
■ 基本スペック (ノーマル時)
| 項目 | スペック |
| メーカー | トヨタ |
| 駆動方式 | FR |
| エンジン | FA24 水平対向4気筒 |
| 総排気量 | 2,387cc |
| 最高出力 | 235ps / 7,000rpm |
| 最大トルク | 25.5kgf・m / 3,700rpm |
| 全長×全幅×全高 | 4,265×1,775×1,310mm |
| 車両重量 | 1,270kg |
| トランスミッション | 6速MT |
先代の青春を、ちゃんと大人が作り直したらこうなった
GR86って、良くも悪くも“答えが出ている車”です。
初代86は話題になりました。
安い、FR、軽い、楽しい。
ただし同時に、
「ちょっと遅い」
「トルクが薄い」
「惜しい」
という声もずっと付きまとっていた。
そしてトヨタとスバルは、その声をちゃんと聞いていた。
びっくりするくらい真面目に。
その結果できたのがZN8です。
2.4Lになった。
トルクも厚くなった。
見た目も少し筋肉質になった。
ボディも、足も、全体のまとまりも一段上がった。
つまりGR86は、
“若者のための遊べるFR”から、“ちゃんと完成度の高いFRスポーツクーペ”へ成長したんです。
これ、良いことです。
でも少し皮肉を言えば、初代の不器用な魅力まで少し減った。
そこがこの車の面白いところでもあります。
先代86の“惜しさ”を、本当に惜しいと思っていたらしい
最近のメーカーって、ユーザーの不満に対して妙に上手にごまかすことがあります。
内装を少し豪華にして、外装を少し派手にして、
「ほら進化しました」
とやる。
でもGR86は、その手の逃げ方をあまりしていない。
一番分かりやすいのは、やっぱり排気量です。
2.0のまま小細工でごまかす道もあったはずです。
でもそれをやらず、2.4Lまでちゃんと持ってきた。
つまりメーカー自身も、先代の
“いい車なんだけど、ちょっとパンチが足りない”
という評価を認めていたわけです。
ここは素直に偉い。
そしてZN8に乗ると、その改善が単なる数字遊びではなかったことも分かる。
先代みたいに頑張って回してようやく、という感じがかなり薄れた。
もっと普通に乗っていて、もっと自然に“速い”方向へ進んでいる。
要するにこの車、
86の第二章というより、先代の反省文をかなり優秀に書き直した車なんです。
走りは明らかに良くなった
だが、それで話が終わるほど単純でもない
ZN8のGR86は、先代よりちゃんと速いです。
これはもう、妙な言い回しをしなくていい。
普通に速くなっています。
特に中間域の太さ。
ここが効く。
街中でも、高速でも、ワインディングでも、
「先代より明らかに楽だな」
と感じる場面が多い。
だからこの車は、先代でよく言われた“遅いけど楽しい”から、
“ちゃんと速くて、ちゃんと楽しい”
へ移っています。
ただ、ここで少し面白くなる。
速くなったことで、先代にあった“薄さゆえの遊びやすさ”も少し後ろへ下がったんです。
初代86は、少し頼りないからこそ、乗り手が工夫して付き合う感じがあった。
ZN8はそこをかなり潰してきた。
良い意味で優秀。
悪い意味で少し優等生。
ここは好みが分かれるはずです。
でも総合的に見れば、やっぱりこの進化は正しい。
あのまま“味です”で逃げるより、よほど誠実です。
見た目は、ようやく“速そうな86”になった
初代86のデザインは悪くなかったです。
でもどこか軽かった。
良く言えば軽快。
悪く言えば少し頼りない。
その点、ZN8はちゃんと押し出しが出ました。
フロントの表情も、フェンダーの張りも、全体の腰つきも、
「これはスポーツカーですよ」
と分かりやすくなっている。
もちろんスープラみたいな大仰さはない。
GRヤリスみたいな変態の迫力もない。
でも、FRクーペとして見た時の説得力は確実に上がった。
少し皮肉を言えば、ようやく見た目が中身に追いついた感じです。
初代は“楽しい車”ではあったけれど、“速そうな車”としては少し線が細かった。
ZN8は、そのへんをちゃんと分かっている。
だから今度の86は、止まっていても少しまともに見える。
RZというグレード名は、わりと正しい
トヨタは時々グレード名を盛ります。
RZなんて名乗られると、ついこちらも期待してしまう。
でもZN8のRZに関しては、そこまで悪質ではありません。
装備も、見た目も、全体の“本命感”も、ちゃんとある。
安っぽいスポーツグレードではなく、
GR86という車を一番分かりやすく味わえる仕様として、かなり納得できます。
この車に変にラグジュアリーを求めても仕方ないし、逆に質実剛健すぎても魅力が薄れる。
その中でRZは、ちょうどいいところにいます。
スポーツカーとしてちゃんと見えて、日常でも使えなくはなく、価格や装備のバランスも破綻していない。
このへんはよくできています。
BRZとの違いは、結局“味付け”の話に戻る
この車を語ると、どうしてもBRZとの比較が出ます。
仕方ないです。
兄弟車ですから。
でも、ここで面白いのは、今や両者とも基本の完成度が高いことです。
だから違いは、もう“どっちがマシか”ではなく、どっちの味付けが好きかの話になってきます。
GR86は、少しだけ分かりやすく元気です。
少しだけ遊び心が前に出る。
BRZのほうが、もう少し真面目で整って見える。
その程度の差と言えばその程度の差です。
でも、車好きって案外その“少し”で選ぶんです。
GR86は、BRZよりちょっとだけ悪ガキっぽい。
といっても本物の不良ではなく、
ちゃんと大学を出てから少しだけイキっているタイプですが。
その程度のやんちゃさです。
忖度なしで言うと、結局は“ちゃんとした優等生FR”です
ここがZN8の少しつまらないところであり、同時にいいところでもあります。
この車、かなり出来がいい。
だから、批判しようと思うと少し困る。
もちろん弱点はあります。
内装は相変わらずプレミアムではない。
排気音だって、昔の名車みたいな官能で勝負するわけではない。
後席はやっぱり“あるだけ”です。
そして、絶対性能だけを見れば上には上がいくらでもいる。
でも、そういうことを言っても、この車の価値はあまり揺らぎません。
なぜならGR86は、最初から“全部入りの万能高級スポーツ”を目指していないからです。
狙いはもっとはっきりしている。
手の届くFRスポーツを、ちゃんと良いものにすること。
その目的に対して、この車はかなり真面目に成功しています。
皮肉を言えば、優秀すぎて少し語りにくい。
昔の名車みたいな大きな癖がない。
でも、その“ちゃんとしてしまった感じ”こそが、ZN8の現在地なんでしょう。
初代86が好きな人ほど、少し複雑かもしれない
ここは正直に書いておきたいです。
ZN8は確実に良くなっています。
でも、初代86のファンの中には、そこに少し複雑な気持ちを抱く人もいるはずです。
初代には、未完成なりの味があった。
ちょっと足りない。
ちょっと薄い。
そのぶん、乗り手の工夫や気分が入り込む余白があった。
ZN8は、その余白をかなり埋めてきた。
だから、
“より良い車”にはなったが、“より面倒くさい愛車”ではなくなった
とも言える。
これは褒め言葉でもあり、少し寂しい話でもあります。
でも新型って、本来そうあるべきです。
ずっと足りないまま味で押し通すより、ちゃんと直してきたほうが立派です。
まとめ
トヨタ GR86 RZ(ZN8)'21は、
初代86の惜しさをかなり真面目に潰してきた、優秀なFRスポーツクーペです。
2.4L化で速さは明確に上がった。
見た目も説得力を増した。
車としてのまとまりも一段進んだ。
その結果、GR86は“話題性のあるFR”から、ちゃんと良いFRスポーツになった。
忖度なしで言えば、
少し優等生です。
少しまとまりすぎています。
初代の未完成な青春は少し減った。
でも、それでもなお、
今この時代にこんなFRクーペをこの値段感とこの完成度で出していること自体が、かなり立派です。
要するにZN8のGR86 RZは、
**初代の続きを名乗る資格があるどころか、初代がなれなかった“ちゃんと完成した86”**なんです。
それを面白くないと言うのは簡単ですが、私はむしろ、その誠実さを評価したいですね。
