
■ 基本スペック (ノーマル時)
| 項目 | スペック |
| メーカー | スバル |
| 駆動方式 | FR |
| エンジン | FA24 水平対向4気筒 NA |
| 総排気量 | 2,387cc |
| 最高出力 | 235ps / 7,000rpm |
| 最大トルク | 25.5kgf・m / 3,700rpm |
| 全長×全幅×全高 | 4,265×1,775×1,310mm |
| 車両重量 | 1,270kg |
| トランスミッション | 6速MT |
先代の不満を潰しに来た、本気の二代目
初代ZC6のBRZは、良い車でした。
でも、誰が見ても分かる弱点がありました。
2.0L自然吸気の物足りなさ。
中低速の薄さ。
“楽しいけど、あと少し欲しい”という感覚。
あれがZC6の魅力であり、同時に限界でもあった。
ZD8は、その“あと少し”をかなり真面目に埋めてきた車です。
排気量を上げ、トルク感を増し、見た目も中身も少し筋肉質にした。
つまりこの二代目は、
「分かってる。先代の不満点はそこだろ」
と最初から答えを出しに来ている。
この姿勢がまず好感です。
言い訳がない。
逃げてもいない。
ちゃんと改良してきた。
だからZD8は、まずそれだけで評価できます。
先代より“ちゃんと速い”
そして、その差は想像より大きい
ZD8に乗ると、一番分かりやすい変化はここです。
ちゃんと速い。
それも、カタログ上だけではなく、体感でちゃんと分かる速さです。
先代ZC6は、気持ちよさで勝負する車でした。
でも、踏み足した時の押しの弱さはやはりあった。
その点、ZD8はもっと前に出ます。
中間域の厚みがあり、踏み増した時の反応も一段力強い。
そのおかげで、運転していて“無理して回してる感”が減った。
ここはかなり大きいです。
BRZは昔から“遅いのに楽しい”と言われがちでしたが、ZD8はそこから一歩進んで、
“ちゃんと速い上に楽しい”
に寄せてきた。
この変化は、ただの正常進化以上の意味があります。
走りの印象は、軽快というより“安定して速い”
ただし、ここで少し性格も変わっています。
ZD8は、先代ほどのヒラヒラした薄さだけでは勝負していません。
もっと踏ん張る。
もっと落ち着いている。
もっと安心して速く走らせられる。
これは良い意味では、車としての完成度が上がったということです。
ボディの一体感も、足まわりの受け止め方も、全体のまとまりも、より現代的になっている。
だからZD8は、先代より明らかに“出来がいい”。
でも悪い意味では、少しだけ
優等生っぽい。
少しだけ
危うさが減った。
ここは好みが分かれるところでしょう。
先代ZC6は、少し線が細くて、少し頼りなくて、そのぶん人間が介入する余地が濃かった。
ZD8は、その余地を減らしてでも、車としての正しさを高めた感じがあります。
Sグレードという立ち位置も、実はかなりいい
BRZ Sというグレードは、派手すぎず、薄すぎず、かなり絶妙です。
最上級であることを必要以上に誇示せず、でも装備も見た目もちゃんと整っている。
この“ちょうどよさ”がBRZのキャラに合っています。
BRZは、もともとスーパーカーでもプレミアムクーペでもありません。
あくまで、運転を楽しむための現実的なFRスポーツです。
だからこそ、Sグレードの
“必要なものはちゃんとある。でも過剰ではない”
感じがしっくりきます。
要するにSは、
BRZという車を一番素直に味わいやすい位置
にあるグレードです。
見た目は先代より“分かりやすく強い”
デザインも、ZD8でかなり変わりました。
ZC6は、良くも悪くも少し細身で、少し理知的で、少し地味でした。
一方でZD8は、もっと張りがあり、もっと腰が強く、もっと“スポーツカーっぽい押し”があります。
ここはかなり現代的です。
昔のBRZが“知っている人だけが分かるFRクーペ”だったのに対して、ZD8は
見た瞬間に、それなりにやる車だと分かる。
この分かりやすさは、商品としてはかなり強い。
ただし、ここでも先代ファンからすると少し複雑です。
ZC6の控えめな感じが好きだった人には、ZD8は少し押し出しが強い。
つまり、
洗練より説得力を取ったデザイン
とも言えます。
忖度なしで言えば、もう“儚い名車”ではない
ZD8の欠点を挙げるなら、ここです。
この車はかなり良くなりました。
でも、そのぶん
儚さが減った。
先代には、少し物足りないからこそ、乗り手が工夫して付き合う余白がありました。
ZD8は、そこをきっちり埋めてきた。
それは正しい。
でも、正しいからこそ、少し味が薄れたと感じる人もいるはずです。
また、絶対性能が上がったとはいえ、依然として超高性能車ではありません。
ターボ車の暴力的な加速や、上級スポーツの圧倒的な質感を期待するとやはり違う。
つまりZD8は、
相変わらず“運転好きのための現実的スポーツカー”の枠にいる。
その立ち位置をどう見るかで評価は変わります。
ZC6との比較
どちらが好きかは、完成度か味か
ZC6とZD8の関係は、とても分かりやすいです。
- ZC6は、少し足りないが、その不足まで含めて味がある
- ZD8は、その不足をかなり真面目に潰した完成型
です。
車として優れているのは、たぶんZD8です。
速いし、太いし、安定しているし、明らかに完成度が高い。
でも、だからといって全員がZD8を好きになるとは限らない。
先代の少し線の細い感じ、少しアナログな感じが好きな人には、ZC6のほうが刺さる可能性もあります。
この2台は、優劣というより
価値観の違い
で語るべき兄弟です。
総評
スバル BRZ S(ZD8)'21は、先代の不満点を真面目に潰し、速さと完成度をしっかり引き上げた、非常に出来のいい二代目BRZです。
排気量アップはただの数字の改善ではなく、体感の満足感まできちんと変えた。
見た目も中身も、先代より“分かりやすく強い”。
忖度なしで言えば、
少し優等生です。
少し味は薄まりました。
先代の儚い楽しさが好きな人には、少し完成されすぎにも見える。
でも、それでもなお、
“今この時代に乗るFRスポーツクーペ”としてはかなり正しい答えになっています。
要するにこの車は、
**“先代の続編”というより、“先代の答え合わせ”**です。
そして、その答えはかなり優秀だった。
ZD8のBRZ Sは、そういう一台だと思います。
