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日産 NISSAN GT-R Premium edition(R35)'17はスーパーカーではなく“日本製マッスルGT”だった

■ 基本スペック (ノーマル時)

項目スペック
メーカー日産
駆動方式4WD (独立型トランスアクスル4WD)
エンジンVR38DETT V型6気筒 ツインターボ
総排気量3,799cc
最高出力570ps / 6,800rpm
最大トルク65.0kgf・m / 3,300-5,800rpm
全長×全幅×全高4,710×1,895×1,370mm
車両重量1,760kg
トランスミッション6速DCT

R35 GT-Rは、もはやR32〜R34の延長線にある“スカイラインGT-R”ではありません。
名R35 GT-Rは、長く「日本のスーパーカー」として語られてきた。
実際、スペックだけ見ればその評価は間違っていない。強烈な加速性能、4WDによる圧倒的なトラクション、そして年々磨き上げられてきた総合性能は、同時代のスーパーカーと並べても十分に勝負できる水準にある。

だが、R35を本当に理解するなら、単純に“日本のスーパーカー”という言葉で片付けるのは少し雑だ。
この車の本質は、もっと無骨で、もっと重量級で、もっと分かりやすい力強さの側にある。
むしろ近いのは、ヨーロッパの繊細なミッドシップスーパーカーというより、コルベットやカマロのようなマッスルGTを、日本流の電子制御と4WDで極限まで研ぎ澄ました存在と考えたほうがしっくりくる。

R35 GT-R Premium editionは、まさにそうした一台だ。


この車はどんな存在なのか

R35 GT-Rは、R32からR34までの“スカイラインGT-R”とは明確に立ち位置が違う。
かつてのGT-Rが、ベース車の文法を残しながら戦闘力を高めた怪物だったのに対し、R35は最初からGT-Rという独立した高性能マシンとして設計されている。

そこにあるのは、軽快さや繊細な運転感覚を積み上げていく発想ではない。
とにかく速く、確実に、誰が乗っても高い速度域へ到達できること。
R35はその一点を恐ろしく真面目に追い込んだ車である。

2017年のPremium editionは、そのR35の中でも単なるタイムアタック兵器ではなく、ある程度の上質感や長距離GT的な要素まで意識したグレードだ。
つまりこの車は、ただの暴力装置ではない。
だが同時に、優雅なラグジュアリークーペでもない。
高性能を少し上品に包んだ、極めて重武装なGT
それがR35 Premium editionの立ち位置だ。


良いところ

とにかく速い。それも“扱える速さ”として速い

R35の最大の武器は、やはりこの分かりやすい速さだ。
アクセルを踏んだ瞬間の力強さ、4WDによる路面への押し付け方、高速域まで鈍らない加速。
この車は、速さを演出で見せるのではなく、物理で殴ってくる。

しかも厄介なのは、その速さが単なるピーキーさではないことだ。
普通ならここまでの性能を持つ車は、常に緊張を強いる。
だがR35は違う。電子制御、駆動制御、ボディ剛性、全部を使って、その速さをドライバー側に“扱えるもの”として返してくる。
この感覚は、ただの高出力FRや純粋なスーパーカーとも違う。
恐ろしく速いのに、意外なほど逃げ道がある。
そこがR35の恐ろしさであり、完成度の高さでもある。

日本車らしさより“怪物らしさ”が先に立つ

R35は、日本車の高性能モデルとして語られることが多い。
もちろんそれは間違いではない。だが乗った印象は、昔ながらの“繊細で緻密な日本製スポーツ”とは少し違う。

この車は、細さより押しの強さ、軽快感より質量感、レスポンスの美しさより加速の暴力性が前に出る。
そのため、国産スポーツの延長として見ると少し異質だ。
むしろ“重くて強いものを圧倒的なトラクションで叩き込む”という意味では、アメリカンパフォーマンスカーに通じる文法を感じる。
ただしR35は、そこへ日産流の神経質なまでの電子制御を足している。
この組み合わせが唯一無二だ。

Premium editionはGTとしての満足感もある

R35の中でもPremium editionは、ただ速いだけの仕様ではない。
ある程度の上質感や装備、長距離移動を許容する快適性も備えている。
ここがPure editionやサーキット寄りの仕様とは少し違う。

つまりこのグレードは、“とんでもなく速いGTカー”としての性格がかなり強い
助手席に人を乗せて高速道路を長距離移動することもできるし、その気になれば一瞬で景色を変える加速もある。
この“日常と非日常のつなぎ方”は、R35の中でもPremium editionが特に得意とする部分だ。

GT-Rとしての記号性が圧倒的に強い

R35は、好むと好まざるとにかかわらず、見る者に「特別な車だ」と分からせる力がある。
R32〜R34のような硬派さとは少し違い、もっと巨大で、もっと威圧的で、もっと“勝つための機械”として見える。
この強烈な記号性は、R35の価値のひとつだ。


ダメなところ

繊細なスポーツカーではない

ここはかなり重要だ。
R35は速い。圧倒的に速い。だが、操作の気持ちよさをじっくり味わうタイプのスポーツカーではない。

ハンドルを切って荷重を乗せ、リアの動きを感じながらじわじわ向きを変えていくような、あの繊細なスポーツカー的快感は薄い。
車が大きく、重く、そして制御が濃いぶん、人間の感覚より機械の都合が先に立つ瞬間も多い。
そのため、S2000やロータス、あるいは空冷ポルシェのような“操る歓び”を期待すると、方向性が違いすぎて戸惑う。

重さは最後まで消えない

R35は重い。
しかもその重さを、性能で無理やり帳消しにしている車だ。
だから速いし、実際にかなり曲がる。だが、物理的な質量感そのものが消えているわけではない。

コーナーでの身のこなし、切り返しの重厚さ、ブレーキング時の沈み込み。
どこかに常に「大きくて重いものを高速で制御している」感覚が残る。
この印象は、軽快感で勝負するスポーツカーとは明確に違う。
R35の魅力が“豪快さ”に寄るのは、この重さが根本にあるからだ。

スーパーカー的な色気は案外薄い

数字は確かにスーパーカー級だ。
だが、フェラーリやランボルギーニのような官能性や、ポルシェのような精密な色気とは少し違う。
R35には、もっと工業製品的な強さ、兵器的な迫力はある。
しかし“美しさ”や“エモさ”で酔わせる車ではない。

このため、スペックに惹かれて乗ると圧倒されるが、感情面では少し無骨に映ることがある。
速さでは魅了するが、官能性では押し切らない。
そこはR35の明確な個性であり、好みが分かれる部分だ。

高額車として見た時の上質感は微妙

Premium editionはかなり頑張っている。
しかし、それでも絶対的な価格帯を考えると、内装や細部の質感で「圧倒的に贅沢」とまでは言い切りにくい。
R35は、スペックの高さに対して、質感の高級さが完全には追いついていない瞬間がある。
ここは“日産の高性能車”らしい現実感が出てしまっている部分でもある。


この車の一番痛いところ

R35 Premium editionの一番痛いところは、スポーツカーとして語ると少し雑で、GTカーとして語ると少し過激すぎることだ。

軽快なスポーツカーではない。
優雅なGTでもない。
スーパーカーのような色気全開でもない。
だが、それらの要素を全部かなり高いレベルで部分的に持っている。

この“何でも強いが、どのジャンルにも完全には収まりきらない”感じが、R35の魅力であり弱点だ。
そしてその曖昧さこそが、アメ車っぽいマッスルGT感につながっている。
要するにこの車は、きれいな定義に収まらない。
そこが面白く、同時に評価の難しさでもある。


R32〜R34との比較

R32〜R34は、まだ“市販車を戦闘化したGT-R”だった。
そこには人間臭さがあったし、スカイラインという名前の延長線も残っていた。
一方でR35は、最初からGT-R専用の高性能兵器だ。
そのため、同じGT-Rでもロマンの質が違う。

  • R32〜R34は、戦う市販車
  • R35は、勝つための専用機

この違いは決定的だ。
R35が“名車”であることは疑いようがない。
だが、R32〜R34と同じ種類の名車ではない。
そこを混同すると、R35の評価はブレる。


日産というメーカーから見たR35

R35は、日産がGT-Rを“日本の特別なスポーツカー”から“世界に通用する高性能ブランド”へ押し上げるために生んだ車だ。
その意味では成功している。
速さでも、記号性でも、知名度でも、R35はGT-Rをひとつ上の位置へ持っていった。

ただし、その代償として失ったものもある。
かつてのGT-Rにあった、市販車ベースならではの人間臭さや、スカイラインGT-Rとしての情緒はかなり薄くなった。
R35は日産の技術力の象徴ではあるが、日産の情緒まで全部背負った車ではない。
そこがこの車の複雑さだ。


総評

日産 NISSAN GT-R Premium edition(R35)'17は、スーパーカー級のスペックを持ちながら、実際のキャラクターはもっとマッスルGT寄りの怪物である。
軽快なスポーツカーではない。
官能的なスーパーカーでもない。
だが、速さ、安定感、トラクション、押しの強さでは本物だ。

忖度なしで言えば、
重い。
繊細さは薄い。
価格に対する上質感も絶対的とは言えない。
そして、スポーツカーとしての気持ちよさより機械としての強さが前に出る。
それでもなお、この車にしかない“圧倒的な怪物感”は本物だ。

要するにR35は、
美しい名車ではなく、強すぎる名車である。
しかもその強さの出し方が、少しアメリカンで、かなり日産的。
そこまで含めて、R35 GT-Rは非常に面白い。

-日産