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トヨタ スープラ 2.5GT TWIN TURBO R(JZA70)'93は“伝説の少し手前にいた、ちゃんといいGT”だった

■ 基本スペック (ノーマル時)

項目スペック
メーカートヨタ
駆動方式FR
エンジン1JZ-GTE 直列6気筒 ツインターボ
総排気量2,491cc
最高出力280ps / 6,200rpm
最大トルク37.0kgf・m / 4,800rpm
全長×全幅×全高4,620×1,745×1,300mm
車両重量1,500kg
トランスミッション5速MT

80ほど神話になれなかった代わりに、70には“ちゃんと走りそうなGT”の現実味が残っている

JZA70のスープラって、少し損な車です。
前にはA60がいて、後にはJZA80がいる。
しかも80のほうは、後年になって2JZ神話だの映画だの海外人気だので、半分宗教みたいな扱いになってしまった。
そうなると70はどうしても“ひとつ前の地味なやつ”に見られやすい。

でも、そこが甘い。
70スープラは、80みたいに伝説を背負わされる前の、まだ車としてまっとうに評価できるスープラです。
そして、その中でも2.5GT TWIN TURBO Rはかなり美味しいところにいる。

この車は、ピュアスポーツを気取りきっていない。
かといって、ただの高級GTでもない。
速さもある。重さもある。少し野暮ったい。でも妙に色気もある。
要するに、バブルの終わり際に生まれた、少し真面目で少し過剰な日本製GTなんです。


まず見た目がいい

ただし、分かりやすく派手ではない

70スープラのデザインは、80みたいな肉感的な押し出しとも違うし、FDみたいな緊張感の塊でもありません。
もっと四角い。
もっと平たい。
そして少し古臭い。
でも、その古臭さがいい。

低くて長い。
ノーズが長く、キャビンはやや後ろ寄り。
いかにも“GTカーです”という顔をしている。
しかもリトラではないこの薄い顔つきが、妙に時代を感じさせる。
今見ると、洗練されているというより、ちゃんと古い高級スポーツの匂いがある。

ここが70の魅力です。
派手さで押すのではなく、
「どうだ、俺は長くて低くてターボだぞ」
と静かに言ってくる。
この無言の圧が、なかなか悪くない。

皮肉を言えば、少し気取ったデートカーにも見えます。
でも、その少し気取った感じこそが70スープラらしい。
この車、最初から多少ナルシストなんです。


2.5GT TWIN TURBO Rという名前が、もう時代の香りしかしない

このグレード名、今だと少し笑ってしまいます。
2.5GT。TWIN TURBO。R。
全部盛りです。
でも、当時はこれが格好よかった。
そして実際、中身もちゃんと伴っていた。

1JZ-GTEを積んだ70後期は、前期の7Mよりもずっと説得力がある。
エンジンの信頼感も、吹け上がりも、全体のまとまりも、明らかに良くなった。
この時点で、70スープラはようやく“かなり良いGT”になったと言っていいです。

しかもTWIN TURBO Rとなると、ただの快適GTで終わらない。
足も締まっているし、名前のとおり少しやる気がある。
つまりこれは、
高級スポーツのふりをしたクルーザーではなく、ちゃんと走りも意識した70スープラの本命側なんです。

もっとも、この“本命感”も今の車みたいな完成度の高さで勝負する話ではありません。
もう少し古いです。
もう少し重たい。
でも、その重たさごと含めて味になっている。


1JZ-GTEを積んだ70は、80より少し人間臭い

ここは結構大事です。
1JZを積んだJZA70の魅力は、80みたいな神話の入り口にいないことです。

80スープラは、もう何でもかんでも2JZに持っていかれる。
車体の話をしていても、結局最後は2JZの耐久性とか1000馬力とか、そういう神話の方向へ流れていく。
でも70の1JZは、そこまで話が暴走しない。
そのぶん、ちゃんと車全体を見られる。

しかも1JZって、2JZより少し軽やかで、少し若くて、少し回転側に色気がある。
70のボディとの相性も、かなり悪くない。
重めのGTボディを、1JZのツインターボがちゃんと引っ張っていく。
この感じ、80のような“器の大きさ”とは少し違って、もっと人間が扱える範囲の濃さがあります。

要するにJZA70は、
神話の怪物ではなく、ちゃんと機械として付き合えるトヨタの直6ターボGTなんです。
これが好きな人にはたまらない。


走りはスポーツカーというより、やはりGT寄り

だが、そのGTっぽさが妙にいい

ここははっきり言っておきます。
70スープラをFDやNSXみたいな目線で見ると、だいたい文句が出ます。
重い。
大きい。
シャープさが足りない。
そりゃそうです。
この車は最初から、あそこまで痩せた価値観で作られていません。

JZA70の良さは、もっと高速域の余裕と落ち着きにあります。
スパッと切り込んで軽やかに舞うというより、少し重みのあるボディを、余裕のある直6ターボでちゃんと前に押していく感じ。
その“押しの強さ”が、この車の魅力です。

今の基準だと、速さの出し方が少し古い。
でもそこがいい。
ターボのかかり方にも、車体の反応にも、まだ少し昔のメカニカルな手触りがある。
それが70のGT感にぴったり合っている。

つまりこの車、
**スポーツカーというより“ちょっと本気の高級クーペ”**として見るとかなりしっくりきます。
その意味では、実にトヨタらしい車でもある。


忖度なしで言えば、70は少し中途半端です

ここは避けて通れません。
70スープラが80ほど崇拝されないのには、それなりの理由があります。

まず、古いわりに大きい。
そして大きいわりに、今の感覚ではそこまで圧倒的でもない。
この“中途半端さ”は確かにあります。
もっと軽ければ鋭さが際立ったかもしれないし、もっと豪華ならGTとして振り切れたかもしれない。
70はその中間で、少し迷いが残っている。

それと、見た目も80ほど分かりやすく記号化されていない。
70が好きな人はかなり好きですが、万人に一撃で刺さる派手さはない。
つまり、
魅力が分かるまで少し時間がかかる車なんです。

皮肉を言えば、そこがまた70らしい。
80みたいに“伝説ですよ”と向こうから名乗ってこない。
その代わり、じわじわ効いてくる。
こういう車は、だいたい面倒くさいファンが付きます。
でも、本当にいい車ってそういうところがあります。


GT-Rほど戦闘的じゃない

でも、そのぶん品がある

当時の国産ハイパワー車と並べると、JZA70は少し立ち位置が違います。
GT-Rみたいな戦闘兵器ではない。
RX-7みたいな刃物でもない。
NSXみたいな完成された異物でもない。
もっと普通で、もっと大人で、もっと“トヨタのGT”です。

この“トヨタのGT”というのが大事です。
無茶なことはあまりしない。
でも、ちゃんと速い。
ちゃんと快適。
ちゃんと長く乗れそう。
そのバランスが、70にはあります。

だからこの車は、戦うための車として語ると少し損です。
その代わり、
少し贅沢で、少し気取っていて、でもちゃんと中身のある直6ターボクーペ
として見ると、かなり魅力的に見えてくる。


今だからこそ、70後期の価値が分かる

最近は80ばかりが神話になっていますが、本当は70後期にもかなり価値があります。
むしろ今の時代、70のほうが“ちゃんと車そのものを見てもらえる”余地があるぶん、面白いかもしれません。

1JZ-GTE。
FR。
トヨタ製GTクーペ。
しかもまだ少し古臭くて、少し大きくて、少し中途半端。
この中途半端さが、逆に今は魅力です。
全部が正解の車なんて、だいたいつまらない。
70みたいに、少し不器用で、でも確かに格がある車のほうが、長く付き合うと面白い。


まとめ

トヨタ スープラ 2.5GT TWIN TURBO R(JZA70)'93は、
80の神話に隠れがちだが、実際はかなり味わい深い直6ターボGTです。

1JZ-GTEの濃さ。
GT寄りのゆとりあるボディ。
少し気取った見た目。
そして、スポーツカーでも高級クーペでもない中間の妙な立ち位置。
全部が70らしさになっている。

忖度なしで言えば、
中途半端です。
少し重い。
少し古い。
少し分かりにくい。
でも、それでもなお、
80より人間臭くて、80より素直に“車として好き”と言いやすいスープラでもあります。

要するにJZA70の2.5GT TWIN TURBO Rは、
**伝説そのものではなく、“伝説の少し手前にいた、ちゃんといいGT”**なんです。
そういう車は、派手な英雄よりずっと長く記憶に残ることがあります。

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