bBは“ちゃんと市販車として成立するドレスアップ感”を手に入れた。
ここがこの車の強さでした。


忖度なしで言えば、今見るとかなり時代物です

もちろん、何でもかんでも名車扱いするつもりはありません。
bB Z X Versionも、今見るとかなり時代を感じます。

デザインそのものが2000年代前半の空気を強くまとっている。
良く言えば時代の象徴。
悪く言えば、今の感覚では少し“当時の流行そのまま”です。
そのため、人によっては懐かしさより古臭さが先に来るかもしれない。

それに走りも、当然ながら現代の高剛性コンパクトほどの安心感はない。
内装の質感も、今の目で見ればかなり時代なりです。
そして何より、bBは“クルマ好きが絶賛する走りの名車”ではまったくない。
そこを履き違えると、この車の評価はおかしくなる。

でも逆に言えば、
時代物だからこそ面白いとも言えます。
あの頃の若者向けトヨタ車が、どうやって市場を掴んでいたか。
その答えが、この一台の中にかなり分かりやすく入っている。


この車は“名車”というより“名物車”に近い

たぶんここが、一番しっくりくる評価です。
bB Z X Versionは、レビンやスープラやGT-Rみたいな意味での名車ではありません。
歴史を変えたスポーツカーでもない。
技術的に画期的だったわけでもない。
でも、時代の空気を強く掴んで、それをきちんと売れる形にした名物車ではある。

しかも、その名物っぽさが単なる一発ネタで終わらなかった。
ちゃんと実用性も持っていたし、キャラクターも立っていたし、カスタム文化とも噛み合った。
その意味では、非常によくできた“企画勝ちのクルマ”です。
そして企画勝ちのクルマは、案外あとまで語られます。


まとめ

トヨタ bB Z X Version(NCP31)'03は、
見た目で時代を掴み、中身ではちゃんと実用品として成立していた、非常にトヨタらしい名物車です。

速くはない。
高級でもない。
今見るとかなり時代の匂いが濃い。
でも、それでもなお、
“なんか欲しくなる”力がある
そこがbBの怖いところでしょう。

皮肉を言えば、この車は性能ではなく空気で売れたクルマです。
でも、その空気づくりがここまで上手かったなら、それも立派な才能です。
要するにNCP31のbB Z X Versionは、
走りの名車ではなく、2000年代前半の日本の若者文化をちゃんと四輪にしたクルマなんです。
そういう車は、案外しぶとく記憶に残ります。

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